ハイスクールD×D ~聖人少女と腐った蛇と一途な赤龍帝~
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第2章 滅殺姫の憂鬱と焼き鳥の末路
第39話 総攻撃
「火織、大丈夫かな?」
俺は隣を並走する木場にそう聞いた。今俺達は新校舎の中を屋上に向けて移動している。途中で俺は女王にプロモーション済み。そのおかげで木場のスピードに何とか付いて行ってる。今でも屋上の方からは激しい戦闘音がするんだけど、一方グラウンドの方からは戦闘をするような音は一切聞こえない。
「……君と約束してたじゃないか。必ず後から追いかけてくるって」
「だけど!」
俺だって信じてるさ! でも相手はあの数なんだ! そんな楽観視出来ない! そう言おうとして木場に向き直ると……隣の木場も苦虫を噛み潰しているような顔をしていた。
「……この10日間の修行で彼女たちが僕達より遥か高みの実力を持っていたことは身を持って知ったよ。だから僕も信じたい。彼女たちが全員倒して合流してくることに。でも……相手の数が数だ」
「……ああ、そうだな」
こいつも俺と同じ気持ちだったんだな。それなのに俺は八つ当たりみたいなことしちまった。
「今の僕達に出来ることは少しでも早くライザー・フェニックスを倒して火織さんたちの戦闘を止めることだ。そうだろう?」
「っ!! ああ、そうだな!」
そうだよ、あの焼き鳥さえ倒せば火織たちも無駄に傷つくこともないんじゃないか! と、そのことに気付いた時
『ライザー・フェニックス様の女王1名、リタイヤ』
「「!!」」
今のアナウンス、朱乃さんが!
「どうやら女王対決は朱乃さんが勝ったようだね」
「ああ、となると……焼き鳥の眷属が屋上に駆けつけるのが先か、火織たちがあいつらを抑えている間に俺たちが焼き鳥を倒すのが先か……」
「どちらにしろこれで戦局は僕達の方に大きく傾いたことになるね。今敵の王は丸裸、一方こちらの眷属の殆どは相手王を狙える状況にある」
そしてついに俺達は屋上に続く最後の階段の前に辿り着いた。
「準備はいいかい? 一誠くん」
「ああ」
とは言うけど……クソ! また少し手が震えてきやがった! 火織に喝入れてもらったっていうのに!
「怖いのかい?」
「当たり前だ。俺はついこの間までどこにでもいるような高校生だったんだぜ? それがこんなガチの殺し合いだ。リタイア転送があるからと言ったって怖いもんは怖いさ。戦闘慣れしてるお前とは違うんだ」
そんなことを言う俺に、木場は苦笑しつつ手を持ち上げて俺に見せてきた。
「ほら」
その手は驚くことに俺と同様若干震えていた。
「イッセーくんは僕のことを戦闘慣れしてるって言ってくれるけどね、僕だってレーティングゲームは初めてだ。そして悪魔同士の本気の戦いもね。僕たちはこれからも否応なしに競技に参加させられていくだろう。だからこのゲームは今後の全てに繋がっていく大事なものだ。だからね、当然恐怖だって感じているんだよ。でも僕はこれを糧にするって決めたんだ。今後のためにもね」
「ったく、かっこいいこと言いやがって。これだからイケメンは。……糧、か。俺も糧にして強くなれるかな?」
「なれるさ。まずはフェニックスを倒して糧にしようじゃないか」
「……ああ! そうだな! こんなところでビビってる場合じゃないよな! それにこの時のためにあいつを倒す算段も皆で考えて付けてきたんだ! 俺たちならやれるよな!」
「うん! その意気だよイッセーくん!」
「よし! じゃあ行こうぜ相棒!」
そう言って俺たちは拳を突き合わせた後最後の階段を一気に駆け上がり、続く扉を思いっきり開け放った。
「部長!」
「イッセー! 祐斗!」
そこには炎の翼を広げ余裕綽々の焼き鳥と、疲労で息を荒げている部長、氷龍を出して自分を守ってるアーシア、そしてアーシアの前に守るように立っている龍巳がいた。俺と木場はそんな部長の前に飛び出し、氷輪丸を構える。
「部長、どうしてこんな無茶を?」
「そうですよ! 部室にいれば安全だったのに!」
「……ごめんなさい。でもライザーがどうしても許せないことを言うものだから……私……」
「はっ! 自分の眷属を貶されたくらいでノコノコ出てくるようじゃ、世話ないよなリアス」
「っ! 黙りなさい!」
そう言うと部長はライザーに向けて右手を突き出すと、滅びの魔力を放った。その魔力はライザーの頭を綺麗に消し飛ばすんだけど……首から炎が噴きだすと同時に頭はすぐさま元通りになった。あれがフェニックスの力か。
「くくっ、投了しろリアス! もう限界だろう!」
「巫山戯ないで! 私も、そして私の仲間も! 皆まだ戦えるわ!」
「ええ、その通りですわ部長」
その言葉とともに朱乃さんが部長の後ろへ空から降りてきた。
「朱乃!」
「チッ……お前か? ユーベルーナをやったのは」
「ええ、思っていたよりたいしたことありませんでしたわ」
「の割りにはそこそこ消耗しているようだがな」
確かに朱乃さんは服もぼろぼろだしあっちこっちに傷も見える。相当な激戦だったんだろう。やっぱり俺達もあの時残ってた方が良かったんじゃねぇか?
「しかしどうやって倒した? ユーベルーナにはフェニックスの涙を預けていた。そう簡単にやられるとは思えないんだがな」
「どうやら彼女たちもフェニックスの涙を用意していたようですわ、お兄さま」
なっ!? あいつ確か焼き鳥の妹!? さっきまで火織たちの所にいたのになんでここに!? ま、まさか火織たちはもう……
「レイヴェルか。あの女はどうした?」
「火織さんなら彼女の姉妹たちと一緒にグラウンドですわ。カーラマインに指揮を取らせています。ユーベルーナがやられたそうなので念のため私はこちらに来たのですわ」
っていうことは火織たちはまだ無事なのか。良かった。
「そうか。……しかしこの短期間によく涙を用意できたものだな。まあ用意できたのは1つが限度だっただろうが。まあいいレイヴェル、お前は下がっていろ。俺一人で十分だ」
「分かりましたわ」
「さて、結果は見えてるがここまで来たご褒美だ。相手してやるよ。かかって来な」
さて、ここからが本番だ。相手は圧倒的な強者……でも倒せないわけじゃない。うまく型にはまれば倒せるはず!
「皆、行くわよ!」
「「「「はい!」」」」
その言葉とともに部長と朱乃さんは氷輪丸から氷龍を召喚、焼き鳥に放つと同時に俺と木場も氷輪丸を手に突撃した。
『Explosion!!』
さらに俺はここまで上がってくるまでに溜めていた倍化の力を一気に解放する。
「またその技か! 忌々しい! なんなんだその刀は!」
その悪態とともに焼き鳥は特大の火炎を手から放ち、2匹の氷龍を迎撃した。でもその時にはもう俺と木場の間合いに焼き鳥を捉えたぜ!
「喰らえ!」
「ふっ!」
俺と木場は同時に氷輪丸を振り下ろす。焼き鳥はそれに反応して両腕でそれを受けるけど、刀は止まらず両腕を斬り飛ばし、切り口を凍りつかせた。よし! これなら再生は出来ないはず!
「甘い!」
なっ!? 傷口を覆っていた氷が一瞬で溶けて腕が再生した!? 氷輪丸じゃ出力が足りないのか!?
「なら!」
「斬り続けるまで!」
木場もどうやら俺と同じ考えのようだ。俺たちは部長と朱乃さんに援護してもらいながらさらに斬りかかる!
「ええいっ! ちょこまかと鬱陶しい!」
そう叫んだ焼き鳥は全身から炎を吹き出し俺たちを退かせようとするけど、俺と木場は氷輪丸を盾にしてその場に踏み留まる。焼き鳥の出す炎は氷輪丸に触れると触れるそばから凍り付けせていくので炎は俺達に届かなかった。まったく、氷輪丸サマサマだな!
「ちっ、またその刀か。一体そんなものどこで手に入れた」
「答える義理はない!」
その言葉とともに俺は再度斬りかかる。それに対して焼き鳥も手から炎剣を出現させ氷輪丸を受け止めた。接触した炎は凍りつかせられたんだけど後から後から炎が吹き出すからあいつの所まで氷が届かない!
「まあいい、所詮は大量生産品だろう。すぐに貴様もろとも丸焦げにしてやる」
こいつ、よりにもよって火織の創ってくれた刀を大量生産扱いだと!? 許せねぇ!
「やれるもんならやってみやがれ!」
その言葉とともに鍔迫り合いをしている状態のまま氷輪丸に俺の今ある魔力を全部込めて焼き鳥の目の前に特大の氷龍を召喚した。遠距離からは防げてもゼロ距離から放たれれば対処できないだろ!
「行け!」
氷龍は焼き鳥の顔面に突撃、虚を付かれた焼き鳥は避けることは出来ず上半身が完全に凍りついた! 焼き鳥はそのままバックステップで下がる。くそったれ、直撃したのにもう氷にヒビが入ってそこから炎が漏れてやがる。この程度の魔力で作った氷龍じゃやっぱ倒すのは無理か。
『Reset!!』
そして氷龍を放つために俺も魔力を使い切っちまったから倍化もリセットされちまった。
「イッセー、一旦下がって! 朱乃、代わりに前に出てちょうだい!」
「「はい!」」
部長の指示に従い俺は一旦部長の元まで戻り、代わりに朱乃さんが前衛に出た。前方では氷を全て溶かした焼き鳥が今度は祐斗と切り結んでいて、そこを朱乃さんが援護している。
「イッセー、少し予定より早いけど始めてちょうだい」
「っ! 分かりました」
部長がついに焼き鳥を倒す作戦を始めるよう指示を出した! まずは作戦の第一段階、俺の赤龍帝の籠手の倍化を限界まで溜める。今現在俺の溜められる倍化の限界数は16回。時間にして2分30秒。それまでは俺は戦わずに力を溜めることに集中する。
「私も前に出るわ!」
その言葉と同時に部長も飛び出して行った。今は木場が前衛で焼き鳥を抑え、中衛の朱乃さんが氷龍を連射して木場を援護している。その中衛に部長も加わり木場の援護を始めた。
「イッセーさん、今のうちに回復します」
力を溜めている間にアーシアが俺を回復してくれる。氷輪丸があっても流石に無傷じゃなかったからな。ところどころ火傷をしていたし、小さな擦り傷もいっぱいあった。
「サンキュ、アーシア」
アーシアに礼を言いつつ前を見る。前では部長たちが何とか焼き鳥相手に喰らいついていた。あの3人相手に互角以上に戦うなんてあいつどんだけ強いんだよ。合宿の時に龍巳の説明で強いことは分かってたけど強すぎだろ! 俺の力が溜まるまであと2分少々。頼む、それまで皆保ってくれ!
それからの2分は本当に長かった。部長たちは交代でアーシアに回復して貰いつつ戦い続けた。俺も途中何度も飛び出して行きそうになったけど、そんなことをすれば今の皆の頑張りも全部無駄になっちまうから何とか耐えた。でもその甲斐あって、部長たちはもちろんだけど、あの焼き鳥にも若干の疲労が表情に出ていた。よし、これなら! と、その時
『Boost!!』
来た! 16回目の倍化!
『Explosion!!』
すぐさま力を開放し、倍化を止める。これで準備は整った! そして俺は大きく息を吸い込み……
「今だ!」
と叫んだ。その瞬間部長たちは焼き鳥から飛び退いた。焼き鳥は怪訝そうな顔をするもそのままこちらを追撃しようとする。でもそれより前に
ズドドドド!
「ぐあっ!? 何だと!?」
はるか上空から光の槍が無数に降り注いだ。そしてその内の何本かは焼き鳥の肩や足に突き刺さる!
「これは光の槍!? 何故ここにそんなものが!?」
その言葉とともに焼き鳥は空を仰ごうとするけど
「よそ見は厳禁です!」
木場と、そして朱乃さんが氷輪丸で斬りかかったため焼き鳥はそちらの対処に回る。しかしその時には彼女は上空から焼き鳥の背後に降り立ち
「貰った!」
その言葉とともにその彼女、俺の使い魔であるレイナーレは手に持った光の槍を背後から突き出した! しかし焼き鳥は一瞬で反応しその槍をギリギリで躱す。そしてその槍の持ち主を視界に捉えた瞬間
「なっ!? 何故ここに堕天使が!?」
驚愕の表情を浮かべた。まあ悪魔同士のゲームの最中に敵である堕天使が現れれば驚くよな。でもまだ驚くには早いぜ!
「レイナーレ!」
「ええ!」
俺がレイナーレを呼ぶと、彼女は槍を突き出した勢いをそのままに俺の元まで翼を広げ駆けつける!
「忌々しい堕天使が!」
そんな彼女に向けて焼き鳥は炎を放とうとするけど
「させないわ!」
焼き鳥の突き出した手を今度は部長が滅びの魔力で消し飛ばす。そしてレイナーレはその間に俺の元までたどり着き、俺の右手が彼女の左手をしっかり握った! いくぞ! 辛い修行で目覚めた赤龍帝の籠手第二の力!
「赤龍帝からの贈り物!」
『Transfer!!』
俺の右手から溜めた力がレイナーレへと流れこむ。その結果レイナーレの右手に持つ槍は今や槍から柱とでも呼ぶべき巨大なものへと姿を変えた!
「な、何だと!?」
それを見た焼き鳥は慌てて炎の翼を広げ回避しようとするけど
「アーシア!」
「はい!」
部長の合図でアーシアは自分の手に持つ氷輪丸を屋上に突き刺し、その結果屋上全面と、そこに足をつく焼き鳥の足を凍りつかせ、飛び立てなくした。
「くっ、こんなもの」
しかし焼き鳥はすぐさまそれを溶かそうと手のひらを広げ
「祐斗!」
「魔剣創造!」
炎を出して溶かそうとする前に、奴の両側の地面から複数の細長い魔剣が伸び、手を串刺しにして貼り付けにした。
「しまった!」
焼き鳥が慌てるけどもう遅い!
「レイナーレ!」
ここに来てようやく俺達の所まで退避してきた部長たちが最後にレイナーレに指示を出す。そして
「喰らええええええ!!」
という叫びとともに特大の光の槍はレイナーレの手から放たれ、焼き鳥の胸の中央に着弾し大量の光をばらまきながら炸裂した。すげー威力だ。こんなに離れても光で肌がビリビリ来る。
「朱乃! とどめを刺すわ!」
「はい部長!」
その言葉とともに部長と朱乃さんは懐からフェニックスの涙を取り出し頭からかぶった。朱乃さん、敵の女王を倒すのに涙を使わなかったのか! これは嬉しい誤算だぜ!
そして涙を被った部長と朱乃さんは全身の傷はもちろんのこと、これまで消費した魔力も完全に回復した。そしてその回復した魔力を振り上げた氷輪丸に全て注ぎ込み
「で、でけぇ!」
これまで見たことないほどの大きさの氷龍が召喚された! ざっと15mってところか!? そして2人は氷輪丸を振り下ろし、2匹の氷龍は未だに光をまき散らしながら爆発を起こしている中心部に向かい直撃、盛大な音と共に光ごと焼き鳥がいたであろう場所ごと凍りつかせた。
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