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戦国異伝

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第百九十六話 二匹の虎その三

「では、ですな」
「目を覚ましたうえで」
「そうしてですな」
「戦を続けるのですな」
「その通りじゃ、寝ることは出来ぬ」
 戦をしているのだ、それは無理だった。
 だがそれでもだ、茶を飲み目を覚ましてというのだ。
「このまま攻めてじゃ」
「こうした茶もよいものですな」
 こう言ったのは慶次だった。
「茶の席の茶もよいものですが」
「確かに。茶室の茶もよいですが」
 小西も言うのだった、茶を飲みつつ。
「戦の場で、こうして飲むのもまた」
「茶は何時でも美味い」
 信長は笑って彼等に答えた。
「どうした場で飲んでもな」
「それでは酒の様ですな」
 信長のその言葉を受けてだ、片桐が笑って述べた。
「何時でも何処でも美味いとは」
「ははは、そうじゃな。しかしな」
「それでもです」
「その通りだというのじゃな」
「そうも思いまする」
 こう信長に答えるのだった。
「それがしは」
「そうか、酒と同じか」
「はい、その様に」
「わしは酒はな」
 ここでだ、信長は笑ってこのことも言った。
「飲めぬがな」
「そうでした、申し訳ありませぬ」
「よい、しかし茶もな」
 それもと言う信長だった。
「確かにそうじゃな」
「酒の様にですな」
「何時でも何処でも飲めるものじゃな」
「高いですが」
「いや、その高さもな」
 それもと言う信長だった。
「多く作ればよい」
「その茶をですか」
「多く作って皆が飲めばな」
「安くなりますか」
「既に茶を作るのによい場所で多く作らせている」
 それを政にも入れているのだ、信長は。各国においてそれぞれ多くのものを作らせているが茶もそうさせているのだ。
「だからな」
「これまでは高いですが」
「これからはじゃ」
 安くなるというのだ。
「そして誰もが飲めるぞ」
「何処でも」
「この様にな。さて」
 言いながら茶を飲み終えてだ、信長はまた言った。
「朝には終わる」
「この戦も」
「そうじゃ、終わる」
 そうなるというのだ。
「流石にそれ以上は戦えぬ」
「では時はですな」
「我等の味方じゃ」
「守っていればいいのですな」
「この戦は」
「うむ、しかし敵は強い」
 真田は決して侮ってはいなかった、武田の強さをよく知っているからこそ。
「だからな」
「それではですな」
「少しも油断せずに」
「鉄砲は三段のままじゃ」
 三段で撃ち続けよというのだ、これまでの間隔で。
「そしてな」
「弓矢と槍も使い」
「敵を防ぎ」
「そうしてじゃ」
 そのうえで、というのだ。 
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