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美しき異形達

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第三十七話 川の中での戦いその三

 それと共にだった、菫は怪人に対してこうも言うのだった。
「ただ、それでも」
「それでもか」
「無駄な血は流さないに限るわ」
「闘いを楽しむことはしないか」
「血を楽しまないのよ」
 血に餓えたそうしたことはないというのだ。
「一切ね」
「そういうことか」
「そうよ、だからね」
 それで、というのだ。
「貴方との闘いもね」
「血は楽しまずにか」
「闘わせてもらうわ」
「そういうことか、ではな」
「それではね」
 菫もだった、怪人と闘いに入った。その両者の闘いがはじまったのを見てだ、菖蒲は裕香にこうしたことを言った。
「今度の相手はいつもとは違うわね」
「うん、誇りよね」
「誇りがある相手は違うわ」
 それで、というのだ。
「無法者やならず者はそれまでよ」
「そうした相手はなの」
「下種は下種でしかないわ」
 こうした輩にはだ、菖蒲も一言で言い捨てた。
「強くとも限りがあるわ」
「本当に強い相手は、なのね」
「その心に誇りがあるわ」
「そういえば弱い相手に暴力を振るう人とかは」
 こうした輩も下種である、学校の教師を見ればそうした輩が多い。
「薊ちゃん達も一撃で倒したわね」
「所詮その程度なのよ」
「何かが違うのね」
「心が腐っていると何もかもが腐ってね」
「腐ったものは」
「それ以上は成長しないわ」
 その心だけでなく、というのだ。
「力があろうともその力に慢心し」
「驕って溺れて」
「それでそれ以上は成長しないのよ」
 そうだというのだ。
「漫画に出て来る様な屑が無様に負けるのはそれでなのよ」
「成長する主人公に敗れる」
「そしてなのね」
「無様な姿を晒すのよ」
 それが所謂下種な悪役、小悪党の常だ。そうして読者に嫌われてざまを見ろと言われて終わるのだ。作中でも反面教師と蔑まれてだ。
「それで終わりなのよ」
「そういうことね」
「私もそうした輩は軽蔑しているわ」
 このうえなくとだ、菖蒲は言うのだった。
「心底ね」
「だからそうした人には」
「一切容赦しないわ、心まで斬っているわ」
 それも完膚なきまで、というのだ。
「そして二度と立ち直れない様にしているわ」
「嫌いだから?」
「それと共に許せないから」
 それで、というのだ。
「斬っているのよ」
「そうしているのね」
「ええ、人生自体もね」
「ううん、私はそこまではね」
「裕香さんはしないのね」
「甘いのかしら」
「それは優しいのよ。私は優しくしないから」
 それで、というのだ。
「そうした相手には容赦しないわ」
「そうなのね」
「そうした輩を置いておくと」
 この世にだ、菖蒲の言葉はあくまでシビアなものだった。 
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