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美しき異形達

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第三十七話 川の中での戦いその二

「じゃあいいな」
「はじめるか」
「そういうことでな」
 こう話してだ、薊は熊の怪人との闘いに入った。
 そして菫もだ、薙刀を両手に持ち狼の怪人に告げた。
「そして貴方の相手はね」
「御前だな」
「それでいいかしら」
「強いな」 
 怪人は菫を見て一言述べた。
「そうだな」
「見てわかる様ね」
「気でな」
 それを読み取ってだ、わかるというのだ。
「充分過ぎる程な」
「なら話が早いわ、それではね」
「今からだな」
「はじめましょう」
 菫もこう言うのだった。
「そしてそのうえで」
「わしが貴様を倒す」
「その言葉はそのまま返しておくわ」
 怪人に表情を変えずにこの言葉を返してだった、菫も怪人との闘いに入った。少女達は古都においても戦うのだった。
 薊と菫はそれぞれの武器を手に怪人達と川の中で対峙していた、熊の怪人はその中で薊に対して言った。
「楽しませてもらうがいたぶるつもりはない」
「一撃で終わらせるっていうんだね」
「わしの力と爪、牙なら」
 その牙、巨大な熊のそれを出しつつの言葉だった。
「貴様は一撃でだ」
「倒されるっていうんだな」
「そうだ」
 それで、というのだ。
「貴様は苦しむことなく死ぬ」
「残虐じゃないってことか」
「残虐?わしにそんな趣味はない」
 一切、とだ。そうした類は一切否定する言葉だった。
「そうした下種ではない」
「それはいいことだね」
「残虐になればそれに溺れ隙を作る」
「まあ戦いの相手をいたぶる奴は屑って相場が決まってるな」
 薊もこう考えていた、少なくとも薊にはそうした趣味はない。
「そうした奴はあたしも容赦しないさ」
「貴様はそうした考えか」
「あんたと同じかどうかはわからないけれどな」
「少なくともわしは相手は一撃で倒す」
 このことは絶対だというのだ。
「苦しませずにな」
「じゃああたしもな」
 彼も、というのだ。
「あんたを苦しませずに倒してやるよ」
「ほう、わしをか」
「そうさ、倒してやるぜ」
 こう言ってだ、その七節棍を構えるのだった。そして菫も同じだった。
 薙刀を手にしている、その煌きを視界の中に入れつつだ。
 自身の相手である狼の怪人にだ、こう言った。
「狼、猛々しい獣ね」
「猛々しいだけではない」
 怪人は誇りに満ちた声でその菫に答えた。
「誇り高いのだ、狼は」
「血に餓えた獣ではなくて」
「それは偏見だ、狼は血に餓えてはいない」
「猛々しく誇り高い」
「それが狼なのだ」
 つまり彼自身だというのだ。
「そのことを告げておく」
「そうか」
「そうだ、だから貴様もだ」
 自身の闘いの相手である菫もだというのだ。
「苦しませずに倒してやろう」
「そうするのね」
「そうよ、だからね」
 それで、とだ。菫も言うのだった。
「私もそうさせてもらうわ」
「血を好まないか」
「闘いで血が流れるのは当然のことよ」
 だからそれは受け入れるというのだ、だが。 
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