魔法少女リリカルなのは 絆を奪いし神とその神に選ばれた少年
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第二話 学校での謝罪
前書き
俺は、これから新しく生きていく事になる……それまでの咎を、俺は受け入れよう。
魔法少女リリカルなのは~絆を奪いし神とその神に選ばれた少年~第二話 学校での謝罪、始まる。
全は、ゆっくりと意識を覚醒させていく。
しかし、そこで全はふと違和感を覚えていた。
右の視界に映る筈の右手が全く見えないのだ。
「シン、起きろ」
『ふわぁ……何ですか、マイスター?』
「俺の右目、どうなっている?」
『右目、ですか……?ああ、能力が適応されているんですね……』
「能力……?」
能力、と聞いて全は頭を傾げる。そのような事を全の内にいる神も言っていたが、これがそうなのだろうか?
しかし、そこまで考えて全はまた疑問を持った。
「シン、能力って何だ、お前は何を知っている?」
『え?……あ……』
と、シンはしまった、といわんばかりの声をあげる。
「教えろシン。俺に与えられた能力とは何だ?俺は生来の技術しか持っていない筈。転生時にもらった特典とやらも自身に関わる事はほとんど望んでいない筈だ」
『え、えっと……』
「教えろ」
『……はい……』
シンは観念したのか全てを話した。全を転生させた神が全が望んだ特典だけでは生き抜けないと思った事、それで特典を無断で追加して全に与えた事、そして全に与えられた特典の事をシンは全に全て話した。
『それで今適応されている能力は『11eyes』の皐月駆の能力、劫の眼ですね。能力をoffにすれば見えるようになりますよ』
言われた通りにシンに手を伸ばし能力の一覧を表示する。
一番下の所に確かに書いてありその横に《使用中》と書かれていた。
全はその使用中の所を押す。すると、《解除》となり右目に視界が戻ってきた。
「はぁ……まったく、母さんは……」
全は頭を抱えて、Vサインを全に送る自身の母が見えた気がした。
昔っからそうだったのだろう、全の母親はとにかく全に甘かった。
「ま、いいか。そこが母さんだしな。さて、支度して学校行くか」
寝ていたベッドから起き上がると、綺麗にハンガーに掛けられていた制服を手に取り、着替える。
聖祥大付属小学校。それが全の通う小学校だ。
全は靴箱に靴を入れると上履きを取って履き、自分のクラスへと向かう。
クラスの扉を開けて中に入ると、クラスにいる生徒全員が全に注目した。
「ね、ねえ」「あれ誰?」「誰かに呼ばれてきたのかな?」「でも、見たことないよ」「何か近寄りがたいって感じだな」「ああ、でも、何か格好いいな」
そんな言葉が飛び交う中、全は自身の席に座る。
「え?あそこで神楽院君の席じゃ……」「あ、言われてみればあいつ、神楽院に似てねぇか?」「そう言われれば確かに……」「何?髪色染めたの?」「あっちの方が合ってねぇか?」
また、そんな言葉が飛び交う中、全は自身の教科書などを机の中に入れていく。
「な、なあ……神楽院、でいいんだよな?」
「ん?ああ、そうだな神楽院で合ってるが……今は橘全と呼んでくれ」
「え?」
「そっちが本当の名前なんだ」
「そ、そうだったのか……」
「ああ、ちょっと過去にな……」
そう言って全は憂い顔をする。
それを見た生徒達は過去に何かがあって橘全は神楽院紗華と名乗っていたと思った。
「わかった、じゃあこれからは橘って呼ぶ事にするよ」
「ああ、そうしてくれると助かる」
そう言って全は家から引っ張り出してきた本を持って読書を開始した。
「な、何か神楽院……いや、橘君だったわね。橘君、変わった……?」「うん、ちょっと、ていうかかなり……」「でも、何かその変化がいい変化で」「そうそう、それで」
「「「「何か冷たい態度を取ってるのが新鮮!」」」」
「お、おい神楽院、何か格好良くねぇか?」「あ、ああ何か今なら尊敬出来る気がする……」「今の読書してる姿も何か様になってるし……」「それになにより」
「「「「今なら普通に喋れる!!」」」」
────神楽院、もうちょっと限度を考えて物事を進めてくれ……。
読書をしながら周りの感想を聞き。そう思わずにはいられない全なのだった。
全の事は瞬く間に広まっていった。その原因としては、全が教室の壇上に上がって謝罪をしたからであろうと推察出来る。
「皆、済まなかった。俺もちょっとどうかしていたんだと思う。だから、極力皆の迷惑にならないようにする」
そう言うと全は自身の席に座った。この話がクラスメイトから、隣のクラスへ、それが系譜のようにどんどん広まっていき、「神楽院は橘全として新たな道を歩き始めた」と広まっていった。
それを聞いて納得していない男子生徒が一人いた。聖である。
(何でだ!?あいつは今まで踏み台として僕に貢献してきたじゃないか!?そもそも、お前が脚光を浴びる必要はないだろ!僕だけがいればいいんだ!僕がこの世界の主人公なんだからな!)
そんな事を考えているだけでも十分に主人公としての能力がないのにそれに聖は気づかない。
なぜならば、彼は自身が主人公だと信じきっているのだから。
それとは対称的に全は……能力の応用方法などを模索していた。ちなみに今は授業中なのだが、そんなのはお構い無しだ。
しかし、全はちゃんと授業の内容は頭の中に入っている。小さい頃から必要最低限の事しか勉強はしてこなかった為だ。その為に、全は暗殺者として活動していた際に使用していた一度に二つの物事を同時に思考するという技を用いて授業を聞きながらも能力の応用方法を模索しているのだ。
(さて、大体の応用方法は分かったが……まず、俺は銃はあまり使わなかったからな……大体短刀を用いての一撃で沈めてたし……)
銃を使う能力に関しては保留だな、と結論づけて授業に集中する事にした。
学校での一日が終わり、全は買い物に出かける。
商店街などでの全の評価はなぜか結構いいものだった。
曰く「結構買い物してってくれるしね。態度もきちんと礼儀正しいし」らしい。
なるほど、と全は感心する。
やはり紗華は全の過去の為にあんな事をしていたらしいと確信を持てた。
全は買い物を済ませると、自宅に戻る。
「シン、紗華の奴、俺の為を思ってあんな事してたんだな……」
『そうですね……彼の口癖は「あいつの為に、俺にしか出来ない事だから」でしたから』
「そうか、いい奴だったんだな……ま、母さんが選んだから当然か」
シンと会話しながら全は買ってきた食材や飲み物などを冷蔵庫の中に入れていく。冷蔵庫の中もきちん整理されている事からも、紗華はとても几帳面な性格なのだとわかる。
「さて、一通りの食材は揃えたから……とりあえず、能力を試してみるか」
全はシンを手に取り、能力の一覧を表示させる。
最初の頃はこうやって自身の手で選択しなければいけないのだが、やり方を覚えれば頭の中で思考すれば即座に決めれる、というのはシンの言葉だ。
全としては一々こうやって選択するのは戦闘にも差し支える為、早くやり方を覚えていかなければいけないと思っている。
そして、全は一覧の中にある『小嶺 幸』という人物の能力を選択する。
すると、全にはわからないだろうが全の隣に幸の姿がうっすらとではあるが現れる。
そのまま、幸は全と一体化するように全の中に消えていった。
「これで、いいのか?」
正直全には何も変わった所はないため時間が湧かないのだろう。
『はい、確かに能力は使用されています。試しに台所に立ってみればどうでしょうか?』
「そうだな」
シンの言う通りに台所に立ってみる。
すると、脳裏にいくつもの料理のレシピやそのレシピに必要な材料などがピックアップされていく。
────なるほど、しかも冷蔵庫の中にある食材で作れるものだけを出しているのか……。
ここにきて、この能力の汎用性を改めて思い知った全は早速調理を開始した。
能力の応用性を把握しながらももう既に11時。寝る時間だ。といっても暗殺を生業としていた全にとってはこれからの時間が本領発揮なのだが今は子供。
眠気も出てくる。
「さて、寝るか……お休み」
そう言って全はお休みと机の上に置いている写真立て達に言う。
その写真立ては全部五つある。
一つ目には茶髪の女の子が黒髪の男の子に抱きつきどちらかの家族であろう数人がそれを暖かく見守っている場面。
二つ目には活発そうな金髪の女の子が先ほどの写真にいた黒髪の男の子に抱きつき、もう一人の金髪の女の子はおろおろしている。それを紫色の髪の女性とその女性に付き従うように茶髪の髪の女性が優しそうな目で見つめている場面。
三つ目には茶髪の女の子が黒髪の女の子に背伸びして頬にキスをしている場面だ。女の子は車椅子に座っている。
四つ目には黒い衣装を着ている男の子の右腕を金髪の勝気そうな女の子が、左腕を紫色の髪の女の子がそれぞれ抱きついている。
五つ目には赤い髪の女の子が黒髪の男の子にキスをしている場面だ。しかも唇と唇同士のキスだ。それを見て彼女の家族だろうか、父親らしき人物が驚いている所を撮った物だろう。
それらが、全の過去である。
そして、これら全てに紗華がなぜ踏み台転生者のような事をしていたのかの秘密があるのだが……それに関しては後にわかる事なのでここでは言及していでおく。
全はそれらの写真立てを見ながら、静かに眠りについた。
後書き
感想を下さい、切なる願いです……!
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