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魔法少女リリカルなのは 絆を奪いし神とその神に選ばれた少年

作者:レゾナ
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第一話 本当の意味での再会

「「聖君!」」

「「聖!」」

聖が倒れるのと同時に訓練室のドアが開き、四人の少女がやってくる。

茶色の髪をツインテールにしている少女と金髪の髪をツインテールにしている少女。

同じく金髪だがポニーテールにしている少女、茶色の髪をショートカットにしている少女。

それぞれ、聖に寄っていく。

全はそれを見た瞬間、少しだけ憂いを帯びた目を向けるとすぐさま踵を返し出入り口へと向かった。

出入り口の先には黒服に身を包んだ全と同じ位の身長の男子と緑色の髪をした妙齢の女性が立っていた。

全は二人を無視して行こうとするが

「待って、紗華君」

紗華、と呼ばれてその足を止める。

「今回の件、私たちの方から聖君にはきつく言っておくわ。だから、これからも」

「言っておくが」

緑髪の女性の声を途切れさせるように全は声を出す。

「俺は俺の意志であいつと戦っただけだ。あんたらには関係はない。それと、勘違いしてもらっては困る」

「勘違いとは、何だ?」

黒服の男子がそう疑問をぶつけてくる。

「俺の名前の事だ。紗華はもういない、今の俺は……橘 全。それだけは覚えておけ」

そう言い残すと全は今度こそ立ち去ろうとする。

「待って」

しかし、再び呼び止められた。

全は声の主を確かめる。

それは全の目の前に立っていた。

赤色の髪をストレートに背中の中間の部分まで伸ばしている活発そうな女子だ。

「今のあんたの髪色、そっちが本当なの?」

「そうだと言ったら?」

「何で、銀髪にしてたの?」

「知らない、していた本人に言ってくれ、まあもういないが」

「していた本人って……あんたの事でしょ?変な事言わないでよね」

「俺の事じゃない……それはそうとお前、しつこいぞ」

「しつこいってのは失礼ね」

全は心底面倒くさいと思っていた。これから家に帰り、鈍ってしまった自身の感覚を取り戻すために訓練をしなければいけないからである。

「それと、あたしには宮坂(みやさか) るいっていう名前があるの」

「宮坂だな、わかった覚えたからどいてくれ」

そう言って全はるいを強引に押しのけて去っていく。

その背中には、どこか悲しみが宿っていた……。

るいSIDE

あいつ、一体どうしたのかしら?

あたしの名前は宮坂るい。俗に言う、転生者って奴ね。

そして、そんなあたしと同じ境遇の奴をあたしは二人知っている。

1人目は、高宮聖。まあ、典型的なオリ主って奴ね。

2人目は、神楽院紗華。こっちは本当、典型的な踏み台転生者って感じの奴だった。

でも……今会った紗華は違っていた。

「あいつ、どうしたんだ?言葉遣いも違っていれば態度も違うし……」

「そうね、何かあったと見るべきだけど……」

クロノとリンディさんは色々と考察しているみたいだけど、あたしの中である疑問が浮上していた。

それは─────────今の紗華は、本当に紗華なのだろうかという物だった。

やられてブチ切れたとかそういう事も考えたけど、まとっている雰囲気が全く別の物だった。

それはまるで、そう……全てを拒絶している感じ。そう考えればしっくりきていた。

でも、彼に一体何があったのだろう。自身の名前も神楽院紗華ではなく、橘全と名乗っていた。

名前を変える意味がわからない。

今までの自分とは決別するという意味なのだろうか。

「るい、君の意見を聞かせてくれ」

「あたしの意見?」

「ああ、なのは達は聖が倒された事に動揺して正気ではない可能性があるからな。冷静な君の意見を聞きたいんだ」

「あたしの意見か……結構主観入るけどいい?」

「ああ、それでも構わない」

「わかったわ、まずあたしが疑問に思ったのは」

クロノがあたしの意見を聞いてくれている。

これで、何かわかるといいんだけど……。

SIDE OUT

リンディSIDE

あの後、紗華君は自分のデバイスを使って転移魔法を発動させて、自宅へと帰った。

関わらないとは言われてはいないから大丈夫とは思うんだけど……。

「それで、艦長。頼まれていた調べ物なんですけど……」

「ああ、ありがとうエイミィ。それで?何かわかった事は?」

私はエイミィにあることを調べてもらっていた。

それは……紗華君の過去。思えばあの子は自身の過去を喋ろうとはしなかった。

なのはさんなんかは聖君と昔の思い出話なんかをしているからある程度はわかるんだけど……。

でも、紗華君はその辺の事は徹底的に隠していた。何か後ろめたいことでもあったのかしらと思った為に調べてもらったのだ。

「はい、まず紗華君という名前なんですが……ある時期からそのように名乗っているそうなんです」

「ある時期?それじゃあそれ以前は?」

「それが……先ほど紗華君が自分で名乗っていた橘全という名前だったんです」

名前を変えた?一体何の為に?

「それで?」

「はい、他にもいくつかわかった事が……」

エイミィが集めてくれた紗華君の過去は以下の通りだ。

1:彼の本当の名前は橘全

2:幼少期に色々な場所を転々としていた。

3:その際にミッドチルダにも一時期滞在していた事がある。

4:小学生に上がる頃に髪を銀髪に染めて神楽院紗華と名乗るようになった。

この四つなんだけど……。

「まず、問題は……なぜ、今名乗らなかった橘全という名前に戻したか……」

「それに性格とかも橘全という名前の時の性格に戻っている事ですね」

そう、彼が橘全であった時の性格は、一言だけ言えば「他人を突き放す」という物だった。

一体なぜ、今戻ったのか?

「問題はたくさんあるわね……」

SIDE OUT

アースラから自宅へと戻ってきた全は何をするでもなく、地下の修練場に向かう。

『マイスター。まずは体を休められては?』

「失った時間は大きいんだ。自分の意志で引きこもったとはいえ、早く勘を取り戻さなければな」

そう言って、全は軽くストレッチを始める。

『マイスター……』

全は心配するシンの声を聞きながらもストレッチを止めない。

「大丈夫だ、初めは縮地の基本からしかしないさ」

『それでも、マイスターの体には多大な負担が掛かってるんですよ!?マイスターの体はまだ成長途上の子供なんです!』

「ならばこそ、子供の時にしか出来ない事もある。前世では今の年齢の時位から修練はしていたからな」

と言って全はストレッチを止めると修練場の中を軽くランニングする。

「ふっふっふ……」

全の修練はまずランニングから始まる。体を温めてから修練に入るのだ。

『マイスター……くれぐれも、無茶はしないでくださいね』

シンはそう言ってスリープモードに移行した。





































『ふふ、また会ったな、少年……いや、ここは名前で呼ばせてもらおうか、橘全』

周りが真っ暗な闇の世界。そんな中で色を持っている人物が二人いた。

一人は全、もう一人は和服に身を包んだ怪しげな雰囲気を持つ女性だ。その瞳は黄金色に輝いている。

「……何で、俺の中に居座る」

『君の中は心地よくてね……いつまでも居座りたいと思っている』

「ふざけるな、お前なんかこっちから願い下げだ」

和服の女性は左手に持った煙管(キセル)を一度吹かすと全を見つめる。

『願い下げとは失礼だね。正しい対価を支払ってもらっているだけじゃないか』

「あれが正しい、だと?ふざけるな!」

ここにきて、全の怒りが爆発した。

「お前のせいで、俺は……俺は、友一人作ることさえままならなかった!お前のせいであいつとも別れた!」

『彼女と別れたのはお前の意志だ。そこに私は関係ないよ』

「…………それで?何をしに現れた」

全は頭を冷やした後、そう言う。そう、目の前の存在は何も理由無しに現れる事はありえないからだ。

『簡単さ。私はもう代償は貰わない。認めてあげよう、君は真の神憑となったのだ』

「…………!」

その言葉を聞いて全は驚く。

真の神憑……この言葉が意味する事を全は知っている。

全の脳裏にある人物が現れる……神と一体となり神憑へと昇華した自身の母だ。

『意味はわかっているだろう。上月一族に与えられるのは超常的な力まで。しかし、内なる神と真に対話し己同士を認め合った時に、上月一族の人間は神憑……人間の身でありながら神になる事が出来る』

「……そうだな」

『そうだとも。お前の母がそうだったように……そして感謝しろ。お前を転生させてくれと頼んだのはこの私だ』

「……対象者が死んだらお前は天界に帰るからか?」

『ああ、お前の中は本当に心地いい。その為に私は自身の身を削ってお前を転生させてくれるように頼んだ。お前の母も私に同意してくれたしな』

「母さんが……!?」

全は驚く。あの時、全が出会った神が母だとは思いもしなかったからだ。

『そうだ、少なくともお前は祝福されてこの世界に転生したんだ』

「じゃあ……何で、お前はあいつらから記憶を奪った。しかも、今までとは違うやり方で」

『まあ、確かにそうだな……』

女性は手に持っていた扇子をパンッと閉じる。

『お前に全盛期の力を与えるにはああするしかなかったとだけ言っておこう。彼女達には気の毒な事をしたがな。しかし驚いたぞ、戻ってきてみればお前の目を通してお前の幼少期の大事な記憶にいた少女達がいるではないか』

「そうだな。それに関しては驚いていた。それと紗華が何であんな事をしているのかも納得したよ」

『ふむ……まあ、これからは仲良く共存しようではないか。お前とは長い付き合いになるからな……さあ、受け取るがいい!我が力、運命を決める力と現実を否定し戻す力を!』

そして、全の意識は浮上していった。















 
 

 
後書き
新たなる作品並びにキャラが追加されました。 
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