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魔法少女リリカルなのは 絆を奪いし神とその神に選ばれた少年

作者:レゾナ
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第三話 誘拐事件

全が変わったという話を信じる者は少ない。

曰く「猫をかぶっているだけだ」曰く「私たちが油断した隙に狙っている」などと意見がある。

その反対で全は変わったという話を信じる者も少ないながらも存在している。といってもそのほとんどが全のクラスメイトだが。

しかし、そんな中でも信じていない生徒が何人かいた。

「あいつ、あんな変な事言ってたけど……どうせ油断させるのが目的なんでしょ?」

「あ、アリサちゃん、そこまでは言っちゃいけないと思うよ……まあ、その可能性もなくはないけど……」

「すずかだってそう思うでしょ?私たちだってそうとしか考えられないのよ」

「そうそう。それに、あいつ聖君を倒しよったしな」

「えっ?高宮、倒されたの?」

「うん、神楽院にな」

一つの席を囲んで話をしている七人。

この学校内において知らぬ人はいないであろうとさえ言われている七人。

茶髪の髪をツインテールにしているのが高町なのは。金髪の髪をツインテールにしているのがフェイト・テスタロッサ。金髪をポニーテールにしているのがアリシア・テスタロッサ。茶髪の髪をショートカットにしているのが八神はやて。金髪の髪をストレートで腰の部分にまで伸ばしているのがアリサ・バニングス。紫色の髪をアリサと同じように伸ばしているのが月村すずか。赤色の髪をストレートで腰の部分にまで伸ばしているのが宮坂るい。

この七人は俗に「聖祥七大女神」と言われて、奉られている。

彼女らに告白する男子も少なくはないのだが彼女達は全員断っている。

それというのも、彼女達の会話に出ている高宮聖に全員好意を抱いているからだ。

高宮はそれに気づいていないのだが。

「それでも、あいつの纏っている雰囲気は変わったわね」

「あ、それは私も思ったわ。なんちゅうかな……俺に触れたら切れるで!みたいな感じやな」

「はやて、例えがわかんないから……」

「あ、あはは……でも、そのせいで聖君、今でもアースラのお医者さんのところに通っているんだ。打ち所が悪かったみたいで」

「打ち所が悪かったって……どこを打たれたの?」

「えっと……首筋の、この辺?」

アリシアが右手を首の後ろの方に持っていき、大体の位置を指差す。

「そこって、確か……神経とかが集まっている頚椎っていう部分じゃなかったっけ?」

「確かにそうね。気絶させるときにはそこら辺を叩く人が多いわ」

「そこを打ったのね」

アリサ達がそんな会話をしている中でるいはもう一つ考え事をしていた。

いや、厳密には全の打った威力の事を考えていたのだ。

あの後、るいは聖の事が心配になり聖を診たアースラの医師に話を聞いたのだ。

『彼……確か紗華君だったかな?彼がこれをやったのかい?』

『はい、そうですけど……』

『だとしたら、これから彼の事を監視する必要が出てきますね』

『え?それってどういう……?』

『いやね……紗華君が打った手刀なんだけど……()()()()()()()()()()

『躊躇いが……無かった?』

『ああ、これはほとんどの人間に言える事なんだが……人が人を傷つける際にはどうしても躊躇いが生じてしまう』

『しかし、彼の攻撃には躊躇った形跡がまったくなかった。つまり、彼は高宮君を傷つける事をどうでもいい事を割りきっているか……』

その先に言葉にるいは聞いた当初、寒気がしたのを覚えている。



































『高宮君が死ぬ事も辞さないような選択を平然とした……つまり、人が死ぬ事に慣れている、という事だね』
































人が死ぬ事にすらも慣れている……そんなの、転生者であるるいも経験はした事はなかった。

そこまで考えて、るいは神楽院……否、全の前世の事を知りたいと思った。



そんな事を思われているとは知らない全は……勉強をしていた。

全は前世では義務教育の途中で暗殺者として訓練に参加していた為、碌に勉強をしてこなかったのだ。

そのせいで、全は今、勉強が超楽しいと思っているのである。

(ここの数式をこれに当てて……よしっ!これでここまでの範囲は終了……ま、数学は簡単な数式しか習ってこなかったしな)

全は暗殺者として簡単な勉強だけなら暗殺者としての先輩達に教えてこられた。その際に英語や国語など他の国に派遣された際に困らない程度に修めた。

しかし、数学だけはそんなに勉強してこなかったのだ。というのも銃弾の数、敵の数、どこをどういけば相手に見つからずにいけるか、どのような方法を用いれば相手に気づかせずに殺す事が出来るか。

そんな事をずっと考えていた為、数学なども銃弾数を調べる際や相手の数なんかを数える際にしか使用しない為、あまり勉強してこなかったのだ。

キーンコーンカーンコーン

「っと、時間だな」

丁度いいところでチャイムが鳴った為、全は勉強を止めて次の授業の準備を始めた。



































授業を終えて、全の姿は商店街の真っ只中にあった。

今日も全は買い物をしている最中である。

「よし、大体は終わったな?」

『はい、大体は買い揃えましたね……おや?』

シンは全と会話している最中に異変を感じた。

「?どうした、シン」

『いえ……あの、黒い車なんですが……どこか、おかしくないですか?』

全は道路を走っている黒色の車を見つけた。

しかし、どこかおかしいところとでもあるというのだろうか?

「あ……中の様子が見れないようにしている」

中の様子を見ようとして見れない事に全は気づいた。

重要人物が移動しているというのならばわかる。しかしあそこまで徹底的に隠すのはどう考えてもおかしい。

と、その時車の中を見えないように覆っていた暗幕が少しだけ揺らいだ。

その際に全は見た。金色の髪をと紫色の髪を。

「…………………………」

全は関係ない、と割りきろうと思ったのだが





















思い出すのは、昔の記憶。

『じゃ、じゃあ……また、守ってくれる?』

守れたのは少女達の命。

『……守ってやるさ。こんな俺の血塗られた手でもいいのならな』

彼女達は全を怖がらなかった。

『関係ないよ。血塗られてても……全君のこの手は、私たちを守ってくれたから』

むしろ、また守ってほしいと頼んだ。

『そうよ。私たちは全にまた、守ってほしいのよ』

そして、それに

『……わかった。まあ、そうなる事がない事を祈っている』

全も快く承諾した。そんな昔の記憶。


















全は約束した。約束、してしまった。

例え、彼女達が忘れていても……彼女達に理解されなくとも……守る、と……。

「………………………」

全の走りはいつの間にか早くなっており、()()()を追っていた。黒い車を見失ってたまるかとその眼光を鋭くさせていた。



アリサSIDE

あれ?私達どうしたんだろう?

そうだ、たしか帰ってたら黒服の大人たちが近寄ってきて……そ、そうだ!すずかはっ!?

そこまで考えて私は周りの状況を把握する。そこは廃墟のような場所だった。

すずかは隣で眠っている。

私はすずかを後ろで手をロープで縛られた状態だから難しいけど……何とかすずかの肩に手を置く事が出来た。

「す、すずか?大丈夫?」

数回程揺らす。

「う、うぅ……あ、アリサちゃん……?」

よかった。大丈夫なようだ。

「おやおや。お目覚めかな?」

と、私たちの前に見知らぬ男達が現れた。

どうやらこいつが私達を誘拐した犯人のようだ。

「あんたの目的は何!?お金が目的なら」

「いやいや、そんな事でこんな大それた事はしませんよ」

すると犯人は私が言うのを遮るようにそう言った。

じゃあ、なんで……。

「私達の目的は「夜の一族」にあるんですよ」

「ッ!!??(ビクッ)」

夜の一族、と言ったところですずかは肩を震わせた。

「ど、どうしたの?すずか?」

すずかは犯人が言った「夜の一族」の話を聴いた瞬間青ざめた。

「簡単に説明しますと夜の一族とは吸血鬼のことなんですよ。人の何倍もの身体能力を持ち人の生き血を吸う」

「え?吸血鬼って……」

訳がわからなかった。何でそんな事を今言っているのかが。

「まあ、気づかないのも無理はないでしょう。簡単に言うなら君の隣にいる子は化け物、というわけですよ」

……ちょっと待て。目の前の男は何て言った?

「あんた、すずかの何を知ってんのよ!?」

「おや、それでは君は知っていたのですか?彼女が吸血鬼だという事を……」

「だから、そんなのはでたらめでしょ!?」

「でたらめではないから、こうやって人間の味方をしているんですよ。貴女だって被害者のような者ですからね」

「すずかも何か言いなさいよ!?……すずか?」

すずかに目を向けると……その顔は先ほどよりも青ざめたまま、俯いていた。

「嘘……よね?すずか!嘘って言って!」

「……」

すずかは俯いたままだった。

じゃあ、本当に……?

「まあ、今回の誘拐の目的は月村家当主の座を私達に譲っていただくのが目的だったんですが……人間と化け物は互いに相容れない」

「だというのに、今代の当主は人間なんぞと交じりおって……」

「まあ関係ない人間を捕まえたのはこちらの手違いでしたが交渉材料にはなってくれるでしょう?」

私の思考は男の言葉を聴いてはいなかった。

思考にあるのはただ一点。

なんで相談してくれなかったの?

ただ、それだけだった。

「ごめんなさい。こんなことに巻き込んでしまってごめんなさい……」

すずかが俯きながらも私に対して謝罪をしている。

と、その時、私はありえないようなビジョンを思い出していた。

すずかを抱きしめている私と、私に向かって泣きながらも謝り続けるすずか。

私たちって……過去にも出会ってるの?

そして、もう一つ気になったのが……私たちの周りが血で塗れていた事。そんな血だまりの中に佇む少年の姿。

今の状況と同じような状況が過去にあったっていうの?

でも、そんな疑問も長くは続かなかった。

「あのう。遊んでもいいですか?」

「いいですよ。しかし丁寧に扱ってくださいね。交渉材料になるんですから」

「わかってますよ……」

男の一人が私たちに迫ってきているのだ。

「えへへ……おじさんといいことしようね」

「ひっ!?」

私は恐怖した。すずかは未だに謝り続けている。

誰でもいいからぁ……私を……私たちを助けてよぅ……。

私は涙を流していたとき1人の少年の顔が浮かんだ。

しかし、その少年は来ない事は知っていた。今日はすぐに帰ると言っていたからだ。

だから……もう、誰も助けになんか来てくれない。

その時












「がっ…………」
















私に迫って来ていた男が、苦しげな声をあげると……そのまま、倒れ伏した。

そして、その男の後ろに立っていた人物を見て私は驚いた。

おそらく男を気絶させた後、すぐに自身の後方にいる敵に警戒する為に私たちに背を向けたのだろう。

その後ろ姿が…………頭の中に出てきたビジョンに出てきた血まみれの男の子と雰囲気が完全に一致していたのだ。

「大丈夫か?」

そして、その声を聞いてさらに驚いた。だってそいつは

「た、橘……?」

私たちにしつこく言い寄っていて急に手のひらを返したかのように普通になったクラスメイト、橘全だったのだから。

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