俺の知ってる作品でバトルロワイアル
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23話:ソロモンの鍵は吸血鬼を焼く
当麻の左手が発火し、剣を形成する。
炎の剣は、少し明るくなってきたとはいえ、周りの建物の陰のお陰でまだまだ暗い夜中の駐車場を照らした。
「だりゃー!」
この場にそぐわない掛け声と共に氷川を襲う。
形状は逃げながら続けてきた戦闘のお陰で当麻のイメージした通りに変形させられるようになっていた。
イメージするのは、鞭。
剣で斬りかかるように見せて、避けられるタイミングで鞭に変え、しならせて叩く。
氷川の持つ刀では炎を防げない。
当麻の炎は刀を通り抜け、氷川をとらえた。巻き付いた炎の鞭はそのまま引き絞られ、同時により強く燃え上がり氷川を焼く。
「うわわわっ!」
しかし慌てた声を上げたのはなぜか当麻だった。
氷川がS&M M66を当麻の方向に向けて撃ってきたのだ。
それの対処に気を取られた当麻は炎の鞭を緩め、氷川を拘束から解放してしまった。
氷川は服のあちこちが焦げて無くなっていた。とくに両腕の袖は燃え落ち、黒く変色した素肌を露出させている。
両者は互いに距離を取り、互いに仕切り直して警戒し合う。
しばらく睨み合いを交わすと氷川は銃を懐に入れて、空いた方の手にも刀を出し始めた。
刀を生み出すその様子はまるで氷川の肉が変形しているようだった。
途中で氷川を炎が襲うが、彼は繰り出される右方向からの灼熱の斬撃を高い跳躍によりかわした。着地は当麻と睨みをきかせていた場所よりさらに十メートルほど後ろの位置にあり、そこは当麻の炎の射程の外だった。
帯刀する前の隙を突こうと仕掛けた当麻の攻撃は届かなかった。
二刀流となった氷川を見る。
(気付かれたか‥‥‥‥)
やべえな、と思わず漏らす。
おそらくさっきの攻防の際に当麻が左手にしか炎を出せないことを見破ったのだろう。炎の鞭に巻かれていた氷川の放った銃弾を当麻は鞭を緩めてしならせ、銃弾の軌道上に炎を置くという方法で防いだのだがそれがいけなかったようだ。
わざわざそんな技術のいることをしなくても、コナンと逃げている間にやっていたように右手を発火させてタイミングを計って銃弾を弾いた方が遥かに安全なのに。
やらなかったのは出来ないからだ。
火蜥蜴の革手袋が、もう一着あれば。平行世界を繋げる右腕ならあるいは可能なのかもしれないが。
しかし氷川が今まで警戒しながら戦っていた理由は右腕に注意していたからだけではない。
実のところ、氷川は炎の威力を測っていた。
その温度が果たしてミッションで戦った星人のような理不尽な威力なのかどうか。もしそうならば最悪撤退も考えていたのだが。
近づいてみた結果、氷川が思っていたほどの火力ではないと判断したのだった。
(持って数分か―――)
当麻が心の内で呟くと同時に二本の刀が動く。
◆
江戸川コナンはキーのついている車を無事発見した。
いや、正確には車ではなく原付のオートバイなのだが、二人で逃げることが出来る頼れる道具であるのに変わりはない。
だが。
(ダメだ。別のものを探さなければ‥‥‥)
氷川と当麻の戦闘を犯人追跡眼鏡で拡大して観察し、判断した。
氷川の高速の刀を紙一重で避けている当麻だが、誰の目にもそれが奇跡に近いことは明白だった。事実当麻が一度ソロモンの鍵として目覚めてなければ、またはこの世とは違うスピードで動く世界を体感していなければ、彼女はとっくに八つ裂きにされていたに違いない。
あの速さ相手にこんな対した速度の出ない原付で助けに入るなど自殺にも等しい。
コナンはその場で眼鏡のスイッチを入れ、辺りを見渡す。
運転席に注目してキーが有るか否かのみを確認する。
十メートル先のポルシェ、ダメだ。その横に止まっている赤いミニ、ダメだ。ミニの後ろのスクーター、ダメだ。動かせるが遅すぎる。ドアの部分にアニメキャラクターが印刷されている痛車、鍵はついているがダメだ。目立ちすぎる。
しかし、その痛車の近くにコナンの求めていた車が止まっていた。
黒のオープンカー。キーはついており、天井は開いた状態で停車している。
オープンカーならば戦闘中の当麻も乗りやすいだろうし、スピードもそこそこあるはずだ。
(問題は助けに行くタイミングと方法だな)
当麻と氷川の距離はほとんどゼロだ。無闇に突っ込んでいったら恐るべき反応速度の氷川にのみ避けられ、戦闘で疲労困憊の当麻が轢かれるなんて惨事を起こしかねない。かといって当麻にコナンからの何らかのサインを見ている余裕など無いし、策を練ろうにも時間は無い。
待てよ、と。
コナンは最初に見つけた原付を見て閃いた。
◆
「ちくしょー!」
左手に炎の剣。右手には七七七。
氷川の二刀流に対抗して当麻も即席の二刀流を作り、さらに戦闘中に炎の剣を複数の投げナイフにするなどの芸当も身に付けるなど少年漫画の主人公みたいになっている当麻だが、それでも劣勢は覆らない。
何回も斬られ、服や身体はボロボロになり、斬られた額から血を流している。もちろん切り傷は全身の至るところにあり、額ほどではないが出血箇所も多い。
対して氷川は先ほど当麻に焼かれた腕以外にはダメージをまったく受けていない。
スタミナも人間の身に戻った当麻とは段違いだ。
「疲れた‥‥」
さらに、魔力の変わりにしていたSPECの力が大量に消費されていた。
そのせいで当麻の疲弊は加速し、当麻の気力にも影響した。
おかげで当麻はほとんど諦めかけていたのだが。
「おせえよバーロー‥‥‥」
ブウン、と。
当麻が頼んだ助けの音が聞こえてきた。
原付のオートバイが当麻から見て右、氷川から見て左の方向からこちらに向かって一直線に走ってくる。氷川は当麻より一瞬遅れてそれに気付き、注意をそちらに向ける。
だが氷川が見た瞬間、原付は転倒しスリップした。
ボディを回転させながら走っていた時より若干遅めのスピードでなお近づいてくる。
やはり子供が運転するには無理があったか。
氷川は手にした刀のうちの一本を槍のように投げた。刀は近づいてきた原付に突き刺さり、地面縫い止めた。
そこで氷川は気付く。
原付には誰も乗っていなかったことを。
「まさか」
振り返った氷川が見たのは、黒いオープンカーが走り去っていくところだった。
一瞬足に力を入れるが、やめた。
追い掛けても徒労になるだけだ。
今日はもう昼間の間に隠れる場所を探すことに専念すべきだ。
【氷川@GANTZ】
[状態]:腕に軽い火傷
[装備]:S&W M66@現実、刀(能力により、現地調達)
[道具]:支給品一式、S&W M66@現実、ランダム支給品一つ
[思考・状況]
基本思考:無理をしない範囲で参加者を殺す
1:早いうちに拠点を見つける
2:次会ったときは当麻とコナンを殺害する(両方とも名前は知らない)
3:玄野と加藤と和泉を警戒
4:主催と戦うかは保留
◆
原付を囮にして黒いオープンカーで助けに行った。
コナンがしたのはそれだけだ。
まず、原付オートバイをオープンカーに乗せた。
オープンカーを動かし、当麻と氷川が戦闘をしている場所から直線上に伸びている位置で一旦停める。そこで原付を下ろし、無人のまま発進させる。
氷川の注意が無人で走る原付に向いている隙に順路に沿って当麻を迎えに行き、オープンカーに飛び乗らせてそのまま出たのだ。
「あー、疲れた」
言いながら無事持ってこれたデイパックから蜂蜜を取り出してぐびぐびと飲む当麻。実は氷川に遭遇する前にスーパーマーケットから持ち出していたのである。
普段のコナンならば窃盗を咎めるところだが、流石に殺し合いという状況でそんなことは言ってられない。むしろ脱出に必要ならば積極的に道具を集めるのは当然だ。
「これからどうする?」
当麻が運転できないために未だ運転席から離れられないコナンが当麻に尋ねる。
「とりあえず怪我を治療させて」
一応服を裂いて包帯代わりにする等応急処置はしているが、やはりちゃんとした包帯が欲しいし傷口も消毒したい。
「診療所って書いてあるところがあるけど、行く?」
「近い?」
「遠くはない」
「ならお願い。あたしは寝てるから着いたら起こして」
「わかった」
それきり沈黙した二人を乗せたオープンカーは静かに走り続ける。
≪チーム探偵≫
【当麻紗綾@SPEC】
[状態]:疲労(極大)、全身に切り傷、額に大きな切り傷、仮眠中
[装備]: 火蜥蜴サラマンダーの革手袋@空の境界
[道具]:支給品一式、火蜥蜴の革手袋@空の境界、七七七@人間シリーズ、ランダム支給品一つ
[思考・状況]
基本思考:殺し合いの破壊または脱出
1:仮眠中
【江戸川コナン@名探偵コナン】
[状態]:疲労(小)
[装備]:
[道具]:支給品一式、ランダム支給品三つ
[思考・状況]
基本思考:殺し合いを止める。及び主催の検挙。
1:運転中
2:なるべく早く西東診療所に向かう
3:一度じっくり考察する時間が欲しい
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