俺の知ってる作品でバトルロワイアル
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22話:右手に銀の弾丸を、左手に火の剣を持つ天使
4-Bエリアに広がる駐車場。
広さはかなりの物だが、停まっている車の数は少ない。
「ごめん、まさかこんなことになるとは」
と、全力疾走しながら隣を走る少年に謝っているのは当麻紗綾。
未詳の刑事である。
「今はそんなこと言ってる場合じゃねえ!」
もっともな指摘をする眼鏡の少年は江戸川コナン。本名を工藤新一。
後ろからはほホストのような風貌の吸血鬼が二人を追跡してきている。
名は、氷川。
片手には刀を、片手にはS&M M66を持っている。
コナンも当麻も必死で逃げているが、距離は縮まる一方だ。
コナンも当麻も身体能力は人間離れしていて主人公補正が高く、なおかつ高い空間把握能力と判断力を持っているとはいえ、生身でガンツスーツを着た人間と渡り合う吸血鬼とは流石に身体的スペックが違いすぎた。
当麻は氷川のSPECについて考察するが、走りながらだとなかなか結論が出ない。
考え事をしてたからだろうか、少し当麻が躓いた。
それを見た氷川がS&M M66を発砲する。
「AzoLto―――!!」
当麻が詠唱し、燃え上がった火蜥蜴の革手袋当麻が銃弾を弾く。
既にこの一連のやりとりは何回か繰り返されている。
どうしてこうなったのか、説明するには少し前まで遡る必要がある。
◆
当麻紗綾が目覚めたのは6-Cエリアだった。
知らないビルの屋上に独りで大の字になって、ただ横たわっていた。
「殺し合い、ねぇ‥‥」
くだらねえ、と。
吐き捨てる当麻。
そんなことよりも。
瀬文に撃ち殺されて亡者達とともに冥界に沈み。
右の腕の能力で世界を一巡させて。
その結果誰にも認識出来ない存在となった筈の当麻を。
どうやって受肉させて殺し合いに巻き込んだのやら。
そっちの方が興味があった。
「あ~~~」
駄目だ。
頭働かねえ。
なまじ人間の体に戻ったせいで、すげえ腹が減る。
「そういや、デイパックに食糧が入ってんだっけ?」
ガサゴソと乱雑にデイパックを漁る当麻。
いっぺん死んでもやはり女らしさは欠片も無いままだ。
「あん?」
ふと、何やら当麻の興味を引くものがあったらしい。
それは、鋏だった。
ただし、ただの鋏ではなく七つの鋏が合体したシュレッダー鋏であり、紙ではなく人体を裂くための鋏だ。
名を、七七七という。
「かっけえ!」
だせえネーミングだと一蹴した零崎人識とは対照的に、当麻は感想を漏らす。天才と変人奇人は紙一重という一例だ。
だが当麻は当初の目的である食事のことを忘れてはいない。
七七七を一端置いて、食糧のパンを頬張った。
十秒もしないうちにゴクンと飲み込んだ。
「まずい」
別に期待していたわけではないが、今当麻が必要としている糖分は入っていなかった。
早急にハチミツをイッキしなければ。
どこかに調達できそうな所はないかなと地図を広げる。
左上にある4-Bエリアにスーパーマーケットがあるらしい。まあ、ここら辺の民家を模した建物の中にもあるのかもしれないが、確率の高い方に行くのが賢明だろう。
ついでに参加者名簿も見てみるか。
「瀬文さん‥‥?」
かつての相棒の名が、刻まれていた。
それを確認した後の当麻の行動は、ただ一つだ。
左手を地面につけて、己の神をも冒涜するSPECを解放する。
「お願い、冷泉さん―――!」
召喚するSPEC HOLDERは冷泉俊明。
予知能力を持ち、幾度となく召喚に応じ当麻を助けた。
彼を呼び、瀬文の居場所を預言してもらい合流する―――。
「なんで―――?」
はずだった。
なのに、冷泉は出てこない。
躊躇うのもほんの数秒。
当麻はすぐに原因にたどり着いた。
「クソっ! 制限か‥‥」
主催に与えられた制限。
当麻は、SPECの一切を使えなくなっていた。
だが、それがどうした?
そもそも、当麻はSPEC無しで数々の能力者を検挙していたのである。
現にニノマエを確保した時はSPECをまったく使わずに頭脳と策だけだった。
だからまさかの全封じにも動揺しない。
それ以前に、当麻の左手のSPECは人の手で封じられるようなモノではない。期待するわけではないが、そのうち戻るだろう。
そんなこんなをしているうちに、当麻のいる屋上にもう一人の人物が現れる。
ガチャ、と屋上のドアが開かれる。
当麻が目を向けると青いジャケット、眼鏡が特徴的な子供がいた。
本来は赤い蝶ネクタイもあるのだが、今は失われている。
「こんにちは」
「うん。こんにちは」
こんな状況だというのに落ち着いた様子だ。なかなか度胸のある子供だ。
「あたしは当麻紗綾。刑事だよ」
「僕は江戸川コナン」
ブッ、と。思わず吹き出した。
当麻紗綾の空気の読めないところである。
「‥‥」
コナンは避難するような細い目付きで当麻を睨んでいる。
そんなに笑わなくてもいいだろ、とでも言いたそうだ。
「ごめんごめん‥‥ククッ」
まだ笑ってる。
「‥‥向こうのビルの屋上に転送されたんだけどね」
コナンは隣にあるここよりいくらか高いビルを指差す。
当麻のいるビルよりいくらか高い。
「なんか変なことやってるお姉さんが見えたから来たんだ」
当麻の笑いが止まる。
見られたのか、あの厨二病みたいなポーズを。
コナンはしてやったりな顔をしている。どうやら意外と年齢相応なところも少しばかりあるようだ。まったく可愛くないが。
「ま、まあとにかく」
話をそらす。
「エレベーター動いてたんだ?」
しかも前後が繋がっていない。
呆れたような顔をしながらコナンは答えた。意外と重要な質問だ。
「うん。電気は普通に通ってるみたい」
なら首輪を解除する手立てもあるか。
これが当麻の知る科学でできていればいいがと思いながら首輪に手を触れる。
「でもどのみち首輪のサンプルというか、見本が欲しいよね」
コナンが下から言ってくる。
「賢いなこの子供」
思わず漏らす。
コナンはエヘヘ~と笑うが、その様子は何となく演技じみていた。
その後は互いの知り合いについて確認し合い、地図を見て今のところの二人の行動方針を話し合った結果、協力関係を結ぶことになる。
「じゃあ次はお互いに支給品を見せ合おうか」
当麻はデイパックから七七七を取り出した。
よほど気に入ったのか自慢げにしゃきしゃきと音を立てている。
「だせえ!」
変体鋏のネーミングを知った探偵は奇しくも殺人鬼と同じ感想を抱いた。あまりのだささに思わず素が出てしまったほどだ。
それに対して当麻がぶつぶつと文句をたくさん言った後、次に取り出したのは火蜥蜴の革手袋。
当麻は説明書を読み上げた。
「なになに、発火の魔術が使える手袋? 魔力に似た力を持っていれば使える?」
自分のSPECでも大丈夫なのだろうか。
試してみようと説明書を見る。
呪文を確認した当麻は勢いよく叫ぶ。
「え~と、あぞ・エル・トゥー!」
しかし何もおこらない。
不思議に思っている当麻をよそに、コナンは冷静に突っ込む。
「お姉さん、これAzoLtoって読むんだよ」
誰でも知ってるような音楽記号の名前である。
下手すればFoLLteやMezoFoLLteまで読めない可能性もあるが、これでもIQは202もある。
「‥‥あぞると」
小さく呟きながら、当麻は左手にはめた手袋に力を注ぐ。
すると、手袋は激しく燃え上がり、極大の炎を形成した。このビルそのものを焼き尽くさんとしているように。
やがて、それは自然と何かの形になっていく。大きな炎はその激しさを失わないまま細い形に姿を変える。
変形をやめたとき、炎の形はまさしく剣だった。
当麻はそれを見て、自分はやはり左手に火の剣をもつ天使であり、ソロモンの鍵なんだなと改めて実感する
。
コナンは、呆然としたままそれを見て、当麻からSPECの話を聞いて、異能の存在を認めることとなった。
そんなこんなで、二人は自分たちが強い戦力とそれを上回る優秀な頭脳を持ち合わせていることを自覚する。
そうとわかれば行動あるのみ。
一日分の計画を三つの予備プラン付きで立てると、彼らは出発した。
最初に行くところは、糖分不足が深刻なことになっていた当麻の懇願により、スーパーマーケットとなった。
◆
そして冒頭。
スーパーマーケットに向かったら、そのエリア内を彷徨いていたマーダーに出くわした。
しかも相手が人間とは思えない(実際人間でないが)能力の持ち主で、炎剣による攻撃も避けられてしまう。おまけにコナンの支給品はすべてハズレ。
逃げるしかなかった。
当麻もコナンも走りながら考え、なるべく撒きやすい逃げ道を選んだのだが。
相手はすべての障害物を手に持つ刀で薙ぎ払うなど、強引なやり方で突破してしまうのだ。
そろそろ、足で逃げるのは無理になってきた。
「ねえ、コナンくん」
「ん?」
「君の眼鏡でさ、キーのついた車を探してくれる?」
当麻は策を思い付いた。
推理の腕ならコナンの方が上かもしれないが、戦場においての策士としての腕なら当麻の方が年期が高い。
彼女は先程聞いたコナンのかけている眼鏡の高性能さを思い出していた。
ようは超高性能な拡大鏡。望遠レンズのような役割が第一の機能。
それを使えば外からでも鍵のついたままの車を探すこともできる。
ここは駐車場だ。しかも用意したのは主催。
殺し合いを促進させる要素の一つとして、現地調達できる車があっても不思議じゃあない。
コナンならば、最短の時間でそれを見つけてくれる。
それどころか、彼は運転の仕方までわかるというではないか(本人曰くハワイで親父に教わったらしいが、胡散臭い)。
「私があいつの相手をするからその間に探してきて。そして車で私を助け出して、逃げよう」
「でも―――!」
無茶だ、と言おうとしたコナン。
しかし賢い彼はわかっていた。
当麻の代わりに自分がやると言ったところで、務まるわけがないことを。
「―――わーったよ」
悩んでいる暇はない。
今ある策を成功させなければどのみちここで両方とも終わりだ。
早い決断に流石だな、と当麻が少し不敵に笑う。
「よし、じゃあ行け!」
当麻のみが立ち止まって振り返り、火蜥蜴の革手袋を激しく振るう。
膨大な量のSPECを注ぎ込まれた手袋は本来の持ち主よりも大きな炎を生み出して、その身を焼き尽くさんと氷川に襲いかかる。
氷川はそれを、受けるのではなく退避してダメージを防いだ。
並の火力ではないことを悟ったのだ。
吸血鬼の前に、今、炎の剣を持った天使は迎え撃つ。
【当麻紗綾@SPEC】
[状態]:疲労(大)
[装備]:火蜥蜴の革手袋@空の境界
[道具]:支給品一式、火蜥蜴の革手袋@空の境界、七七七@人間シリーズ、ランダム支給品一つ
[思考・状況]
基本思考:殺し合いの破壊または脱出
1:コナンが車で迎えに来るまで持ちこたえる
【江戸川コナン@名探偵コナン】
[状態]:疲労(大)
[装備]:
[道具]:支給品一式、ランダム支給品三つ
[思考・状況]
基本思考:殺し合いを止める。及び主催の検挙。
1:なるべく早く車を用意して戻る
【氷川@GANTZ】
[状態]:健康
[装備]:S&W M66@現実、刀(能力により、現地調達)
[道具]:支給品一式、S&W M66@現実、ランダム支給品一つ
[思考・状況]
基本思考:無理をしない範囲で参加者を殺す
1:早いうちに拠点を見つける
2:できれば当麻とコナンを殺害する(両方とも名前は知らない)
3:玄野と加藤と和泉を警戒
4:主催と戦うかは保留
後書き
○支給品解説
七七七
『零崎人識の人間関係 零崎双識との関係』にて登場。
呪い名の序列第二位であり、裏切同盟の一人、罪口摘菜の作ったシュレッダー鋏。
摘菜曰く自殺志願を越えたらしい。
作中では人識の愛着を得られなかったわりには結構活躍していた。
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