美しき異形達
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第三十四話 湖のほとりでその十一
「いい魚じゃないよ、あと集まって団子みたいになるから」
「近寄らないに限るわね」
「そうだよ、あの魚はな」
「あとエイね」
菊はこの魚のことを言った。
「あのお魚も危ないのよね」
「あれマジで死ぬぜ」
薊は菊にも答えた、そのエイについても。
「尻尾の端の毒針大きいし鋭いしさ」
「そこに毒があるから」
「痛いなんてものじゃ済まないからな」
「危ないのね」
「ああ、それに夜の海ってな」
海の街横須賀で育ってきただけにだ、薊は海のことには詳しかった。それで海の魚達のことも話すのだ。
「鮫だって夜行性だし。ガンガゼとかもいるしな」
「ガンガゼはウニだったわね」
「そうだよ、あれも危ないんだよ」
今度は菫に話したのだった。
「毒があってな」
「海は毒のある生きものも多いのね」
「だから夜はあまり入らない方がいいんだよ」
「海には」
「夜行性の生きものが多いしその中にはやばいのも多いからな」
「鮫も夜行性で」
「昼よりやばいんだよ、あいつ等は」
夜の方がというのだ。
「遭難した人も夜に襲われる方が多いんだよ」
「そうなのね」
「ああ、だからな」
「夜の海では泳がない」
「湖もその方がいいだろうな」
菖蒲の言う通り、というのだ。
「やっぱり見えないからな」
「見えないことそれ自体がですね」
桜は昼の時とは違い暗闇の中に全てが隠れている湖を見て言った、月を映し出し黒の中に銀の波が漂う夜の琵琶湖は美しい、だが。
「危険ですね」
「そうなんだよな、やっぱり見えてることって大きいよ」
「その通りですね」
「心眼とかな」
これはどうかというと。
「実際相当な腕じゃないとな」
「身に着けられないですね」
「それこそ達人の中の達人だよ」
その域に達してこそ、というのだ。
「心眼なんて備えられるのは」
「私達ではまだ」
「だろうな、そんなのまだまだ先だよ」
「そうですね、ただ」
「ああ、ただな」
桜の言葉にだ、薊は表情を一変させて応えた。
「わかるものはわかるな」
「はい、ここでなのですね」
「だよな、本当にいつも出て来るな」
「私達が何時何処に来るのかわかっている様に」
「おい、出て来いよ」
湖の方を見てだ、薊はこう言った。
「わかってるからよ」
「そうよ、早くね」
「出て来たら?」
菊と向日葵もだ、湖の方に顔を向けて言う。
「わかっているから」
「今からね」
「勘が鋭くなっているか」
「そうだな」
二つの声がだった、その湖の方から聞こえて来た。
「戦う度にな」
「感性が研ぎ澄まされているのか」
「そうかも知れないわね」
菖蒲も湖の方を見て言う。
「幾多の戦いの中で」
「それじゃあ出て来たらいいわ」
菫も見ていた。
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