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Sword Art Online 月に閃く魔剣士の刃

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10 妖の主

「只今から第1回目第25層ボス攻略会議を行います。」

 始まりは毎度恒例のアスナの声だ。
 それぞれがクエストやNPCとの会話などから得られた情報を共有していく。
 特にどんなボスか、取り巻きの有無、パターン変化が推測できる情報など一つ一つを頭に叩き込んでいく。
 ボスの名前は「The Rage Hidora」、名前から察するに双頭の龍だろう。
 しかもご丁寧に「Rage」、つまり「怒れる」とまでついてるあたり火力が高そうでげんなりしてくる。
 だが、一つだけ引っかかる...。

「以上がクエストやNPCから得られた情報です。補足や質問等ありましたらこの場で共有しておきたいのでお願いします。」

 一通り共有が終わり、区切りをつける意味でもアスナが声をかける。

「ん、俺から一つ。」

 周りも同じことを思っていると思うが、一向に名乗り出る気が見られないので仕方なく俺が質問...というか確認をしておく。

「名前からして多分ドラゴン系のボスだと思うんだが...、ブレスの使用を匂わせるような事は出ていないのか?」

 今の所ボスについて推測出来ることは大きく四つ
・双頭の龍の姿をしている
・頭部を部位破壊することが出来る
・取り巻きは無し、もしくは極小数が最初に一度だけ沸く
・HPが一定値以下になると攻撃パターン変化とともに激昂状態(仮称)に入り、フィールド変化を起こす

 その中にブレス等の特殊攻撃に関する情報は無かった。
 しかし今までのボスもそれぞれの外見や特徴に合わせた多種多様な特殊攻撃を繰り出して攻略組を大いに悩ませてくれたため、今回だけ無しとは考えにくい。
 ましてや丁度4分の1の25層である。開発者の事だし全体に何かを仕込んでいるはずだ。

「それについては恐らく情報は出てないですね。他には?」

 アスナが周りを見渡し、誰もいないことを確認して話を進めた。

「それでは今回の偵察に関してですが4人パーティを一隊として三隊体勢での偵察を考えています。偵察目標はボスのHP量の確認、ある程度の攻撃パターンの把握です。」

 そこまで言うと少し間を置いて、

「決行は3日後、二度目は5日後とします。パーティーはリーダーを指定するのでその方に一任します。では、以上で第1回の攻略会議を終わります。」

 そう続けて第一回目の攻略会議は終わった。

「おつかれ。」

 疲れたのか、攻略会議が行われていた広場のそばにあるベンチにぐったりと座っていたミーティアを見つけて声をかける。

「お疲れ様です...。今までずっとこんなに大変なことやってたんですね。」
「まあなー、もう慣れたから大変って訳じゃないけどね。」

 言いつつ隣に腰掛ける。
 それからポツリポツリと何でもない会話を交わして、何となく会話にも一区切りがつく。そこで、

「3日後の偵察、一緒に来ないか?」
「...え?」

 確かにサラっと言った。流れで言ったから意味が分からなかったのもあるのかもしれない。ただ...、

「おーい?おーい!?」

 偵察のパーティー加入の誘い。それだけでたっぷり10秒間フリーズしてやがる...。
 苦笑しながら目の前で手を振るとようやくフリーズから立ち直り、

「い、いいんですか!?」
「俺の目が狂ってるとでも?」

 この手のタイプは大体謙遜しまくると経験から知っている。
 だから少し喧嘩腰にして押し切る。

「い、いえそういう事じゃ...。」
「行きなくないならいいけど。予行演習も兼ねてさ。」
「う~ん...足引っ張っちゃいそうですが、よろしくお願いします!」
「よかった~。んじゃ打ち合せしとこうか。」

 無事にやり取りを終えた時、ちょうど正午を示す鐘が鳴った。

「飯食いながらにする?」
「そうですね、お腹減っちゃいました。」

 手近な食堂に入ると、ボスへの偵察を打ち合わせた。
 基本的な動き方、緊急時の行動について、転移結晶のタイミングなどなど。
 ミーティアは確実に強くなってきている、勿論レベルや装備的にもそうだがなにより臆すことなく敵に剣を振るう姿はさながら姫騎士だ。
 これならいけそうだな。
 雑談も交えつつの打ち合せも終わり、次に会うのは3日後の偵察の時だった。

 そして第一次25層ボス偵察。結果としては成功の範疇だろう。
 ボスのHPバーは5本で姿は双頭の龍、ブレスは確認できなかったが取り巻きもおらずパターン変化はHP3本目で起こるようだ。
 攻撃も噛み付きなどがメインで、タンク隊とのスイッチを繰り返せば攻略もかなり楽だろう。
 しかし、それを伝えたのはボロボロになったマントを纏った青年と折れたレイピアを握り締め泣いていた少女、その二人だけだった。
 12人中6人がボスの攻撃により死亡、4人が特殊攻撃と見られる地割れに巻き込まれ詳細不明だった。
その成果に釣り合わない大きな代償に、攻略組は言葉を失った。
 精鋭を10人も失ったことにより、攻略はかなり遅れることとなる。
 後に「クォーターポイント」と呼ばれることになる25層区切りのボスの強力さ。
 その洗礼を俺達は浴びた。 
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