Sword Art Online 月に閃く魔剣士の刃
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9 眠る星が目を覚まし
「んで、こんな感じでローテを回してHPの負担を軽減していくわけだが...。なぁ、頼むから気にしないでくれって...。」
時刻はお昼、今俺はミーティアへのレイド戦レクチャーの真っ最中である。
「べ、別に気にしてませんっ!!」
「じゃあちゃんと目を合わせようか?」
ズイっと顔を近づけてみると、
「ひぁッ!?そういうの反則です!!」
弾かれたようにミーティアが後ろに仰け反る。
原因は昼時の少し前、昨日から足止めを食らってた安全エリアでの事である。
「んにゅ...ん~...。」
頭を乗せていた何かが動いて、目が覚めた。すっかり熟睡してしまったのか頭がぼーっとするが目覚めは悪くない。
このままウトウトとした気分を味わっていたい誘惑を振り払い、眠い目をこすると、
「あ、起きた?」
視界より上から声がした。声の主を見上げると会って一日ながらすっかり馴染んだ青年の姿があった。
...異常に近くに。
そしてそこで自分の状況を完璧に理解、頭の中が一気に覚醒する。
「あっ!いやっそのっ!!!」
「すっかり寝てたね~、凄くいい寝顔してたよ」
システムウィンドウでなにやら作業を続けながらしれっと言い放つ。
やっちゃった...!よりにもよって初対面から一日足らずの男の人と...。それもその膝で、挙句の果てには泣きついた......。
「んで・・・俺の膝はそんなに気に入った?」
色んな感情が頭の中にぶちまけられてフリーズする私に、膝の主が苦笑しながら顔をこっちに向ける。
一瞬なんの事か分からずに硬直して・・・意味を理解すると文字通り飛び起きた。
「いやっ!だからその!」
「まぁまぁ、落ち着け。」
青年は相変わらず作業を続けながらクスクスと笑う。
笑われているのが少し引っかかるが、何はともあれ向こうの言うとおりだ。
「その...昨夜はすみませんでした...。」
あまりの恥ずかしさに顔が燃えているようだった。
「別にいいよ、こっちとしても役得どうも。」
役得!?今役得って言った!?
もうそろそろ頭がオーバーヒートして考えられなくなってきたところへ、
「二人ともおはよー、朝から面白いことってなに?」
アスナがひょっこり現れてきてますます頭がこんがらがる。
「ちょっと遅かったな、あと10分早ければいいもん見れた。」
とシュンが軽口で応じる。
10分早ければ、この言葉からして見せたかったものとは明らかに寝ていた私である。
「もう、勘弁してよ...。」
二人に聞こえないように小声で呟くと顔を伏せた。
それから少し段取りを話していたようで、真剣そうな面持ちで話し込むとアスナは帰っていった。
その間に頭の整理は終わってやっと平常運転にもどる。
「んじゃ、早速ボス戦に向けての話しに入ろうか。」
そんな言葉で講義は始まった。実際に経験を重ねているシュンの説明は分かりやすく、すいすい頭に入ってくる。質問への答えも迷いはない。
しかし問題が一つあった。
目を合わせられないのだ...。主に恥ずかしくて。
少しでもその青い目を見てしまうと膝を借りて熟睡している自分がどうしても頭に浮かぶのだ。
意地でも目を合わせようとしない私にシュンはクスクスと笑い、でも何も言わずに今に至る。
「ほんとにそういうのいりません!!」
「おれがやってみたくなっただけだよ、それにそんなに言うなら目合わせてよ。」
「う...」
まあそんなやり取りも講義が進むにつれて減っていき、
「まあそんな感じだ。といっても正直ぶっつけ本番になると思うしその辺のシュミレーションはそっちに任せとくよ。こればっかは俺にはどうしようもないし。」
「はい!分かりました!」
「さてっと、今度こそ街に帰ろっか。それともまた膝貸そうか?」
「からかわないでください!!早く帰りましょう!!」
傍から見ればまるで恋人同士のやり取りは帰路でも続いてた。
そんな風に知識面の目標はクリアしたため、今度は能力的な目標の番なのだが...。そこからの一週間はまさに猫の手も借りたくなるような忙しさだった。
なにせ、私は今まで最前線の2~3層下での活動が殆どだったのだ、
最前線で戦力として通用するためのレベリングや装備、道具類の調達などやることは山積みだ。武器はレイピアを新調し、防具と盾は強化可能回数が無くなるまで片っ端から鍛えられた。
お陰でDPSは跳ね上がり、防御力も盾での防御時のスリップダメージも殆ど気にならないレベルまで底上げ出来た。
そうして装備を整えると、クエスト消化と並行してひたすらレベリングを繰り返す。
その途中、シュンのアドバイスで新たに【戦闘回復《バトルヒーリング》】のスキルを取った。HPが少しづつだが自動で回復するという中々便利なスキルだった。
そんなこんなで現実とは少し違う自分磨きをする日々がほんの少し続き、
「只今から、第25層ボス攻略会議を行います」
いよいよその日は来た。
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