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ひねくれヒーロー

作者:無花果
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賢者は聞き、愚者は語る


賢者は聞き、愚者は語る。
—ソロモン—

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賢者は聞き、愚者は語る












◇◆◇コン◇◆◇






サスケ、忘れるなよ

忘れたらオレが

殺しに行くから


忘れるなよ


忘れたら———













「オレが・・・殺す!」












叫びながら飛び起きる

ただの夢だったのかと溜息をつこうとして、口周りに呼吸器が取り付けられていることに気づく


「寝起きに超物騒な事言ってるこの子・・・」


見渡せばいろんな人がいた

何か怖がっているペインに綱手に三代目、先生にシュロ、イカリ・・・

ナルト、シカマル、自来也、カカシ、ガイ先生

何故か砂の三姉弟までいる


「あれ・・・皆なんでいんの?」


つーかここ病室だ

皆仕事放り出して何やってるんだか


「コン、お前はこの二週間、昏睡状態だったんだぞ・・・」


先生に抱きしめられる

・・・ちょっと待って


「・・・は?
 二週間?」


そんな丸々二週間も昏睡状態なんて初めての経験だ


「ああ・・・吃驚したぞ・・・目が覚めて、良かった」


・・・先生が、泣いていた

いつも通りの無表情だけれど、涙が滝のように流れている

もう一度周囲を見渡せば、同期組は皆、目元が赤かった


「コン!・・・コン!」


ベッドに飛びこんできたのはナルト

目元が赤く、鼻水が垂れている

汚いなどと、振り払うことは出来なかった


「良かった・・・生きてて良かった・・・」


オレの手を握り締めてシュロが言った

泣いてこそいないが、鼻が赤い


「シュロ・・・昏睡状態でそれは言いすぎじゃ・・」


たまに意識がなくなるぐらい、今までもあったじゃないか

そう思って軽く笑い掛ける


「お前の心肺停止したからオレ等呼ばれたんだよ!!」


怒られた

・・・あれ、あのまま目覚めなかったら葬式フラグだった?

自来也は涙で物も言えない状態で、同じように泣き崩れる綱手を支えていた


「本当に・・・死んだかと思ったんだからね・・・」


ボロボロと涙をこぼして、オレの呼吸器をはずしていくイカリ

待って、お前外して良いの?綱手に外させてよ

手際良く外されていく呼吸器を見て、ある程度のレクチャーを受けていると確信する


「イカリ・・・その、無茶してゴメン」


「本当だよ・・・このバカ・・・」


額にキスの雨が降る

恥ずかしさに避けようと体を捻るが、シュロとナルトがオレを抱きしめ固定した

まだ先生にも抱きしめられているというのに・・・三人分の体重がオレを襲う

視線を感じて、視線の主を探すと、我愛羅がじーっと見つめていた

 
「・・・君麻呂戦、手助けありがと」


視線に耐えきれず、顔をそむけて礼を言う

一体何がそんなに気になるのやら・・・


「・・・あぁ、あの骨使いのことか・・・」


・・・自己紹介とか、してなかったもんな

普通敵の名前なんか知らないか


「え?! コン、あいつと戦ったんだってば!?」


ナルトが叫び、一瞬だけ姿を見ていたシカマルも表情に驚愕が漏れている


「・・・戦ったというより・・・燃やした?」

「溶かした・・・の間違いだろう」


・・・いや、骨は確かに溶けてたけど・・・

どっちかといえば燃やした、じゃないかな

シュロやイカリからよく戦えたなと感心される

すると隅で黙っていた砂の姉弟がぼそぼそと何かつぶやいている


「うっわ・・・えげつねえのが木の葉にもいるじゃん・・・」

「流石地獄の業火と言われるだけある・・・」


・・・・・・

聞きずてならない、言葉が聞こえてきた


「何それ地獄の業火とか超痛い」


心からの感想は、転生組にしか通じなかった


「どこか傷でもあるのかい?」


ペイン、あんたが天然だっていうのは理解した

だから黙っていろ











◇◆◇三代目◇◆◇






地獄の業火

それはこの幼い下忍に与えられた不釣り合いな二つ名

木の葉の者には緘口令をひいていたというのに、他里の者から安々と漏れるとは思わなんだ

病室に集まったときに、言っておくべきであったのう・・・

余計な気を使わせまいと、頑なに隠した結果がこれか・・・



ねたみコンは里外へ飛び出し、音忍と交戦した後、森で倒れているところをカカシに発見された

死んではいないが、何時死んでもおかしくない重傷の身

通常であればすぐさま入院させ、治療させるべきであった


しかし、あの子をそのまま木の葉病院へ入院させるには、危険過ぎる事情があった


「噂というのは、厄介なものだな」


担当上忍、シナイが漏らした言葉

木の葉の下忍たちは皆、何のことかと首を傾げる


ねたみコンにまつわる噂


大蛇丸と対峙し、なおかつワシを救いだしたという噂は千里を駆け巡り、他里に知られるようになった

共に戦った再不斬の存在は、抜け忍故捕縛せねばならんことを憂いた自来也の取引により抹消され——

自来也の弟子・ペイン六道長門と共に自来也も途中まで里を守護していた目撃情報から、あの場にはワシら三人しかいなかったと他里から認識された



”伝説の三忍”大蛇丸と対峙し、右腕を切り落とし、なおかつその身に重度の火傷を負わせた”下忍”



それが他里に伝わるねたみコン



天才と謳われた大蛇丸の腕を切り落とす剣術に、重度の火傷を負わせるほどの火遁の使い手


そう思われても仕方がない・・・功績


木の葉を平和ボケした里だと口悪く罵る者たちにとって、その存在はまさしく恐怖

うちはイタチの再来かとまで噂されるあの子を狙い、成長しきる前に暗殺を企む者は後を絶えなかった


木の葉崩し後の復興支援などに紛れ込み、侵入してくるものも多く、コンをあえて里外任務へ出させ、その間に不届き者を一掃したのも記憶に新しい



「イカリ、お前はコンについて何を知っている?どう思っている?」


ずっとコン君を抱きしめておったシナイが問いかけた

首を傾げて、しかし素直に答える志村イカリ


「・・・虚弱体質で、上忍顔負けの隠行術と知識を持つ・・・自慢の息子です」


家族だと公言しておる話は聞いておった

弟ではなく息子か・・・

体も小さいし、そういう気になるのは仕方がないか


「だが他里の者はそう思ってはいない」


隠行術が素晴らしいのはある程度の者は知っている

木の葉の一部しか知らぬが・・・

砂の姉弟が頷き、同意を示す


「・・・? 
 何故、他里が出てくるんですか」


他里は知識の豊富さも、隠行術についても知らぬのだ

中忍試験で見せた、前代未聞のペーパーテスト全問正解・・・

模範回答で埋め尽くされた問題用紙はすぐさま高評価を得た


「コンは他里の者に命を狙われている」


静かに言いきった

確かに、この入院中も何人もの暗部が送り込まれてきおった


「———!」


それを知り、息をのむ木の葉の者たち

・・・コン君は、命を狙われるような人物ではないというのに・・・


「音の里を筆頭とし、小国大国関係なしに暗殺者が送られてきた
 全ては大蛇丸と対峙した結果、有名税といったところだな」


伝説の三忍対下忍

酒の肴にはちょうど良い英雄譚、脚色して話すには持って来いの題材

そんな心ない者たちによって、噂は脚色され、突拍子もないものとなった



・・・地獄の業火すら操る火遁使い


それが他里にとっての、ねたみコン



「何なんですか、それ・・・っ」


「あぁ・・・地獄の業火とかないよな・・・」


痛々しいと呟いたシナイ

あのようなか弱い身で、地獄とは・・・確かに痛々しい限りじゃ


「シナイちゃん、絶対に違うこと考えてるだろ」


「うん」


・・・六班は、わしには理解出来ないナニカで通じ合っておるようじゃの・・・

















◇◆◇サスケ◇◆◇




大蛇丸の元に来て二週間ほど

姿形の変わった大蛇丸に最初こそ驚きはしたが、今ではもう慣れた

このオトコならなんでもありなんだろう

そう決めつけて対応するのが、一番心に負担がかからないと気付くのに三日かかった


そう思わないと、ここの奴らのおかしな会話に洗脳される


一通り修行が終わり、汗を拭っていると不意に大蛇丸が話しかけてきた



「ねえサスケ君・・・貴方は、ねたみコンっていう子と親しかったかしら?」



ねたみコン

そういえば大蛇丸と対峙したとカカシから聞いたことがある


・・・親しいかと聞かれれば、どうなのだろう


あまり好きでなかったシュロと良くツルんでいたから、こちらから接触する事は・・・結構あったな

波の国での任務が終わってから、チャクラコントロールについて良く相談したりした



正直、カカシより教えるのが上手かったと思う

何よりカカシと違って放置しない



アカデミー時代は・・・くのいちクラスの奴らに追いまわされたときに、それとなく匿ってくれたな

頭が良いと分かってからは、放課後に大人しい組が集まって勉強会したり・・・

たまに演習で組んだぐらいか


下忍になってからの方が付き合いがあったな



・・・アイツの、最後の言葉、忘れるわけにはいかない



「・・・同期の中じゃ、まだ付き合いがある方だったな」


「そう・・・なら、あの子の火遁について何か知ってる?」


火遁か・・・

波の国でも中忍試験でもよく火遁を使っていたな

木の葉に伝わる火遁ではないと思う


何処か生き物のような、意志を持った火

今思えば火遁にしてはデタラメな印を組んでいたような気がする


もしかしてあれはアイツの血継限界だったのだろうか


「・・・血継限界、とは違うのか?」


「私も、そう思ったんだけどね・・・
 何かが違うのよ・・・転生した今も尚、火傷が残っているの・・・」


どう思う?

そう首を傾げられ、問われる


体が変わっても火傷がそのまま残るなんて、聞いたことがない



「噂の地獄の業火も・・・あながち間違いじゃないかもね・・・」



噂?


のちにカブトから噂の内容を知らされ、あまりにも脚色された内容に呆然とした


思わずどちらさま?と呟いたオレは悪くない


その呟きにカブトがサスケ君が丁寧語・・・!?と呟いた顔を忘れない

ブチ割るぞ眼鏡






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コンを社会的に死亡させて、暗部まっしぐらルートにしようかと思いましたが方向転換


痛々しい通り名が出来たよやったね!


・保健室の主
・後始末班
・巫子
・地獄の業火←NEW!

 
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