劇場版・少年少女の戦極時代
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
サッカー大決戦!黄金の果実争奪杯!
サッカー大決戦
『たしかに紘汰くんは強いわ。でも、ラピスが弱いってことにはならないと思う』
咲は変身を解き、ラピスと向き合った。生身で、肉声で伝えるべきだと思った。
「サガラ言ってた。あなたはあいつの封印のクサビだったって。それって自分をギセイにあいつを閉じこめてたってことでしょ。フェムシンムが争わないように願って。だれかのために自分をギセイにできるあなたが、弱いなんてこと絶対ないって、あたしは思うよ」
ラピスは小さく瞠目し、右手で左手の銀の腕輪を押さえた。
咲は倒れた湊たちに駆け寄った。
「おねーさん、だいじょうぶ?」
「ぎりぎり、ね。でもまだ倒れるほどじゃない…っ」
咲はほとんど抱きつくようにして湊を支えた。湊は咲に支えられながらでも、立ってみせた。
「光実くん、戒斗くん」
呼びかけた二人の男は、地面に膝と肘を突き、自力で立ち上がった。咲は安心した。
「奴一人に任せておけるか…!」
「紘汰さんには、僕たちが、ッ、いないと」
「うん。みんなで行こ。紘汰くんのとこっ」
咲は鎧武とコウガネが馬を走らせて行った方向へ走り出した。ラピスや戒斗たちも付いて来てくれた。
シャムビシェたちが追いついた時には、鎧武はコウガネと雌雄を決する寸前だった。
巨大な炎の馬に跨るコウガネ。その炎の馬に対し、臆せず手綱を打って、火縄大橙DJサーベルを手に馬を走らせる鎧武。
炎の馬が火球を吐く。鎧武は馬を操り火球を避け、どんどんとコウガネに迫っていく。
『うおおらあああああッッ!!』
そして、巨大な炎の馬の下に潜り込み、火縄大橙DJサーベルで炎の馬をコウガネごと真っ二つに斬って駆け抜けた。
――その姿の、何と雄々しく、逞しいことか。
シャムビシェは知らず胸の前で拳を作っていた。
大爆発が起きた。
その爆発の中から6つの光球が飛び出した。光球はコウガネが今までに取り込んだであろう、6人のアーマードライダー――貴虎、ザック、ペコ、凰蓮、城乃内、初瀬に変じた。
『みんな!』
鎧武が馬を降り、救い出された者たちに駆け寄った。
咲たちもまた走り出し、あっというまに鎧武の周りは人でいっぱいになった。
(これがコウタの信念の結果。ボクも信じていれば、かつてとは違う結果になっていた? いいや、もう昔のことはいい。今、諦めずに立ち向かえば、コウガネにだって――)
『ようやくいい顔をするようになってきたじゃねえか』
シャムビシェは驚いてふり返った。後ろに“蛇”の幻像が経っていた。
驚いて、次いで戸惑った。“蛇”が何を指して言っているのかが分からなかったからだ。
『もう少し早くその顔を見せてほしかったが、ま、しょうがないか。――ほら。受け取りな』
“蛇”が投げたのは、紘汰たちが使うようなドライバーと、銀のリンゴロックシードだった。シャムビシェはそれらを抱え込むようにキャッチした。
“蛇”をまじまじと見つめると、“蛇”は笑って肯き、消えた。
『おおおおおおおっっ!!』
はっとして前を向き、身構えた。
コウガネは爆発で生じた大火を化物の咢に変えたのだ。
『こうなれば貴様ら全て、跡形もなく滅ぼしてやる!!』
シャムビシェはふり返る。鎧武は、仮面に隠れて分からないはずなのに、シャムビシェに強く笑いかけた、気がした。
『行くぜ』
鎧武を中心に、元からいた咲たちと、助け出された人々が一直線に並び始める。
シャムビシェも強く肯き、鎧武の横に立った。
戦極ドライバーを装着する。インジケータがイニシャライズされる。
『『『変身!!』』』
全員がおのおののロックシードをドライバーにセットした。シャムビシェもまた、銀のリンゴロックシードを戦極ドライバーにセットした。
《 シルバーアームズ 白銀・ニュー・ステージ 》
銀のライドウェアがシャムビシェを覆い、その上から、青いリンゴの鎧がシャムビシェを装甲した。手には、腕輪と同じ意匠の銀の杖。
シャムビシェを含めて12人のアーマードライダーが、ここに、立った。
炎の咢の中、コウガネの背後で、大きなリンゴの形をした果実が赤と金に輝いた。
『あれは……』
『あれがあいつの本体だ』
遠い昔、あの禍々しい果実を封じるため、シャムビシェは自らを人柱とした。だが、今はそうしようとは思わない。
紘汰がいて、これだけの強い戦士たちがいて、怖いものなど何があろうか。
『コウタ。ボクの力を使って』
シャムビシェは蒼銀杖を掲げ、自らを球形――サッカーボールの形へと変えた。
炎のフィールドで、シャムビシェの人生最初で最後のサッカーが、始まった。
ボールとしてパスされるたびに、シャムビシェは触れたアーマードライダーの「ユメ」の供給を受け、力を増していく。
色とりどりで、形もそれぞれの、11人分のユメ。黄金一色しか持たないコウガネに、この輝きは決して負けはしないだろう。
『戒斗くん、おねがい!』
月花がバロンに向けてヘディングでシャムビシェを送り出す。月花――咲のユメもまた、この時感じ取ることができた。
『葛葉!』
バロンがボールを高く蹴り上げた。
鎧武が大ジャンプし、そのボールをコウガネの本体に向けて蹴り出した。
『させるか!』
コウガネもまたジャンプし、本体への攻撃をガードしようとする。
シャムビシェはここで一度だけ変化を解き、蒼銀杖をコウガネの胸に突き刺した。これでコウガネは逃げられない。
後ろから迫る鎧武渾身のキックを察知し、自身を再びボールへ変化させる。
鎧武は蒼いボールごと、コウガネを本体の炎のリンゴへ叩き込んだ。
『私は神だぞ!? それを何故、貴様らなんぞにィィィィ!!』
炎のゴールネットが、コウガネとシャムビシェを受け止めたまま、爆発して――… … …
後書き
ボール役のシャムビシェを除いて「11人」。
映画観て「結局ラピスがボールになるなら10人じゃん!」と思ったのがこの展開を思いついたきっかけでした。
ページ上へ戻る