劇場版・少年少女の戦極時代
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サッカー大決戦!黄金の果実争奪杯!
ラピスとの別れ
気がつけば咲は、廃墟となった駅前ショッピングモール跡地に立っていた。
人を探してあちこちを見回すと、咲のちょうど真後ろに紘汰がいた。
「紘汰くん!」
「咲ちゃんっ」
すぐ近くまで駆け寄り、互いに正面から向き合う。
咲は目を泳がせた。ヘキサを探すためとはいえ、別行動宣言をした紘汰に対し、どんな顔をすればいいか分からなかった。
『コウタ、サキ』
「「ラピスっ」」
現れたラピスの顔は変わらない。だが、初対面でまとっていた哀愁は、今のラピスからは感じなかった。
『ごめんね。キミたちには本当に迷惑をかけた。でも、全部終わった。これでボクも、安らかに眠ることができる』
「ラピス。それは一体どういう意味だ?」
ここでラピスは笑った。彼が心から笑った顔を、咲は初めて見た。そして、同時に彼が言う「眠る」の意味も、理解できてしまった。
『ありがとう、コウタ。ボクにサッカーを教えてくれて。サキも。最後まで信じてくれて、ありがとう』
ラピスの体が淡い金色に輝き始めた。足元から光に分解されていくように、ラピスの姿が消え始めた。
「わすれないから!」
引き留めてはいけない。それでもただお別れは寂しいから。
「シャムビシェといっしょにサッカー応援したことも、空飛んだのも、最後にシャムビシェだって戦ったのも、絶対絶対わすれない!」
『……ありがとう。ボクも忘れない。これからは、コウタとサキの夢を見ながら眠るよ』
ラピスは儚い笑みを浮かべた。その笑みもまた、金の光となって空へ舞い上がって行った。
「あいつはずっと、独りで頑張ってきたんだな」
「シャムビシェ……」
泣きそうになって俯いた。紘汰が上から咲の頭に手を置いてくれた。涙は我慢できた。
(ひとりでがんばるなんて、えらいけど、それじゃさびしいよ)
咲は思い切って紘汰を見上げた。
「あの、ね。自分で言い出しといてアレなんだけど……やっぱりあたし、紘汰くんといっしょにいていい?」
紘汰はきょとんとしたが、すぐに笑みを浮かべ手を差し出した。
「ああ。一緒に頑張ろう」
握り返した。いつかの、「戦友」として共に戦おうと約束した時の握手と、同じ感触がした。
(あたしは幸せ者だ。前に他人にヒドイことしたのに、今こうして、楽しくてやさしい思い出を積み重ねていって、ゆるされてる)
ラピスは咲に笑いかけてくれた。優しく接してくれた。
だが、それはあくまでラピスが、であって、咲が傷つけた「彼」が、ではない。
「紘汰くん。あたし、ぜんぶおわったらやりたいこと、見つけた」
「へえ。なに?」
「謝りたい人がいるの。その人んとこ行って、ちゃんと『ごめんなさい』してくる」
紘汰はそれ以上を問わず、そっか、とだけ短く答えた。
「行こう」
紘汰が歩き出す。咲もまた紘汰に並んで歩いて行った。
友を求めて。平和を求めて。――誰も傷つけ合わなくていい世界を、求めて。
【サッカー大決戦! 黄金の果実争奪杯! –完-】
後書き
ワールドカップの時期に引っかけてのサッカー要素に、正直地雷だと思い込んで観に行くことをしなかった自分を殴りたいです。
ラピスのことや、昔のフェムシンムのこと、そして最後の「サッカー」という形での締め。見事なドラマが出来ているではありませんか。
先入観ってよろしくないですね。いい作品でした、本当に。
少しでもこの儚さや強さを表現できるよう、最後まで頭をひねりました。あとはお読みになる読者様方にどう感じるかを委ねます。
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