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義父

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第二章

「けれどね」
「お義父さんも凄いっていうのね」
「うちの親父は兄貴は真面目さが前に出ているんだ」
「お義父さんとお義兄さんは学者系よね」
「大学、仏教学科でもね」
 僧侶の資格を得ると共に仏教のことを学ぶ学科だ。蒼弥もその大学のその学科を出て僧侶の資格を得ている。
「勉強熱心だったし」
「あなたもそうだったんじゃないの?」
「僕はあそこまではね」
 実父や兄の様にはというのだ。
「勉強していないから」
「お気楽だったっていうのね」
「そう、だからね」
 それでだというのだ。
「親父や兄貴とはまた違うから」
「あなたはあなたで」
「このお寺に入ったし」
 それなら尚更、というのだ。
「お義父さんみたいになりたいけれど」
「お義父さんが今のお師匠さんということもあって」
「うん、余計にね」
 そう思うというのだ。
「ああした人になりたいね」
「優しくて穏やかで」
「何事にも動じないね」
 そうした人になりたいというのだ。
「是非なりたいよ、けれどね」
「それが難しいっていうのね」
「無理だろうね」
 少し苦笑いになってだ、蒼弥は前を見て運転しつつ答えた。
「僕には」
「目指しているけれどそれでも」
「無理だろうね」
 こう言うのだった。
「僕には」
「そうなのね、けれどね」
「それでもっていうんだね」
「無理だって思ったらね」
「それで終わりだよね」
「ええ、努力してこそね」
 そうしてこそというのだ。
「なれるものだから」
「お義父さんみたいにも」
「だからね」
 それで、というのだ。
「あなたもね」
「お義父さんみたいになろうとして」
「そうしていってね」
「なれるんだね」
「そう、だからね」
 雅は優しい笑顔で蒼弥に話す。
「少しずつでもね」
「お義父さんに近付いていけばいいね」
「そう思うわ」
 夫婦でこうしたことを話していた、そうして彼は日々寺を継ぐ者として僧侶として義父を見ていた。だがその彼にだ。
 当の宗吾はだ、蒼弥にその温和な笑顔でこう言うのだった。
「わしは別にな」
「別にとは」
「尊敬される様な人間ではないし」
 それに、というのだ。
「目指される人間でもないよ」
「いえ、それは」
「いやいや、蒼弥さんの方が」
「僕の方がですか」
「立派だよ、しっかりといていて」
「そうは思えないです」
 とても、と返す蒼弥だった。 
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