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戦国異伝

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第百八十九話 その一手その六

「そうして共にな」
「織田家とですか」
「戦いまするか」
「とにかく滅びぬことじゃ」
 織田家がというのだ。
「当家がな」
「若しもです」
 ここで家臣の一人が元就に問うた。
「ここで戦わねばどうなりますか」
「その時はか」
「はい、当家は」
「滅びる」
 戦わねばというのだ。
「そうせねばな」
「そうした戦ですか」
「次の戦は」
「うむ、退く訳にはいかぬ」
 決して、というのだ。
「一戦交える」
「勝てるでしょうか」
「勝てずともだ」
 それでもというのだ。
「戦うのじゃ」
「家を守る為に」
「そうする、ではよいな」
「では今より」
「備中に」
「この度の戦は厳島の時よりの賭けになるがな」
 元就の顔は険しい、まさに生と死の狭間にある顔だ。その中から生を何としても選び生き抜こうという覚悟がそこにあった。
 そしてその顔でだ、彼は言うのだ。
「わしはその賭けに勝つぞ」
「そして家を」
「毛利家を」
「うむ、守り抜いてみせる」
 こう言ってだった、元就は軍を率いて出陣した。動かせる戦力を全て連れてそのうえで安芸から備中に進むのだった。
 信長も大軍を率いて備前から備中に進む、その中で。
 彼は家臣達にだ、確かな声で言った。
「十二郎もじゃな」
「はい、 備中に向かわれているとのこと」
「ですから」
「備中で合流してじゃな」
 そうしてと言うのだ。
「その備中でな」
「戦ですな」
「再び」
「備中では高松城を目指す」
 その城をというのだ。
「よいな」
「あの城ですか」
 高松城と聞いてだ、竹中が信長に言って来た。
「あの城は三方を水に囲まれた堅城です」
「攻めにくいと評判じゃな」
「はい、かなり」
「この数でもじゃな」
「攻めるとなりますと」
 そうするとだった。
「かなりの数を失うかと」
「そして時間もかかるな」
「はい、そうなります」
「普通に攻めればそうじゃな」
「左様かと」
「それではな」
 竹中のその言葉を聞いてだ、信長は確かな顔でこう言ったのだった。
「御主に策があるな」
「一つ」
「ではその策を見せてもらおう」
「さすれば」
「高松で決めたい」
 毛利との戦を、というのだ。 
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