戦国異伝
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第百八十九話 その一手その七
「是非な」
「それ故に」
「今水軍は備前の海におる頃じゃ」
瀬戸内の海を西に進んでだ。
「そしてな」
「そのうえで、ですな」
「うむ、伊予の方もな」
織田家が四国の中で唯一領地にしていない国だ、この国もというのだ。
「人を送っておる、あの国は国人ばかりじゃが」
「その伊予も」
「備中で毛利との戦が決まれば」
「その時にですな」
「一斉になびく」
織田家にというのだ。
「そして伊予は織田家に加わる」
「あの国もですな」
「そうなる、それだけにな」
「備中において」
「毛利との戦を終わらせる」
確実にだ、そうするというのだ。
「その為の知恵を借りるぞ」
「さすれば」
「それで殿」
ここで言って来たのは大谷だった。
「その備中での毛利家との戦ですが」
「主が出て来たな」
「はい、毛利元就自ら」
大谷は信長にこのことを言うのだった。
「そして備中で息子達の軍勢と合流し」
「我等に戦を挑むか」
「その数五万」
毛利の六万の軍勢のうち五万だというのだ。
「それだけの数で来ます」
「左様か、遂に自ら来たか」
「殿、ここはです」
大谷は信長に強い声で進言した。
「まずはその毛利の軍勢と一戦交え」
「そのうえでじゃな」
「高松城に進むべきかと」
「そしてそこでじゃな」
「毛利との戦を終わらせるべきと存じます」
「その通りじゃな」
信長は大谷のその進言をよしとした。
「桂松の言う通りじゃ」
「さすれば」
「まずはじゃ」
あらためて言う信長だった。
「毛利の軍勢と一戦交え」
「そのうえで」
「高松城に向かい」
そうして、というのだ。
「あの城を攻める」
「そうされますな」
「そこで毛利との戦を終わらせる」
「若し毛利が最後まで戦うと言えば」
ここでこう問うたのは稲葉だった。
「その時は」
「そうなることも考えられるな」
「その場合はどうされますか」
「考えられるがそれはない」
毛利が最後まで戦うことはというのだ。
「間違ってもな」
「そう言える訳は」
「毛利は滅びるつもりはない」
「だからですか」
「最後まで争うよりはな」
それよりはというと。
「講話をしてじゃ」
「そのうえで生き残りますか」
「かなり領地が減ってもな」
それでもだというのだ、元就は。
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