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戦国異伝

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第百八十九話 その一手その五

「一つ、主家さえ再興出来れば」
「それで、ですな」
「他に望みはありませぬ」
 こう強く言うのだった。
「ですから」
「そのことですが」
 どうにもという顔でだ、秀長がその山中にいうことは。
「山中殿ならば」
「それがしならですか」
「はい、織田家の家臣として」
 既に客将であるがその立場だ、しかし正式に入ってというのだ。
「その槍働きで相当なものが得られますが」
「その通りですな」
 長政もだ、秀長のその言葉に頷いて言うのだった。
「山中殿ならば十万石取りも夢ではありませぬ」
「それがしもそう思いまする」
 羽柴も言うのだった。
「今山中殿の禄は三万ですな」
「一応それだけ貰っていますが」
 それでもと返す山中だった。
「それがしの禄は禄ではなく」
「尼子家の為ですか」
「はい、ですから」
 それでだというのだ。
「それがしは禄もいりませぬ」
「その三万石も尼子家の為ですか」
「そうですから」
「いらぬと」
「何度も言いますがそれがしは禄もいりませぬ」
 そうした欲もというのだ。
「ですから」
「左様でござるか」
 ここまで聞いてだ、長政は一旦目を閉じてだった。
 そのうえでだ、こう山中に述べた。
「では尼子家の為に」
「はい、戦わせて頂きます」
「それでは」
「その様に」
 山中の考えは変わらなかった、彼はあくまで尼子家の再興のみを求めていた。そうしてその尼子家の領地である出雲を目指すのだった。
 織田家は備前、因幡にだった。美作も手に入れてさらに西に進んでいく。その頃安芸の吉田郡山城ではだった。
 元就がだ、家臣達に具足を着けた姿でこう言っていた。
「ではじゃ」
「「はい、今より」
「備中に出陣し」
「織田家と戦う」
 その主力と、というのだ。
「よいな、しかし」
「しかし?」
「しかしとは」
「滅びぬ戦をする」
 こう言うのだった。
「家がな」
「家がですか」
「滅びぬ戦をですか」
「それをする」
「勝つのではなく」
「滅びぬですか」
「家は守る」
 毛利のその家はというのだ。
「絶対にな」
「しかし勝つのではなくですか」
「滅びぬ戦をですか」
「する為にですか」
「これより」
「うむ、出陣してな」
 そしてというのだ。
「戦うぞ」
「わかりました、では」
「これより我等も」
「そしてじゃ、備中でな」
 戦になるその国でというのだ。
「息子達と合流する」
「隆元様達とも」
「そうされますか」
「そうする」
 こうも言うのだった。 
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