普通だった少年の憑依&転移転生物語
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
ゼロ魔編
051 救出
SIDE 平賀 才人
「さて、行こうか」
「……ええ…。ところであいつは? 殺しちゃったの?」
〝あいつ〟──シェフィールドの事だろう。ルイズは平素の調子を取り戻したのか恐る恐ると云った感じで、シェフィールドの所在を訊いてくる。俺がシェフィールドを斬った時はルイズは目隠しをされていた。……ルイズからしたら、いきなり俺と会話していたシェフィールドが居なくなっていたので気になったのだろう。
「やつは──いや〝アレ〟は“スキルニル”と云う、限りなく本体を模倣出来る魔法人形だった。……〝本体〟はどこか知らない」
「ふぅん…」
落ち着いたルイズを〝魔獣〟に乗せ、四方山話をしながら学院への帰路に着く。……シェフィールドが乗っていたガーゴイルは、シェフィールドの専用になっていたのか、うんとも寸とも云わずに使い物にならなくなっていたので、その場に放置する事にした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「さぁ、説明してもらおうか」
「………説明」
「……サイト、どうかしたの?」
元のテラスに戻ってみれば、直ぐ様ユーノとタバサに詰め寄られる。……俺のした事を知らないルイズは首傾げながら訊いてくる。
「……とりあえずはユーノとタバサの質問からだな。ユーノなら判るとは思うけど、“大嘘憑き(オールフィクション)”──〝スキル〟と云う、魔法に近いが魔法とは違う力でシェフィールドがパーティーホールを爆破した事を〝無かった事に〟しただけだ」
「“大嘘憑き(オールフィクション)”って、あの〟? ……全てを〝虚構(無かった事に)〟出来る…? ……いや、でも“赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”じゃないの?」
「……ユーノには後でその辺の詳しい話するよ」
「……そうだね。……〝ここでは〟その辺の話はムリか」
最早猫を被る事を忘れているユーノを、ルイズとタバサに目を遣りながら宥める。
「あ、ちなみにオフレコな。〝スキル〟とか“大嘘憑き(オールフィクション)”のか事については。……理由は判るだろう?」
「………それは〝異端〟になるから?」
「Exactrly(その通りにございます)」
「………判った。誰にも言わない」
タバサは、俺の思い出した様な注釈に鷹揚に頷く。それを見て俺はほっと安堵の息を漏らす。
「……そういえば、サイト。“大嘘憑き(オールフィクション)”ってあれよね。ちぃ姉様を直した時に使ってた〝アレ〟の事?」
「そう、よく覚えてたな──ん? タバサはどうした?」
ルイズの頭を撫でながら誉めていると、タバサの表情がいきなり、いつもより倍増しで固まったのが判った。そんなタバサの表情をまじまじと見ていると、タバサは俺へといきなり傅てきて──
「………貴方に頼みたい事がある」
「……ワケありっぽいな。……話を聞こう。タバサ──いや、シャルロット・エレーヌ・オルレアン嬢」
「………どうしてその名前を…!?」
タバサ──シャルロットは目を目一杯見開いて驚きの表情を浮かべ、その小さくて華奢な体格には似合わない杖を構える。
「まぁ、自分を〝監視〟している人間の身元くらいは調べるさ」
(……どうやら俺は、面倒事に巻き込まれる体質になったらしいな…。……だが悪くない)
「………判った。話す」
「……?」
またもや話に付いて来れなくなって、首を傾げているルイズに和まされな
がらそう思った。……だがいい加減その体質に慣れたのか、〝それ〟に悪い気がしていないのが始末に負えなかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「つまりシャルロットは──慣れているタバサの方で呼ぼうか。……タバサの母親は、伯父であるはずのガリア王に某かの薬で心を壊されたと」
「………合ってる。原因不明と云われていたヴァリエール家次女の病を治した、〝スキル〟とやらの力を持つ貴方なら治せるかもしれない。……私に出来る事なら何でもする。だから母様を治して欲しい…。……母様は私を庇って〝あんな事〟に…っ! だからお願いしますっ…!」
<そいつぁ、多分エルフの薬だぜ、相棒>
「……いきなり声を上げるなよ、デルフリンガー」
タバサの話した内容を自分なりに纏めていると、“スキルニル”なシェフィールドの首を刎ねて以来、ずっと背中に背負ったままだったデルフリンガーがいきなり話し掛けて来た。……その口振りはタバサの母親の心を壊した薬に心当たりがある模様。
「……で、エルフの薬って?」
<おう、連中“心神喪失薬”ってな悪趣味なモンを作れるらしいんだ。……サーシャが言ってたな>
「サーシャ──〝初代〟ガンダールヴか。……〝初代〟サマってエルフだったのか? 初耳だったんだが」
<おぅ、言ってなかったか? ちなみにサーシャが俺を造ったんだぜ>
もちろんの事ながら、それも初耳だった。……まぁ現状では大して追究すべき内容でもないので、〝だからどうした〟と一言で言ってしまえばそれまでだが…。
「あの…? サイト? 出来れば私たちを置いてきぼりにしないで欲しいんだけど」
「……ああ、そうだな。……デルフリンガー曰く〝初代〟ガンタールヴ──ブリミルの使い魔は、サーシャと云う名前のエルフだったと云うだけだ」
ルイズの言葉で、埋没しかけていた意識がはっ、と急浮上してジト目のルイズとタバサを誤魔化す為に、慌てつつも何とか取り繕う。……訳知りであろうユーノは、これまた訳知り顔で何度も頷いているだけでフォローの[フォ]の字も無い。
「……それより今はタバサの話だろう?」
「……そ、そうね」
放っておいたら驚きのあまり絶叫しそうだったので、一気にタバサの話へと戻す。話を逸らしたのは俺──デルフリンガーだが…。……何かグダグダになって、どうでも良い様な雰囲気になりつつもタバサと〝依頼〟について話を詰めてゆく。
「………貴方が私の事を無茶苦茶にしたいならそれでも──」
「いらん、間に合っている」
……タバサの頬を染めながらも、声を震わせてのセリフ。……そんな幕間もあったりして、本当にグダグダな雰囲気になった。……戦犯はデルフリンガーだから、〝俺は悪くない〟と内心で自己弁護しておく。
SIDE END
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
SIDE ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール
いきなり下世話な話だが、私はかねてよりサイトに〝開発〟されている。……もちろん最初は──私がサイトに詰め寄ったのが最初だが、サイトが怖かった…恐かった。……でもサイトは無理矢理私に迫る事は無く、手取り足取り…懇切丁寧に強張っていた私の身体を余す所無く解してくれた。……その所為なのか、もうサイトが怖いなんて思う事は──以前感じていた忌避感も無くなっている。
(サイト、辛そう…)
サイトの下腹部を見遣る。サイトは私を〝開発〟するが、最後までは──否、キスすらまだして貰ってない。……だから今夜は、今日拉致されかけた事に託つけて私からサイトに踏み込む事にした。
「ねぇ、サイト」
「ん?」
現在はサイトの部屋でベッドに腰掛けながら、サイトに…所謂ペッディングをされている状態で、その状態から両手でサイトの左手を取り、ちぃ姉様より〝幾分〟か小さい──サイトのペッディングのお陰かお母様よりも幾らかは主張している胸へと持っていく。
(……っ!?)
「……どうした? ルイズ」
「な、なんでも無いわ」
今、何故かラ・ヴァリエールの方から寒気がした…気がした。
閑話休題(それは置いといて)。
「来て…」
「……良いんだな?」
「…ん……」
サイトの言葉に首肯する。サイトの手を通して私の鼓動が私の手にも伝わる。自分でも判る。目を瞑りサイトへと顔を向ける。サイトは私の意図を悟ったのか、サイトは丁寧に私の唇を奪いそのまま私に覆い被さってきて──
SIDE END
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
SIDE 平賀 才人
「すぅ…すぅ…。……サイトぉ…」
(よく寝てるなぁ…)
熱に浮かされた様にルイズと幾度も情を交わしあった後、俺はベッドの縁に腰掛けている。……〝激しい運動〟に体力が保たなかったのか、今や規則正しい寝息を発てているルイズを見てほんわりとした気分になる。
……とりあえず、ベッドの上でのルイズは献身的でいじらしく、とても可愛かったと云っておこう。
閑話休題。
「……それにしても〝これ〟はどうしたものか…」
違和を感じたのはルイズと唇を重ねた数秒後だった。ルイズとキスをした後左手の甲に違和感を覚え、ルイズを心配させまいと〝コト〟の終わった今になって見てみれば──
「〝ガンタールヴ〟のルーン、か…。だが何で今更…? ……あ、そう云えば“コントラクト・サーヴァント”がまだだったな」
―貴方、見たところメイジのようだけど公爵家の令嬢とキスが出来るんだから光栄に思いなさいよね! ……我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ──きゃっ、何よこの霧!?―
と、あの時“絶霧(ディメンション・ロスト)”でルイズの“コントラクト・サーヴァント”を遮ったままだったのを思い出す。……よもや、今の今まで“コントラクト・サーヴァント”の効能が続いているとは思わなかった。
とりあえずは〝こう云う事〟に──と云うよりは〝ガンタールヴ〟に詳しいであろうデルフリンガーに詳細を訊く為、〝倉庫〟から“デルフリンガー”を出すのだった。
SIDE END
ページ上へ戻る