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ハイスクールV×D ライド7
(危なかった……)
剣の記憶と言うよりもブラスター・ブレード……彼が剣を手にする前、アーメスと名乗っていた頃の記憶だろうが、彼の仲間だった男がブラスターシリーズの槍に飲み込まれていく様を見ていた。
故に一度乗り越えることが出来ても、出力を上げる度に同じ様な事が起こる状況は、四季自身を剣が拒絶しているとしか思えない。
理解している。二振りの剣は真の主と言うべき光と影の英雄が居る。ならば、自分が使っているのは剣達にとっても不本意なものだろう。
その度にこうして詩乃の声に引き戻して貰っている。
「……ごめん……それとありがとう。さっきは危なかった」
肉体は疲労していないが精神はかなり消耗してしまっている。それでも戦えないことは無いだろうが、流石に長期戦は無理だろう。
「祐斗、祐斗!」
「木場、しっかりしろ! アーシア早く治してやってくれ!」
「は、はい!」
グレモリー眷属は四季の一撃に吹飛ばされた木場に駆け寄って彼の治療を行なっていた。……内心、やりすぎたとは思うが、決闘の最中と言うのを忘れては居ないだろうか。流石にこれで治療した木場の再投入は幾らなんでも反則だろう。とは言え、先ほどの四季の一撃は下手をすれば致命傷にもなりかねない一撃だった。
「そんな!?」
僧侶の駒の転生悪魔であるアーシアの神器は回復型の神器である聖女の微笑み。だが、その回復型神器の力でも四季の一撃で負った木場の傷は中々癒え様としない。
(今の内に退くべきか?)
流石に不意打ちで一誠を叩き伏せる気は無いが、それでも態々決闘の最中に木場の回復を待ってやる道理は無い。
「それで、どうしてこうなったの?」
「色々有って変態を殴ったら、今度は木場に剣寄越せって絡まれた」
そう聞いてくる詩乃に対して必要最小限な部分だけで端的に説明する。特に一誠を四季が殴った理由とか。
「それを?」
詩乃の視線が四季の持っている漆黒の剣へと向かう。超兵装ブラスターシリーズの危険性は彼女も良く知っている。……と言うよりも四季が力に飲み込まれそうになった時に引き戻した事が有る。特に超兵器ブラスターシリーズの危険性については。
神聖国家を影より守る影の騎士達。だが、その前身となったのは聖域と言う光より生まれし影、聖域の暗部。
その前身となったシャドウ・パラディンに所属する者にブラスターの名を冠する武具を持った者が所属する事からも、その危険性が理解できるだろう。
だが、ブラスターシリーズは危険であると同時に強力な武器でも有る。後にブラスター・ジャベリンと呼ばれる事となる男は、初めて手にした時その武器の桁違いの違いの力に驚愕するほどだ。
「帰るか?」
「そうね。今日は買い物に付き合って貰おうと思ったのに」
「んー、詩乃の買い物になら何時でも付き合うさ。オレにとって詩乃と一緒に居る時間が一番大事なんだからな」
「待ちやがれ!」
「待ちなさい!」
二人がそんなグリモリー眷属に背中を向けて帰ろうとした時、一誠とリアスが二人を呼び止める。
「木場は負けたけど、まだオレは負けてねえぞ!」
「……それじゃ、木場はリタイアって事で良いのか?」
「ええ、アーシアの神器でも治療に時間が掛かるみたいだしね」
険しい表情で四季を睨みつけながら木場のリタイアを認めるリアス。一歩間違えれば木場は死んでいた危険性もある。彼女としても自分の眷属を此処まで傷つけた四季をただで済ませる気は無いが、元々は此方から持ちかけた賭けと決闘。
同時に一誠の『兵士』の駒の能力であるプロモーションも、自陣である駒王学園では使えない。一誠一人では四季に勝てないのは分かっているから、悔しく思いながらもこう決断するしかない。
「認めるわ。今回は私達の負けよ」
「部長!? なんでですか!? オレはまだやれます!」
「そりゃ、お前には攻撃してなかったからな」
「殴ったんじゃなかったの?」
「それは別」
実際先ほどの決闘では一誠よりも殺す気で四季に向かってきた木場の相手に集中していたので、一誠の事は殆ど無視に近い状況だった。
(迂闊だったわ)
悔しげに心の中でリアスはそう呟く。S級はぐれ悪魔を討伐したと言う情報は前もって得ていた。……だと言うのに油断していた。完全に四季の実力を甘く見ていた。……人間だと言う理由で、だ。
リアス自身、パートナー……今四季と合流している詩乃の存在も端的な情報から聞いていたことで、S級の討伐も二人で行なった物だろう考えていた。加えて聖剣……悪魔にとって毒となる聖剣を持って当たればそれだけで勝率も上がる。勝手にS級ハグレ悪魔討伐の功績は聖剣を使って二人がかりだったから討伐できたと思い込んでいた。
光の剣では無く影の剣を使ったこと、パートナーが不在で単独での戦闘。一誠と木場の二人ならば十分に勝てると思ってしまっていた。
結果、一誠の譲渡を使ってさえかすり傷一つ負わせる事無く、木場が大怪我を負う事となった。
リアスとしてもライザーを倒した時のように彼の神器である赤龍帝の籠手が禁手化すれば勝てるとは思っているが、今の一誠ではそれは無理だ。
「それじゃあ、約束は守ってくれ、先輩」
「ええ、分かってるわ」
そう言って手を振って立ち去って行く四季と詩乃の二人。
「部長!?」
「今は祐斗の治療をするのが先よ」
一誠の言葉にそう応えながら一つの答えに行き着く。
(彼の剣が神器じゃなかったなら、彼の持っているって言う剣は、聖域の守護竜が持ち去ったって言うあの……。もしそうだとしたら、下手に彼を刺激しない方が良いわね)
魔王である兄への報告もしつつ、今後の四季への対応は改めて考える必要がある。
(取り合えず、イッセーに失言を謝らせる所から始めないと)
まだ怒っている一誠をどうやって説得するべきかと言う所に頭を悩ませるリアスだった。
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