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ハイスクールV×D ライド6
四季が木場と黒い超兵装を掛けて戦う事が決まった結果、校庭のど真ん中で木場と対峙する事になった四季だが、外や校舎内からの注目が無い事からその手の結界が用意されている事が容易く理解できる。
本来なら一騎打ちだった筈なのだが、
「部長!!! オレにもやらせてください! こいつだけは、こいつだけはぶん殴らないと気がすまないんです!!!」
四季のパンチのダメージから早々に回復した一誠がそんな事を叫んでいた。それを受容れたリアスによって急遽二対一の対決になってしまった。
……内心では対戦相手に了承を取れとも思うが……まあ、先ほどのやり取りから分かるように、今の一誠では四季に一人で勝てないのは明白……木場との二人ならば勝ち目が有るのではとの判断だが……。
(不可視、人払い……どっちにしても、撤退する時に詩乃からの援護が有れば楽なんだろうけどな……)
最悪は結界事態を破壊してしまえば良いのだが、超兵装の最大出力を使う為、それはなるべく獲りたくない手段だ。流石に此方の様子が向こうから把握できていないと援護も期待できないだろう。
「……それじゃあ、行かせて貰うよ!」
その言葉と共に木場は四季へと肉薄する。騎士の駒で転生した転生悪魔である木場のスピードは眷属の中でもトップだ。そして、その突き出した手には何時の間にか西洋剣が握られている。
自分の最大の武器であるスピードを最大限に活かしたその一撃は確実に四季を殺りに行くものになるだろう。
「ふっ!」
その突きに合わせて漆黒の剣を一閃すると木場の持っていた剣が半ばから切り裂かれていた。それと同時に四季は地面を蹴って木場の既に突進にしかならない一撃を回避する。
「くっ! まだだ!」
続け様に繰り出されるのは上段斬り。だが、同じ様に漆黒の剣による一撃で刃を砕かれる。四季はそのまま振り上げた剣を振り下ろす。同時に四季の動きに合わせて斬られた剣を投げ捨て木場も新たな剣を作り出して楯にする。木場が新たに生み出したのは大剣、振り回すには向かないが純粋に楯にする為に作り出した物だろう。
「ぐぅ!」
「やっぱり、三流剣士だよ……お前は」
剣やソウルセイバー・ドラゴンの記憶の中の至高の剣士の姿を目標に……己の全てとも言うべき少女を守る為に技を磨いた。
主さえも支配する武器……超兵装《ブラスター・シリーズ》。いや、それは言い方を変えれば武器が戦う為に戦士を利用すると言う事が出来るだろう。だが、そんなブラスターの名を冠した武具を持った戦士達の中で唯一力に呑まれることのなかったその姿は、
「剣と心と体、全て揃ってこそ真の剣士だ」
四季にとっての理想とも言える姿だ。
横凪に放たれた斬撃を上に飛んで避け、そのまま木場へと踵落としを放ちながら着地する。
「心技体が揃うのは一流であって、剣と共にあってこその《真の剣士》だ」
最後の踵落としが決まってそのまま地面に倒れた木場を見下ろしながら宣言する四季に今度は一誠が殴りかかってくる。
「ッテメェ!」
追撃するでもなく、一誠へと視線を向けるでもなく剣を持った手を下げている四季に激昂した一誠が殴りかかってくる。だが、一誠の名誉の為に言っておくと別に四季は一誠の事を舐めている訳では無い。一誠の持つ神器赤龍帝の籠手の力は長期戦になれば脅威としか良い様が無い代物だ。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!! 赤龍帝の籠手ァァァァァァア!!!」
素人同然の拳で我武者羅に四季を殴ろうとしてくるが、四季はそれを紙一重で避けていく。
「ふっ!」
「ガハッ!」
その中の一発に合わせて剣の柄の部分で一誠の鳩尾へとカウンターとなる一撃を入れる。熱された金属でも呑んだかのような痛みを覚える一誠だが、当の四季は追撃するでもなく背中を向けて下がって距離を取る。
「こ、こいつ……」
「ほら、回復するまで待っててやるからゆっくり休んだらどうだ?」
「オレは悪魔だぜ……人間なんかに……神器だって……」
「はぁ。何か勘違いしてる様だから教えてやる」
自分が悪魔だから、神滅具の一つを持っているからと言って未だに何処か四季の事を舐めている様子の一誠を一瞥し、
「化け物を倒す英雄は……常に人間だぜ。好きなだけ休んでからかかって来いよ、最弱の龍帝。序でに倍加も出来て便利だろ?」
「このォ野郎!!!」
四季の挑発に激昂した一誠が殴りかかってくるが、怒りで我を忘れた拳は大降りになり単調さも増す。避けるのも容易い。
(こんな挑発に簡単に乗ってくるなんてな)
そもそも、倍加の能力はそれなりに警戒している。……長期戦になればなるほど、偶然の当たりでさえ決定打になりかねない。……それに、味方を持っている時ほど警戒しなければならない《譲渡》の方も有るのだ。
あんな風に挑発すれば直ぐに攻撃を仕掛けてくるだろうと予想していたが、予想以上に狙い通りに動いてくれている。
「せーの!」
「て、うぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!」
その中の一発をしゃがむ形で避けて一度剣を地面に刺し、開いた両手で一誠の腕を捕獲、そのまま一本背負いの要領で投げ飛ばす。当然受け身が取れる様な投げ方はしない、一誠を投げ飛ばした直後に彼の腕を放している。
「ぼくもまだやれるよ!」
「ああ、知ってる」
横から切りかかってきた木場の魔剣を素早く引き抜いた剣で受け止める。二つの剣がぶつかり合った時、力負けてして折れたのは木場の持つ魔剣の方だった。
「木場、譲渡すっぞ!」
「やるしかないね!」
「っ!?」
一誠の声を聞いて距離を取る。警戒していた力なので、相手の動きに対応し易い位置を取った訳だが、
「行くぜ、赤龍帝の贈り物!」
「魔剣創造!」
一誠の倍化された力を得た木場が四季の足元に剣の森を作り出す。足元と言う位置からの不意打ちに近い攻撃、対応できたとしても確実に隙は出来るだろうと予測していた。それを予期して木場は両手に魔剣を作り出す。だが、
「甘い!」
四季は足元から次々に出現する剣を次々に足場にして跳躍しながら上空へと逃れる。
「嘘だろ……?」
「でも、空中なら逃げられない!」
四季の動きに唖然としている一誠とは対照的に、木場は四季を……否、四季の持つ漆黒の超兵装の剣を見据えながら両手に作り出した魔剣を持って四季を居って跳躍する。
「人間の知恵と努力を舐めるな!」
漫画を読んでいて出来るかと思って試した結果、上手く形になった技術だがそれによって戦闘での自由度は増した。
―虚空瞬動―
足場に一時的に用意した気弾を足場にしての加速と気弾を爆発させる事によって得られる加速を使っての空中移動。自分を吹き飛ばすと言う一点のみに特化させ、破壊力を抑えているが当然ダメージは受ける。その為になるべく使いたくは無いが。
(その内完全再現してみるか)
「なっ!?」
四季の行なった芸当を知らない為に重力に任せて自由落下するしかない四季が空中で軌道を変えた事に驚く木場だが、それが逆に隙を生む事になる。
「ガハッ!?」
「祐斗!!!」
咄嗟に楯にした二本の魔剣を容易く粉砕し、四季の剣は木場の体を切り裂く。致命傷にはなりえない浅い一撃だが、そのまま木場は力なく校庭へと落下する。その姿にリアスは悲鳴に近い叫び声を挙げる。
「負けられない……その剣が……その剣があれば、聖剣を超えられるんだ!」
両手持ちの巨大な大剣を作り出して持ち振るう木場。避ける事は簡単だが、
「自分の最大の武器や技まで見失ったか。バカな奴だ。今のお前は三流以下だぞ」
避けてトドメを刺す事も出来るが、これ以上長々と戦う気は無いため、確実に終りにする為の一撃を選択する。今の四季ではリスクが有る可能性が有るが……それでも、使えない技ではない。
「引導を渡してやる。兵装展開」
漆黒の剣の刃が展開し、そこから光の刃が伸びる。漆黒の光によって作り出されたエネルギーの大剣。
「一閃、バーストスラッシュ!」
四季の閃光の刃が木場の魔剣とぶつかり合った瞬間、それを粉砕し、そのまま木場の体が吹飛ばされていく。
―ウシナウノガツライカ―
「っ!?」
展開した刃が元の形に戻ると同時に剣から伸びる漆黒の靄が四季の腕を包む。
「しまっ!?」
ブラスターシリーズの力への誘惑……最大出力とまで行かなくても有る程度の力を発揮するとこうして襲われる事がある。それは、まだブラスターシリーズの主として認められていないからだろう。
「四季!」
「っ!?」
力に呑まれそうになる中、自分を呼ぶ声が聞こえる。此処には居ないはずの四季にとってすべてと言うべき少女の声が……。
「……詩……乃……?」
四季は力に飲まれそうになる四季を引き止めるように抱きとめてくれた彼女の名を呼ぶ。
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