東方喪戦苦【狂】
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二十五話 悪魔の少年
ハツは、取り乱した、
《タツが消えた!?あの男も!?》
ハツが周囲を見てみると黒く薄汚いモノを持った一人の男が現れた。
《お前か…タツは、どうした!?》
現れた男、狂夜は、無言で手に持っていたモノをハツに向かってパスするように投げた。
《ンだ?この薄汚ねぇカスみてぇな…》
ハツの言葉は、途切れた。
その『薄汚いカス』みたいなモノがわかってしまったからだ。
真っ黒焦げでグズグズになったタツだった。
すでに原型を留めておらず、確実に死んでいた。
《て…てめぇ何を…》
「お前らが何も効かないと言うから試してみただけだ。」
ハツは、絶句する。
この男の言動に。
《だからってッ…》
「俺は悪くない。」
ハツは、怒りを剥き出しにして目の前の男を見た。
その悪魔を。
「安心しろ。すぐにお前も同じ所にいかせてやるからよ…」
《うッ…うッ、うウッ…》
ハツは、激しく激昂した。
しかし激昂しながらもタツの死骸に向き直り、手で死骸を持ち上げて…
食べ始めた。
ぐじゅぐじゅと汚い音がなる。
「………ッ」
鬼隆は、ハツを見て激しく気分を害す。
――だが、それでいい。
鬼隆は、狂夜に見えないようにうっすらと笑った。
――これで本当に無敵になるのだから。
《…》
しばらくしてハツは、食い終えた。
それと同時にハツに"異変"が起こる。
身体が黒くなり、透明になり、身体が大きくなり、そして…
異形な形をしていた。
「気持ち悪りぃな…」
《[GRyyyyyyyyAAAAAAAAA!!!!!!!!]》
液体の化け物は、ドロリとした瞳で狂夜を見ると二人の声が合わさったみたいな声で咆哮を轟かせた。
「…」
狂夜は、無言で手を向ける。
『重力…操作』
液体の化け物は、二倍に変化した重力に押し負けてぐしゃっと潰れた。
「…!」
狂夜は、怪物の違和感に気づいた。
潰れた怪物の、床に散った液体が一つに集まって来ていた。
「死なない怪物…ねぇ…」
狂夜は、初めてその怪物に興味を持った。
「…」
鬼隆すらも無言で身構えた。
――今のハツタツは、自動操縦なのだから自分の意思で動くことが出来ない。
――だが確実にこれで狂夜を殺せる。
怪物の牙が狂夜を噛み砕こうとする。
狂夜は、俯いてなにもせずに突っ立っていた。
狂夜が怪物の剥き出しの牙に噛み砕かれた。
怪物は、嬉々の表情を剥き出す。
そんな中、見ていた白夜と鬼隆は、動じなかった。
…いや、鬼隆は、動じたかもしれない。
狂夜を殺せなかったのだから。
狂夜は、少し前に幻影魔法を使っていた。
だから怪物は、狂夜と認識して噛み砕いた。
しかし鬼隆と白夜は、気づいていた、否、見ていた。
狂夜は、持ち前の速さで上に跳んでいた。
そして空中で留まって幻影が死ぬのを静かに見ていた。
「ふぅん、やっぱり知性は、無いようだな。」
そして怪物は、狂夜の罠に引っ掛かってしまった。
怪物の真下から表れた、いや、
這い出てきた夥しい数の鎖が怪物の身体を隙間なく拘束した。
《[GAッ!?]》
そして狂夜は、構えた。
――何に?
――最大の魔法を唱える為の構えに。
――どんな?
――全てを滅殺させる魔法に。
――…何の?
――全てを…
――消滅させる魔法を…
「『――最終兵器魔法…』」
狂夜の頭上に黒い粒子が集まり出す。
『「――滅鬼怒」』
狂夜の力が解放される。
『『「一分の一ッ!!」』』
狂夜の頭上に集まった、でかすぎる黒より黒い球体は、
鬼隆の造り出した亜空間を触れたところから消滅させて行った。
《[GAッ!?]》
知性の無くなったこの"液体"もわかったのだろう。
――詰だ。
滅鬼怒は、怪物と同時に亜空間をも全て消し去った。
ただ座りこむ鬼隆。
同じく呆然と見いる白夜。
――あのときの…ネクロを削り取った球体?
白夜の頭には、苦しむネクロが繊細に映し出された。
「一億分の一だ、あの時はな。」
狂夜が白夜の頭をポンと叩いた。
ネクロの時は、リンゴと同じ質量だった。
鬼隆もこの技は、言われていた。
しかし、いくらなんでも…
――滅茶苦茶過ぎるだろ!?
リンゴの一億倍、
つまり鬼隆がもといた地球と同じ位の質量だ。
鬼隆は、唾を飲みこむ。
狂夜が近づいて来たからだ。
この時の鬼隆には、確かにこの男は、悪魔に見えた。
「…どんな事をされても…情報は話さん…やりたきゃやれ…」
「へぇ…」
狂夜は、鬼隆の頭を掴み、何かをしようとした。
…しかし…その行為は、止められた。
後ろから狂夜に向かって包丁を突き立てる白夜によって。
「…ボス…これもお前の策略か?」
狂夜の胸から血液が垂れた。
「…思考だ…白夜にお前を切らせた…あいつは、俺の支配が心の傷に…なっている…確実に操れるさ…」
狂夜は、胸から突き出た包丁の銀の刃を前方から引き抜いた。
ズブッと生々しい音がなる。
「…包丁ごときじゃ…俺の生命活動を止められる訳無いだろ…」
包丁で刺された肉体がもの凄い速さで神経と神経を繋ぎ会わせて肉体を癒す。
鬼隆は、ノーダメージの狂夜を睨む。
(化け物め…)
しかし狂夜は、気づいた。
…白夜以外に鬼隆を守ろうとする男がいたと。
狂夜は、後ろにジャンプしてその敵から身を避ける。
とある液体は、ボスを拐って地中に逃げた。
「…逃げられたか…」
狂夜は、舌打ちを漏らす。
その時白夜は、正気に目覚めて自分の腕を見る。
ドス黒い狂夜の血液、
白夜は、自分を忌ましめる。
「…神那は…ギリギリ生きていた…」
狂夜が突然白夜に語りかける
「…教えてくれたよ…そのイカれた研究所の位置を…」
「…」
「そして息を引き取る前になんて言ったと思う?」
「…」
白夜は、見逃さなかった。
少年の涙を…
「「情けないお姉ちゃんでごめんね…」だってよ…」
白夜が聞いたことの無い優しい『姉』の声が狂夜の言葉と同時に聞こえた。
「何であの人は、昔から…俺の言うことを聞いちゃくれねぇんだ…」
狂夜は、肩を震わせた。
――どうして俺に…『好きだ』って言わせてくれねぇんだよ…
狂夜はそれ以上、何も喋らなかった。
しかし白夜には、聞こえた…
少年の苦悩が…
後書き
[BOSS…大丈夫…か?]
ボスは、何も喋らなかった。
[俺は…ハツだ…姿は、タツのを借りたけどな…]
「…」
何も喋らないで俯く鬼隆にハツが疑問を覚えた。
「…うっ…」
[ッ!?]
「うぁぁぁ…」
[どうしたBOSS!?]
ハツの声さえ…鬼隆には、聞こえなかった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァァァァッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
[BOSSッ!?しっかりしろ!!おいッ!!]
鬼隆は、壊れてしまった…狂乱に身を蝕まれて…
しかし、ハツも自分の異変に気づいた。
[…身体が…消えていく…]
[くそッ…あのやろう…]
憤怒に身を染めるハツだったがそのうちニヤッと笑い出した。
[…いいさ。俺の目的は、BOSSを研究所まで送り届けること…]
ハツは、地上に鬼隆を出して消えていきながら想った。
――悪いが…新月狂夜は、確実に死ぬ。
…我ガ本当ノボス…
ハガワ ユウミ ガ直々ニ、コロスノダカラ…
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