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エクシリアmore -過ちを犯したからこそ足掻くRPG-

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挿話 わたしの恋だから

/Fay

 “革命、成れり”

 その報せはオルダ宮の中から都へ、そして都の外のいくつもの領地に広がった。

 でもフェイたちはこれでメデタシメデタシじゃない。フェイとパパは、これから〈クルスニクの槍〉に囚われたミラさまを助け出さなくちゃいけない。〈槍〉のこと、断界殻(シェル)のこと、まだ何も終わってない。

 それでもオルダ宮をまだ出ないのは、ナハティガル王との戦いが思った以上にみんなにダメージだったから。せめてそれから快復してからじゃないと。〈槍〉があるのは、戦場の真っ只中なんだから。

 蓮華陣(ロータス)の近くの手摺に両腕を置いて、腕を枕代わりに突っ伏した。

 ……ここを出発したら、今度こそ、もうクレインさまと近づく機会は来ないかもしれない。クレインさまはこれから新しいラ・シュガルの王様になるんだから。


「フェイさん」
「ローエン。どしたの? クレインさまと一緒にいなくていいの?」
「そうしたいのはやまやまなのですが、革命成功と共にファイザバード沼野での戦闘指揮権がこちらに移りましたから。的確に指示を出して軍を保たせなければ、何のための革命だということになってしまいます」
「そっか。タイヘンね」
「そうなのです。ですからフェイさん、私の代わりに旦那様の下へ行ってさしあげてはくれませんか?」
「え? フェイで、いいの?」
「はい。フェイさんがいいのです」

 わたし『が』いい?

「フェイさんは今日までマクスウェルとしてクレイン様のおそばにいてくださった。おかげで民の心は、あの〈震撼する白夜〉とは比べ物にならないほど穏やかに政変を受け入れました。ですからフェイさん、今は『ただのフェイさん』として旦那様にお会いになってほしいのです。あなたの心が、旦那様にあるのなら、ですが」


 ――ローエンが行っちゃってからも、考えた。いっぱいいっぱい考えた。
 考えて、我慢、できなかった。

 髪をほどく。ふわりと落ちる、色のない髪。

 許して、パパ。お姉ちゃんの代わり、ママの代わりを今夜だけやめる。
 「これ」はわたしの恋。フェイリオ・メル・マータの恋心だから。

 走り出す。玉座の間へ。あのひとの下へ。あのひとが手の届かない人になってしまう前に。




 クレインさまはガラスの壁に手を突いて、イル・ファンの都を見下ろしていた。

 守るべきものを刻みつけようとしてる、強いまなざし。ラ・シュガルの民と大地を背負っていく背中。

「――、フェイ?」

 わたしを呼ぶ、低くて優しい声。

 全部が好き。全部がウレシイ。全部がセツナイ。いとしい人。

「一人かい? ローエンたちは一緒じゃ――」

 走って行って、玉座の壇に立つクレインさまの胸に飛び込んだ。
 勢い余ってクレインさまを後ろのガラスまで下がらせちゃったのに、クレインさまは怒らない。

「……き」
「え?」
「すき、すき、すき…っ」
「フェ、フェイ? 何を」
「だいすき…! クレインさまのこと、すき、ずっと好きだった…!」
「……、本当、に?」

 何度も首を縦に振った。
 クレインさまは目を見開いてわたしを見てたけど、不意に、わたしをきつく抱き締めた。

「――二度と、もう二度と、この腕に抱ける日は来ないと、そう、思って、覚悟していたのに」

 ごめんなさい。クレインさまをそんなに悩ませてしまって。フェイのせいで。フェイなんかのために。

 パパがコワくて一度だってまっすぐあなたを見つめなかったズルイわたし。なのにこの人はわたしを責めない。ただただ包み込んで、許してくれる。
 まるで神様みたいな人。

 そんな人にフェイがあげられるモノなんてきっとないけれど。せめてずっと前にわたしから言った。幼くて罪作りだった、でも今は本心になった約束を。

「全部あげます。マナも命も、ココロもカラダも、フェイリオの全部、クレインさまのモノにしてください」



 大好きな人の腕に抱かれながら、空を見上げる。

 変なの。永遠に夜のイル・ファンの空に鳥なんて飛ぶわけないのに。
 でもね、真っ白でとても綺麗な鳥だったの。ねえ、あれって、何ていう鳥だったのかな―――― 
 

 
後書き
 ついにクレインとフェイが一線を越えました。
 この恋の終わりが果たして幸せなものかは、物語を追って皆様の目でお確かめくださいませ<(_ _)> 
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