エクシリアmore -過ちを犯したからこそ足掻くRPG-
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第二十五話 明けない夜に来る夜明け
おっきい王様は最初から容赦がなかった。
「天上天下唯我独尊! ――デモンズランス!!」
〈槍〉から吸収したマナを惜しみなく使って、大技をくり出して来た。
止めなきゃ!
ローエンといっしょにバリアを張って重ねがけ。ローエンは元々〈指揮者〉って呼ばれるくらい精霊術が上手だし、フェイは〈妖精〉。二人合わせれば、なんとか防げるくらいの強度にはなる……!
「なにぃ!?」
よし! 防ぎきった!
パパ、イバル、おねがい!
ローエンが左、わたしが右にずれる。開いた隙間から、パパは双剣、イバルは二刀で躍り出る。
「「双覇連散!!」」
4本の刃の連撃から、最後にクロスした剣閃で、おっきい王様の大槍を高く弾き上げる。
ローエン、もっかい! エリーも来て!
二人と手を繋ぐ。右手と左手に別の術式を編み上げる。
わたしが意識しなくてもいい。ローエンと、エリーと、最大の力を解き放つ技を頭で別にイメージすればいいだけ。
光の球がおっきい王様の上に現れて、光の刃を振らせる。
同時に、おっきい王様の足元に炎と水を混ぜた魔法陣を展開して、熱い蒸気をおっきい王様に浴びせる。
前にバーミア峡谷で光る蛾と戦った時と同じ。――クレインさまのための道は、開いた。
クレインさまが、わたしたちの間を抜けて駆け抜ける。
二度と、戻れない、道を。
「やあああぁ!!」
クレインさまがサーベルを振り下ろして一斬、足元を突いて態勢を崩して二斬、サーベルをまっすぐおっきい王様に突き出して、最後の一斬。
あっという間の決着だった。
ナハティガル王が膝を突いた。そんなナハティガル王に、クレインさまがサーベルを突きつけた。
「妹君を亡くされ、友に去られ、その悲しみや怒りを自制することなく行動した。それがあなたの王道の陰りです。あなたは肉親や友人を愛し、喪って想いに挫けてしまうほどに、ただ『人』でしかなかった」
そう。個人としては何より尊ばれる感情。愛。王様になる人は、愛してもいいけど、同時に愛を抑えられなきゃいけない。
でないとこのおっきい王様みたいに、そしてパパみたいに、……昔のわたしみたいになってしまう。
自分が救われるためだけに生きて、たくさん傷つけてしまうのよ。
「ならば貴様は違うと申すのか。想像してみろ。貴様の妹がたった今殺され、ローエンが貴様を見限ったとしたなら。それでも貴様はなお王としての務めを果たせるのか」
「果たします」
0コンマ1秒もなかった。
「例え私の目の前でドロッセルが殺されようが、ローエンに見捨てられようが、それを理由に背負うべき責任に背を向けることはしません。私が、王ならば」
っ…胸が、イタイ。クレインさまのコトバが。きっとクレインさま自身がイタかったから。
「くくくくっ……はははははは!! よくぞ言った、若造が。いいだろう。せいぜい玉座の重みを負って国の人柱となるがいい」
クレインさまは答えないで、サーベルを脇に矯めて突き出した。
ナハティガルの左胸を、クレインさまの刃が深く貫いた。
これが終わり。長い長い夜の一つの結末。
死体になったおっきい王様を見下ろしながら、クレインさまはずっと無言だった。
後書き
短くてすみません。文字数を読み誤りました。
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