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ハイスクールV×D ライド5
「単刀直入に言うわ、私達は“悪魔”なの」
「へー」
まあ、知っている事なので気のない返事を返しておく四季君。目の前では四季以外の全員がコウモリの様な翼を広げていた。確かに仮想とも思えないそれは、十分に悪魔だと言う事の証明になるだろう。
「それで、貴方は何者なの?」
「純度100%の人間。神器持ちですが」
「そう、貴方の持っている神器は……」
「剣じゃ無いですよ」
聖剣を作り出す聖剣創造と魔剣を作り出す魔剣創造。光と闇の剣を持っている姿から誤解されていると思ったので捕捉しておく。本来の神器や二つの超兵装と言う手の内を隠すという意味では黙っているのも手だが、他者を殺して神器を奪ったり、聖剣創造と魔剣創造等と言う弱い神器の所持者と思われたくない。
二つの超兵装は正しくは神器に封印された守護竜の守っていた代物を借りているだけであり、本来の四季の神器はまったくの別物である。
四季の剣士としてのプライドと拘りの為に滅多な事では使わないが。剣技は全て純粋な努力により学んだ物だ。
四季にとって聖剣創造と魔剣創造の二つの神器は価値は龍の手以下の代物である。
剣を作り出すその二つの神器は剣士を弱くさせる神器と考えている。己の命だけでなく守るべき物も預ける事のできる剣と共に有ってこそ真の剣士と考えている故に、そんな物に頼っている内は剣士としては未熟だと、思っている。
「眷属にならない、って言うのは簡単に言えば私たちの仲間、悪魔にならないか? って事なのよ」
「なるほど、人間辞めますか、と言うお誘いと」
「……人聞きの悪い言い方だけど、それで間違ってないわ」
「お断りします」
そう言って周囲に居る眷族達を見回した後、リアスへと視線を止める。
「そもそも、貴女達の仲間になるメリットがない」
「あら、メリットなら有るわよ」
「長く生きられるとか、ハーレムとかなら興味ないですけど。オレにとって手放したくない相手は一人だけですし、彼女の居ない人生なんて……単なるロスタイム、何の価値も無い」
ならば、そのロスタイムでする事は死後に再会した時に喜んで貰えるように最大限彼女の最後の願いを叶えるだけだ、と心の中で付け加えておく。
それ以前に長く生きた所でダラダラと長く生きた10年よりも、より密度の濃い1年、いや一日にこそ価値があると考えている。四季にとって価値のある生とは詩乃と共に生きる生だけだ。
「それに……自分の力も最大限に使わないハンパな女王」
そう言って朱乃を一瞥すると、言っている意味を理解したのだろう……彼女の表情が凍りつく。
「自分の力から逃げている戦車」
小猫の表情が強張って四季へと驚きに満ちた視線を向ける。
「八つ当たりしか出来ない、心も含めて全てにおいて半端な剣士として三流の騎士」
木場の表情に浮かぶのは怒りの感情。
「優しいのだけは認めてやるが、考え無しの行動……。同じ場所に居た仲間の命を踏みにじる行為をした僧侶」
驚きの感情が浮かぶアーシア。そして、四季は最後にリアスへと向き直る。
「そんなやつ等の仲間になりたがるとでも思ったか?」
「貴方……何処まで知ってるの?」
「さあ、姫島先輩のご両親とか、小猫ちゃんのお姉さんの事とか、そこの同性愛者の過去とか、アルジェントさんの転校前の事とか……ですかね」
表情が険しくなるリアスを他所に四季は笑みを浮かべながら、
「あとは……貴方が扱えない、もう一人の僧侶の事とか。自分の手持ちの駒も使えない王の元に好き好んで着きたがる奴は居ないと思いますが」
嘲笑を浮べて告げる四季の言葉、それに対して平静を装いながらも、リアスは内心で憤っていた。
そんな彼女の心情を予想しているが、己の内に在る守護竜の記憶と、光の超兵装の記憶……ブラスター・ブレードが側に立つ聖騎士達の王の姿。詩乃を守る為に彼女に剣を預けた身の上だが、少なくとも……惑星クレイの騎士王と比べるとリアスは王として圧倒的に見劣っている。
二つの意味で四季が彼女の眷属になる理由は無い。
「はっきり言おう、オレは既にオレの一番大切な人に剣を預けているし、貴女はオレが剣を預けるべき相手じゃない」
そう言ってソファーから立ち上がり、
「貴女はオレが仕えるべき主じゃない」
「テメェ!!!」
(……そう言えば、結局コイツだったな……最弱の赤龍帝)
四季の言葉に真っ先に激怒したのは一誠だった。先ほどの他の眷属達に対する言葉……理由こそ分からないが、その言葉に今までに無い態度を見せていた事は理解し、その上でリアスに対する暴言に対して怒りが爆発していた。
「就くべき主を見定めるのは必用なことだと思うぞ、変態」
「テメェ! 部長の何が不満なんだよ!?」
「……全部言って良いのか?」
あの後、誰が赤龍帝なのか調べたが、一誠で有った事は頭を抱えたくなった。
「堕天使にはぐれ悪魔の進入を許す管理能力の低さと、舐められている能力」
四季の言葉に一誠の顔に怒りが浮かぶ
「第二に先日の婚約破棄の件」
「なっ!? それの何処が悪いって言うんだ!?」
「少なくとも、自由に結婚相手を選べないのは貴族と言う者の……恵まれた人生に対する対価だ。加えて、その為の合宿に対しては家の力で施設や学校は公欠扱いにするとか……家が決めた事に反抗するのに、家の権力に頼ってどうする? 義務はイヤだけど家の権力は好き勝手に使う……随分と甘えた考え方だな」
怒りの表情を浮べている一誠を無視しつつ、四季は更に言葉を続ける。
「理解しているかどうかは疑問だけど、貴族同士の結婚なんて色々は思惑が重なる物……身内以外にも色々とな。結果的にゲームに勝った上での婚約破棄なら兎も角、ゲームには負け……っと」
尚も言葉を続けようとした四季の言葉を遮るように振るわれた一誠の拳をバックステップで避ける。
「やれやれ、随分と沸点が低いな……」
「テメェ、部長を馬鹿にするのもいい加減にしろよな!!!」
「馬鹿にしたつもりは無い。オレが王として仕えるには足る相手じゃない、その理由を言わせて貰っただけだ。大体、お前が言わせたんだろうが?」
尚も殴りかかってくる一誠の拳を避けながら、そう言葉を続ける。
「それに、お前もお前だ。どうやったかは知らないけど、勝つ方法が有るなら最初から使え。実力差が有る事は分かりきっていた筈だ。……そんな相手に何のリスクも無く勝とうなんて考えている時点で、王としての采配にも問題が有る」
四季にとって己の敗北は自分の命よりも大切な人である詩乃の身の危険に晒すと言う事に繋がる。……だからこそ、試合とは言え自分の人生の掛かった戦いでそんな采配ミスをしたリアスを王として頂く事は出来ないのだ。
「アンタのミスでの敗北でオレまで大切な者を失うのはゴメンだ。……だから、リアス・グレモリー先輩……アンタの為に振るう力は無い。以上だ」
更に殴りかかってきた一誠を避けると同時に足払いを掛けて転ばせると、リアスに向かってそう言い切り、部室から退出しようとする。
「ふざけるな! 大体お前がさっきから言ってる大切な奴なんて、あの“人殺し”の事……っ!?」
「イッセー!?」
「イッセーさん!」
立ち去ろうとする四季の背中に向かって罵倒の言葉を続けようとした一誠の視界一杯に広がったのは四季の拳。顔面を殴り飛ばされた一誠はそのまま壁にぶつかるまで殴り飛ばされる。そんな一誠に駆け寄るアーシアとリアス。
「……オレへの侮辱だったら幾らでも言えば良いさ……。だけどな……」
静かに告げられる憤怒の言葉……横に伸ばした手に現れるのは、先端が二股に分かれた漆黒の剣……漆黒の超兵装。
「あいつの事を何も知らないで、あの時の事を持ち出して詩乃を侮辱するなら……殺すぞ、駄龍」
怒りの言葉と共に奈落龍の血肉にて鍛え上げられた漆黒の剣を一誠へと突きつける。
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