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騎士の想い

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第七章


第七章

 そして彼は時折城から出て急襲を仕掛けた。これもかなりの効果があった。
「敵は弱まってきています」
「このまま勝てます」
「いえ」
 イークレッドは周りの楽観論に対して首を横に振ってこう述べるのだった。
「油断大敵です」
「ではまだですか」
「何かがあると」
「まず。城の中です」
 このことを述べた。
「食料はまだ大丈夫ですが」
「はい、それは」
「あと三ヶ月はいけます」
「三ヶ月しかありません」
 あえて悲観論を言う彼だった。
「三ヶ月敵が攻め続ければそれで終わりです」
「ではそれまでに勝負をつけると」
「そうなのですね」
「その通りです」
 まさにそうだというのである。
「そしてです」
「そして?」
「まだあるのですか」
「今の敵軍はかなり弱まっています」
 次に言及したのは敵軍についてであった。今も彼等がいる城壁の下から攻撃を続けている。彼等にしても必死なのが見て取れる。
「しかしです」
「しかしなのですか」
「といいますと」
「援軍が来る可能性があります」
 鋭い目でその危惧を口にするのであった。
「それもです」
「敵の援軍」
「それもあると」
「ないとは言い切れません」
 こう言うのであった。
「それは決してです」
「というと既に敵軍はです」
「援軍を要請していて今こちらに向かっていると」
「そうなっていれば危険です」
 まさにそうだというのだった。
「こちらも陛下及び諸侯に援軍を要請していますが」
「といいますと」
「イークレッド卿はそこまで」
「はい、させて頂きました」
 まさにその通りだというのである。
「既にです」
「左様でしたか」
「既にそこまで」
「確か侯爵もそうされていました」
 このことは既に侯爵自身から聞いていた。そして予想していたことでもあった。援軍もなしに篭城するというのは愚か者のすることだからである。
「ですからこれはです」
「持ち堪えるべきだと」
「今は」
「そうです。もっとも援軍が来るのは遅くて三週間後です」
 その期日はもう分析しているのだった。
「食料の心配はありませんが」
「問題は援軍ですね」
「敵方の」
「はい、そうです」
 その彼等だというのだ。イークレッドは応えながら目の前に迫る敵兵を右手に持っている剣で刺した。そのうえで彼が登ってきたその梯子をひっくり返しそれでそこから来ようとしていた他の兵士達も落としたのだった。悲鳴が高い城壁の下から聞こえてくる。
「その通りです」
「彼等が来れば」
「その時は」
「危ないです」
 そう言うのであった。
 
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