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騎士の想い

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第六章


第六章

「帝国でも有名な騎士の一人だ」
「あの若者がか」
「手強いぞ」
 また一人の騎士が真剣な面持ちで言った。
「あの男は」
「ではどうする?」
「ここは」
「撤退だ」
 指揮官を務めるこの国の大貴族が言った。
「このままでは総崩れになってしまう。城内に篭城している兵士達も出て来た」
「確かに」
「このままでは」
「撤退する」
 また言う指揮官だった。
「いいな、これでだ」
「はい、それでは」
「無念ですが」
 こう言い合って撤退する彼等だった。だがイークレッドの軍と城内から出て来た軍の攻撃を受けてかなりの損害を出した。この時にもだった。
 イークレッドは追撃を命じながらこう叫んでいた。
「攻城兵器を潰せ!」
「それをですか」
「そうだ、潰せ!」
 この指示を出すことを忘れなかった。
「まずはそれを潰す、いいな」
「それは何故ですか?」
「敵兵だけではなくですか」
「攻城兵器を潰しておけば後の篭城戦が楽になる」
 だからだというのである。
「わかったな、そういうことだ」
「左様ですか。それでは」
「その様に」
「そうだ。まずはそういったものを潰しておく」
 こう言ってであった。実際に攻城兵器を攻撃し潰していく。こうして敵軍にかなりの損害を与えたのであった。
 そのうえで城に入ると篭城していた将兵や市民達から歓喜の声で迎えられた。しかし彼はそれには喜ばなかった。こう言うだけだった。
「当然のことをしたまでです」
「当然のことをというのか」
「そうです」
 侯爵に対して謙虚に述べた言葉だった。
「これは当然のことです」
「救援に来られたことが当然だというのですか」
「私は帝国の騎士です」
 まずはこのことを侯爵と周りにいる将兵達に告げた。今彼は城内の領主の間で侯爵と対していた。
「その帝国の諸侯や民衆が危機ならばです」
「駆けつけると」
「そうです」
 まさにそうだと言うのであった。
「それだけです。そして」
「そして?」
「私はエヴァゼリン姫の騎士です」
 やはりこのことも言うのであった。
「だからこそ。ここに参上しました」
「左様ですか」
「この命をかけて」
 彼の言葉も表情も強いものになった。
「姫を御護り致します」
「左様ですか。それではです」
「はい」
「期待させて頂きます」
 侯爵もまた強い言葉と表情で応えた。
「貴方のその御力を」
「有り難うございます。それでは」
 こうしたやり取りのうえであった。彼も篭城戦に参加することになった。その指揮は的確でありかつ勇敢であった。彼の参加により篭城側は一気に優勢になった。
 まず敵の攻城兵器を破壊したのが大きかった。それにより敵軍の攻撃力はかなり低下していた。その攻撃は目に見えて弱まってしまっていた。
 
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