少年は魔人になるようです
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第96話 少年達は壁の高さを知るようです
Side ネギ
「ぬぅぁぁああ~~~!ダメだダメだダメだダメだ!ダメだぁっ!!」
「無理だぁっ!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおっさんもあの人らも余計な事しやがってぇぇえええ!!」
「ああああぁあぁったくなんて事しやがんだこれだから男と馬鹿はぁぁッ!!」
あの鮮烈な二連戦の後。"白き翼"参謀会議と題して集まった僕達は既に諦めモード
全開。いつの間にか戻って来たカモ君と共に、千雨さんが頭を抱えて暴れまわって
いた。・・・あの後のノワールさんとアリアさんの戦いはラカンさんよりも簡単に、
でも目に・・・と言うより脳髄に叩き込まれた。
「おっさんとアーカードの家内が参加しなけりゃ優勝くらい楽勝だったんだろ!?」
「うん、まぁ、そうだったんだけど……。」
「は~~~っ、こりゃ姉ちゃんら助けるんは無理やなぁ。」
「早々に諦めんじゃねぇよ犬っころぉ!!」
完全諦めモードの僕達にカモ君が叫ぶけれど、ラカンさんだけでもイレギュラー
過ぎてどうにもならないのに、そこにあの二人。逆立ちして天変地異が起こって
世界が変われば可能性もあるだろうけど、もうどうしようもない。
「でもカモ君、優勝するのは無理、かも……。」
「かもじゃねぇよ無理だろうが!先生だってあのオッサンの異常な反則っぷりは
知ってんだろ!」
「実はチョイ前からオスティアの図書館に行っておっさんとアーカードらの事を
調べて来た。何か、弱点か攻略法が無いかと思ってな。流石英雄、資料にゃ
事欠かなかったぜ。」
どうやらカモ君だけは何か方法が無いかと、あの三人・・・いや、全員の事を
調べてくれたみたいだ。いやな予感しかしないけれど。
「でかしたオコジョ!それで!?」
「いや……あんまりイイ話じゃねぇ。心して聞けよ。まずはオッサンからだ。
こっちの世界の戦闘じゃ魔法使いの方が他職より戦果は大きいのが普通なんだが……
あのオッサンには当てはまらねぇ。いいか?」
先の大戦で沈めた艦の数は大小合わせて137隻。改めて見た開会式に出ていた
スヴァンフヴィートと同等の戦艦を3隻、更にその上の超弩級戦艦を一隻沈めた
そうだ。他にも学園祭にいた巨兵よりも戦闘用の鬼神兵9体相手に素手で勝った、
などなど、逸話に事欠かない。
「それと式典にいた帝都守護獣の古龍・樹龍な、アレ真祖の吸血鬼と並ぶ最強種の
一匹、つまりエヴァンジェリンと同格の化け物なんだが……なんか昔引き分けて、
以来友達らしい。」
「あー……うん、まぁ、納得って言えば納得かなぁ。」
「次、あの二人についてだが……戦争に参加したのは最後の一戦だけだそうだ。」
なんか以外・・・とも思えない。恐らく愁磨さんが怪我しないようにって隔離して
いたんだろうけど、あの戦いだ。一人だけだと手が足りなかったんだろう。
・・・あれ、あの二人って映画に出てたの過去の鍋食べてるところだけだった様な。
「だが連合軍の印象だけでいやぁ全英雄中一番とも言える。無限に出て来る悪魔共
数万体を戦艦の精霊砲並みの魔法やら何やらで2~30分ぶっ飛ばしまくったそうだ。
それも、全戦域の戦艦守りながらだ。」
「殲滅と護衛任務同時にこなすとかどんだけだよ……。ま、それも出来んのか。」
ゲームの記憶でも蘇らせたのか苦渋の表情の後、したり顔で頷いた千雨さんに目で
問う。すると珍しく考え込んで、重い口を開いてくれた。
「その、だな………例の強さ表の事だが。あの後オッサン自身の強さはどれくらいか
興味本位で聞いて見たんだ。………いくらだと思う?」
「僕で最高4000のフェイト(余裕)で6000ですから………倍率考えて一万強、って
所ですか?」
ちょっと低めに見積もって見た数字を行って見たけど、千雨さんはしぶぅぅ~~い
顔で否定した。・・・うん、分かってたけど。
「…………1万5000、だそうだ。通常時で。」
「いちまっ……!?」
「おいおいおいどんだけやねん。自称にしても盛り過ぎやろが。」
いや、でもそうでもないのかも・・・・・実際考えたら僕のたった四倍だ。
たったでもないけど。でも、千雨さんの顔はいつもの言い終えた後の顔じゃない。
そうだ、メインが残っているんだから。
「それで、ノワールさん達は………?」
「ハァァ~~やっぱ聞いちまうかぁ。所詮あたしも先生と同じ穴の狢か。
まぁいい、結論から言うぞ。ノワールさんが3万、アリアが1万3千、だとさ。
通常時でな。」
「正気か!?オッサンの二倍とか恐怖補正かかっててもノワールはんそこまで強い、
わ、なぁ……。」
「強い、よねぇ……。」
修行を付けられていた僕達だからこそ分かる共通見解。ラカンさんもいつも余裕の
態度だけれど、ノワールさんの余裕はそれこそ別次元のものだ。もっとこう、
生物的に上と言うか・・・。人が蟻を見ているような恐怖があった。
「……………………………………そ、それ、で?」
「……その先をまだ聞きてぇのか?」
「聞かなあかんやろ、男として!俺はむしろそこだけ期待しとったんやで!!」
今までと打って変わって前に出て行く小太郎君。・・・僕も同じ気持ちだったから
大体分かってた。
ノワールさん、アリアさんと来たら、もう残っているのはあの人しかいない。
「まぁ、聞いちまったあたしもあたしだがな……おりは…もとい愁磨先生の強さな。
オッサンの見込みだと……。」
「「「見込み、だと?」」」
「……………分からん、とさ。」
「「へ?」」
その答えを聞いて小太郎君とカモ君は納得していないようだけど、僕は何となく
気づいていた。常に奥の手奥の手を残し、まるで未来を知っているかのように
策略を張り巡らせ、父さん達の力を借りたと言えどラカンさんに絶対に倒せないと
思わせた造物主を倒してしまったのだから。
・・・その戦いすらも僕は違和感を覚えていた。そう、まるで―――
「(造物主と、同等だと思わせる事に終始していた、様な・・・・。)」
「師弟のよしみで手加減……いや!袖の下で八百長だ!それしかねぇ!」
「優勝で100万なのに八百長は無理だろ。それに金で動くタイプじゃねぇ。」
いや、今の目的は愁磨さんに勝つ事じゃなく、あくまでラカンさん・ノワールさん・
アリアさんに勝つ事だ。そうなると、今の十倍以上の出力が欲しい事になる。
「……みんなついて来て。見せたいものがあるんだ。」
「ん?なんや?」
怪訝そうに見るみんなに認識阻害魔法をかけて、オスティア郊外の岩礁地帯まで
飛んで行く。修行ならダイオラマ球の中で良いんだけれど、あの中だと発動に
補助が入っちゃうから、今の実力が分からなくなってしまう。
「こないなとこまで来てなに見せるっちゅーんや?」
「うん、ちょっと大規模だから街だと軍とかに感知されちゃうからね。
……僕の新呪文だよ。」
「新呪文て、あの『闇の魔法』の合わせ技かいな?」
「半分正解。僕が今出せる最強の呪文だよ。あ、ちょっと離れててね。」
ブツリと親指を噛んで血を出して、強化と補助の為に魔方陣の核となる部分へ
飛ばして、魔方陣を発動させる。『雷の暴風』を覚えた時から練習はしていたけれ
ど、あの映画を見てからは完成させようと躍起になって修行した魔法。
ウォンッ!
「"ラス・テル・マ・スキル・マギステル! 契約に従い我に従え高殿の王 来たれ
巨神を滅ぼす燃ゆる立つ雷霆! 収縮補助魔方陣展開!第一から第二十まで展開・
固定!"」
ヴヴヴンッ
僕の周りに中型、腕の周りに小型の魔方陣がそれぞれ十ずつ展開される。
『全きこの身を剣と化し』と同じく収縮系の魔方陣だけれど、その数は十倍。
同じ戦術魔法で属性は一つだけだけど、範囲が広く固定化するのが難しいからだ。
「"百重千重と重なりて 走れよ稲妻!!『千の雷』!固定』…………!!"」
バチバチバチバチバチィ!!
「おわわわ!握りきれてねーじゃん!?」
『千の雷』を固定するも、固定しきれず周りに紫電が奔る。
千雨さん達が騒ぎ急いで僕から離れるけど、あっちを気にしていられる余裕はない。
『双腕固定』の要領で何とか固定して行き、段々と奔っていた雷が小さくなる。
「ぐ………!」
「も、もーちょいやで!キバレや!!」
「か、ぐ、ぁあああああああ!!」
ガッッ!!
小太郎君の声援に、調整していた魔力で無理矢理『千の雷』を覆い、取り込む!
バチィッッ!
「"術式兵装『雷天大壮』"……。」
「お、おぉおお……それが見せたかったって奴か?先生。」
「はい。『千の雷』を取り込んだ、新しい術式兵装です。」
「成程、考えたなアニキ!」
僕の周囲、ちょっと離れた所に皆が安心半分恐怖半分で集まる。
まだ御しきれずたまに放電してしまうから仕方ないんだけれど・・・完全に制御し
切れれば『雷の暴風』では成し得なかった"完全雷化"となれる。
「考えた……って程でもないよ。上位の魔法ってより高い適正が欲しいでしょ?
つまり、より強い魔法を取り込めばその現象に近くなれるって事なんだ。」
「ほぉー、成程。つー事はお前、風とか光になれるんか?」
「風にはなれるかもだけど……光は無理だよ。だって『闇の魔法』だよ?」
「お、おう、そうか。あんまり便利そうだからすっかり忘れとったわ。」
そう、『闇の魔法』で光属性を取り込む事は不可能。正確には術式兵装までする事が
出来ない。一度光の矢一本で試してみたけれど、文字通り光になるところだった。
そもそも構成物質・・・って言うか物質かどうかも分からないものを固定出来る訳が
ないんだよ・・・。
「せやけどこれであの人らに勝てるんやないか!?使う魔力十倍なら出力も
十倍上がるやろ!」
「う、うん、いける、かな!」
「エヴァンジェリン使用の魔法の上、雷化!行けるぜアニキ!」
皆が口々に勝てるかもと言ってくれるから、僕も行けるような気がしてきた。
そう、あとはこれを完成させられれば―――
「いいや、無理だな。」
「だ、誰でい!折角のアニキのアイディアにケチつけん、の、は………。」
「『こんな物では勝てない』と顔に書いてあるぞ、ネギ・スプリングフィールド。
自身が信じ切れていない事を仲間に賛同して貰って安心を得ようなどとは……。」
内心の不安を見抜かれ、声の方を見る。暫く見なかったその姿は―――
「え、エヴァンジェリンさん!?刀子先生!?」
「お久しぶり。ラカンさん相手に卑屈になるのは仕方ないけれど、あまり好ましくは
ありませんね。」
「私は嫌いじゃないぞ?クク、あれもあれで存在そのものが反則だし、姉様と
アリアは理不尽だ。あんな連中、相手にする方が愚かだ。今回ばかりは諦めたら
どうだ?私とて蔑まんぞ。」
ふっ、とエヴァンジェリンさんの目が優しげに笑う。
確かに・・・あの四人を相手にするなんて馬鹿げている。間違っているのかも
知れない。勝てる可能性なんて万どころか億に一つもないだろう。だけど。
「折角の忠告悪いですけど……この勝負、逃げる訳には行きません。」
「へぇ……?」
「オッサンはネギに正面から『戦ろう』言うた。ノワールはんらは何考えとんのか
知らんけど、一応姿見せてくれた。男として認めた証や。ワイかてこのまま黙って
られへんしな!」
「だが、億だろうが京だろうが、一も勝ちの目はない。何も考えていない、
無意味な勝負だ。」
「それでも。」
それでも、父さんの親友とあの人達が認めてくれたんだ。それを、勝ち目がない
なんて理由で諦めて、逃げる訳にはいかない。
「戦りますよ。」
「フ……そう来なくてはな。」
「で、なんで自分らこないなとこにおるんや?愁磨はんとおったんやないんか?」
「ちょっと事情がありましてね……。」
フ、と諦めたように笑う二人。・・・・何があったかは知らないけれど、碌な事じゃ
ないだろうと黙っておく。
「ああ、私達だけではなく、な。」
「主らの修行の手伝いに来たのじゃ。」
「ヘッ!?」
さらに後ろから声がかかって、間抜けな声を出しながらまた後ろを向く。
居たのは・・・思ったよりも凄く大人数。見慣れた皆と、鎧姿の人と、
見慣れない三人――
「お、お久しぶりです、ネギ先生。」
「夕映さん!?」
皆の間から現れ、兜を外したのは最後の仲間の夕映さんだった。
なにやら一緒に来た白肌の、横に曲がり角が伸びた半竜族の人をチラチラ見ている。
「そ、総長。その、何と言ったら良いのか……嘘をついて申し訳ないです。」
「あら、まさか私が知らなかったとでも思っていたの?気にしなくて良いわ。
初めまして、ネギ君。アリアドネー騎士団総長、セラスよ。」
「おうおうおう!俺はメガロでケチな政治家やってるリカードってモンよ!!」
「暑っ苦しいのう……。妾はヘラス帝国第三皇女テオドラじゃ。」
「帝国の皇女様ぁ!?」
セラスと名乗った人に続き、初対面の人が自己紹介を始める。
アリアドネー総長にメガロメセンブリアの議員、帝国の皇女様って、こんな偉い
人達が僕達の修行を!?・・・・・・なんで?
「納得がいかない顔をしていますね、ネギ君。」
「え、ええ、まぁ……。」
「そこの雑魚共は知らんが、私達は兄様に嗾けられただけだ。『俺は出ちゃ駄目
だって言ったくせに自分達だけ楽しもうなんてずるい!ネギの手助けして倒して
来い!』ってな。」
ああ、なんか納得・・・と皆が生暖かい目でエヴァンジェリンさんを見る。
最強種と言えどもこの人達も大変なんだなぁ。
「コホン!まぁ、なんだ。この雑魚共の言う事など聞く必要ないぞ。
私達が見てやる。」
「と言うか誰が雑魚だ、失礼なガキだぜ。」
「ほう?政治家風情が吠えるじゃないか。丁度いい、今ここで……。」
「さ、あっちは放って置いてあなた達はこっちね。」
「え!?あれ放って置いていいんですか!?」
「構まうな構うな、エヴァは愁磨の言うことを最優先するからな、っと。」
どんっ
と言いつつテオドラさんが取り出したのはダイオラマ球。
決勝までは、試合が順調に行われればあと三日しかない。とは言え、僕達が
今まで使っていたダイオラマ球もあるんだけれど・・・。
「心配無用じゃ!なんせ愁磨の倉庫から一番いいのを借りてきたからの!」
「っちょ、良いんですか!?」
「妾とてエヴァ達同様本人に依頼を受けた身じゃ、そのくらいの融通はしてくれる
じゃろう。」
聞いて驚け~と嬉しそうに品物の説明を始めるテオドラさんは更に置かれ、今度は
ヘラスさんとリカードさんが前に出てきた。
「さて、体術は俺に任せろ。連合近衛軍じゃ白兵戦の鬼教官と言われてたんだぜ。」
「私は魔法系統専門よ。ネギ君の『千の雷』と小太郎君の式神を仕上げるわ。」
「は、ハイ!よろしくお願いします!」
「おう!それじゃあ……修行開始だ!!」
「「おぉおおおおおおーーー!!」」
………
……
…
その後約一ヶ月間、僕と小太郎君は・・・こう言ったらアレだけど、初めて理論的な
修行を行った。リカードさんには強化技法を使わないで、しっかりとした体術を。
小太郎君はこっちがメイン。
「オラオラ!どうしたガキ共ぉ!強化無しだとンなもんかぁ!?」
「くっ……!このおっさんマジでつえぇやないか!」
そしてヘラスさんには魔法理論と制御、式神の使役法をメインに。
僕はそれに加え、エヴァンジェリンさんから『闇の魔法』のレベルアップを。
「あら、流石ね。魔法に関しては専門家並みに知識があるわ。」
「は、はぁ。ありがとうございます。」
「その点、『闇の魔法』はまだまだだぞ。さっさと来い!」
「はぃいいい!」
そして―――
「2千、999……!さん、ぜんっ……!!ふーーっ。」
ズズンッ
朝の日課の最後、岩乗せ未強化腕立て伏せ3千回を終え、一息つく。
と、そこに珍しくテオドラさんが現れ、ポットを放って来た。
「そら、差し入れじゃ。まったく、毎日精が出るのう。」
「ありがとうございます。いえ、あの人達に勝つにはこれくらいは最低限かと。」
「左様か。まぁそのとおりじゃがな。」
そう言いつつ浜辺に座り、自分の横をポンポンと叩いて座るよう促してくる。
う、ううん。この人なんとなくノワールさんに近いから緊張するんだよね。
「修行の方はどうじゃ?」
「……どう、でしょうか?」
「ふふっ。メキメキ上達しておるよ。体術・魔法・『闇の魔法』全て、以前より
遥かに、主は自分のものとしておるよ。」
「そう、ですか……。」
テオドラさんの答えに、イマイチ喜び切れず答えてしまう。・・・僕自身も、それは
感じている。魔法の発動も早くなったし、消費魔力も若干減らせている。
『闇の魔法』も以前よりは侵食が少ないようにも思う。けど・・・・・。
「それでも前と同じく、決め手に欠ける……そういう顔じゃな?」
「っ、はい……。」
「ま、そちらは根を詰めても仕方ない事じゃ。体の力を抜いて休め。」
にぱっ、と活発そうな笑みでそう言われては否応なく体の力を抜かざるを得ない。
・・・代わりに、気になっていた事をテオドラさんにも聞いてみる。
「あの……エルザ姫って、僕の、お母さんなんでしょうか……?」
「……すまんな、妾も答えられんのじゃ。他の者に聞いても同じだったじゃろう?」
「はい、まぁ……。」
そう、皆にこの質問をぶつけたけれど、答えは決まって『本人に聞くか男と認めさせ
て見せろ』だった。"紅き翼"の皆で決めた事らしいんだけど・・・。
「もし、ラカンさんに勝てたら、一人前と認めてくれるでしょうか……?」
「どうじゃろうな?ま、しかし勝たねばならん理由が増えたようじゃな。」
話は終わり、と立ち上がったテオドラさんは、思い出したように腰のヒラヒラの
裏から何かを取り出し、また投げて寄越した。
受け取り見てみると・・・30センチくらいの普通の木の棒だった。
「わっとと……な、なんですか?これ。」
「そうじゃのう。勝利の鍵、切り札その一かの。」
・・・だから、なんなんですかこれ。と問う暇もなくテオドラさんは歩いて行って
しまった。多分、決勝で使うことになるんだろう。だから・・・。
「明日、か。」
明日の決勝に思いを馳せつつ、修行を再開した。
Side out
ページ上へ戻る