ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
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序章
0話 絶望の産声
視界を覆う青い光と浮遊感から解放され、ブーツ越しに地面の存在感を感じた。体感としては、主街区同士を繋ぐ《転移門》か、遥か上層で入手出来た使い捨ての移動用アイテム《転移結晶》を使用した際に発生するエフェクトと感覚に似ていたようにも思える。
それと同時か僅かに遅れてか、周囲からかなり大多数から発せられるざわめきを聴覚が捉える。
………どうやら他のプレイヤーもここ《はじまりの街》の中央にある時計台広場に集められているようだ。バグ修正のための強制ログアウトかと思ったが、そうではないようだ。バグに対する対応としてはセオリーを外れているようにも思える。
辺りには状況を飲み込めず戸惑う者、告知のない突然の転送に苛立ちや不安を見せる者、あるいはログアウト機能の異常に対しての運営からのアナウンスだろうと予想する者や、バグに対する運営からのアイテム配布を期待する者、サービス初日のイベントだと予想した男女のアバターがPT申請を交わす姿なんかも見受けられる。そのどれもが女性比率の多い美男美女の集まりで居心地が悪いが、ここを立ち去っていいものかも判断しがたい。
「燐ちゃん………」
「なんだ、近くにいたのか」
装備のシャツの端を引っ張られ、ようやくヒヨリに気付く。
よく見ると先程のベータテスターらしき黒髪長身と赤髪の男性アバター二人組の姿もあったが、別段これといって声を掛ける理由もない。
男性アバター達を視線から外し、広場の時計台に目をやる。時計台が示す針は既に午後五時二十九分。現実の東京の標準時とリンクした太陽は沈みかけ、痺れを切らし始めたプレイヤー達の野次が勢いを増すなか、上空に一つの赤いウインドウが出現した。【warninng】と記されたウインドウは断続的なブザー音を響かせながら点滅して存在を主張している。
続いて、点滅していたウインドウを起点に【warning】と【system announcement】のウインドウが空に天蓋を張るように展開された。どこか不吉な赤が、夕焼け空のオレンジを塗りつぶしている。
「ねぇ、何なの? 何か始まるの………?」
不安げなヒヨリの問いに答えを返せず、ただ空を覆う天蓋に視線を向ける事しかできなかった。
知性とは離れた別の感覚、野生の勘とか第六感とか、それに近い何かで異常だと感じたとしか言い様がない。それをうまく伝えることが、俺にはできなかった。
だが、この状況が俺の理解を待ってくれる筈もなく、空を覆うウインドウの隙間から赤い粘性を持った液体が流れ出た。液体は半ば重力を無視する形で空中に収束して塊を作り出す。それはさらに蠢きながら形を変え、やがて赤いローブを纏った巨大なアバターを作り出した。
それはプレイヤーならば知っているであろう存在。GMに酷似しているものの、ローブの下には貌がない。
一度静まり返った広場は、ポツリポツリと声が挙がり始めた。
GMらしきものの出現により、ログアウト機能の復旧ないしそれに準ずる報告か、イベントの開始の宣言か、静観のみだった運営からのアプローチに各々の反応を見せている。
「プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ」
両手を広げ、来訪者を迎え入れるような身振りで赤いローブのアバターは言葉を発した。
男性の声だ。声に起伏がなく、ローブの下も貌がない為に、声の主の感情を窺い知ることはできない。だが、《私の世界》という言葉が酷く不気味で歪つに聞こえた。
「私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ」
――――茅場晶彦。SAOの開発ディレクター。
完全な仮想世界の創造を目指し、そして百層からなる浮遊城《アインクラッド》という異世界を創り上げた天才だ。
開発者本人の登場ということも相俟って「これがイベントだろう」という声が数を増すも、発した言葉は脅迫かと聞き紛うほどに冷酷さを孕んでいる。これがただのイベントだとは思えない。
「プレイヤー諸君は、すでにメインメニューからログアウトボタンが消滅していることに気付いていると思う。しかし、これはゲームの不具合ではない。……繰り返す。不具合ではなく、ソードアート・オンライン本来の仕様である」
耳を疑った。ログアウトボタンがない、ログアウトできないこの状況が、SAOの本来の姿であるという言葉に……
SAOのハードである《ナーヴギア》は頭部全体を覆うヘッドギア型をしている。フルダイブとは、知覚情報を脳に、運動の命令伝達を延髄に、埋め込まれた信号素子のマイクロウェーブによる精密なリンクを行い、脳とナーヴギアとで情報のやりとりをする状態をいう。その結果、本来は筋肉へ伝達されるべき命令はすべてナーヴギアへと送り込まれ、身体は完全に動かない状態となっている。
――――つまり………
「諸君は自発的にログアウトすることはできない。また、外部の人間の手によるナーヴギアの停止、あるいは解除も在り得ない。もしそれが試みられた場合、ナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが諸君の脳を破壊し、生命活動を停止させる」
生命活動を………停止させる………?
そんなことは流石に………いや………
「燐ちゃん、嘘だよね………? みんな嘘なんだよね?」
状況を整理するうちに脳内に広がった筋書きが現実味を帯びる中、ヒヨリの声で意識は一気に現実へと戻る。とはいえ、目の前にあるのは仮想空間とアバターの姿を借りた幼馴染なのだが、声色で伝わる。
ここまで怯えるヒヨリを見たのは、多分これが初めてだ。
「だってほら………ゲームだもん………ほんとに死んじゃったりなんて、しないよね?」
「ごめん、俺にもわからない………」
嘘だと言ってやりたい。いや、俺自身も嘘だと信じたいが、茅場晶彦を名乗るあのアバターがログアウト機能を意図的に消滅させたというこの状況に加えて、ナーヴギアの構造、つまり信号素子のマイクロウェーブは出力をいじれば電子レンジのそれと変わらない。さらに、ナーヴギア本体には大容量のバッテリーが内蔵されている。頭部が収まっているナーヴギアを圧力や衝撃で破壊しようとする行為は考えにくい。恐らく外部から解除される場合はコンセントを引き抜くだろう。しかしその場合、充電解除をナーヴギアが感知して、それがトリガーとなって高出力のマイクロウェーブが発生することも考えられる。シチュエーションに隙が無い。愉快犯にしては設定が真に迫り過ぎている。
「残念ながら、プレイヤーの家族、友人などが警告を無視し、ナーヴギアを強制的に解除しようと試みた例が少なからずあり、その結果、二百十三名のプレイヤーがアインクラッド及び現実世界からも永久退場している」
ローブのアバターが宙に手を滑らせると、ニュース番組やネットの書き込みが映されたウインドウが展開し、プレイヤーの視界に入るように石造りの広場の上空を流れた。
俺の視界に入ったのは、いつも見ている番組の放送に割り込む形で放送された緊急特番だった。見覚えのあるアナウンサーが錯綜した情報を慌ただしく視聴者へ伝えようと苦心する姿が放送されている。
把握されている犠牲者の数字は、認めたくないがローブのアバターが公表した数字と同じだった。
………と、その画面に見入る最中だった。隣の見知らぬアバターが青く発光し、ガラスの割れるような音とポリゴン片となって消滅した。それから新たな犠牲者の報道が付け足されたのは間もなくのことである。
「ご覧のとおり、多数の死者が出ていることを含め、この状況をあらゆるメディアが報じている。よって、ナーヴギアが強制的に解除される危険は低くなっていると言って良かろう。つい今しがた、新たな脱落者がこのような形で現れたのは遺憾だが、諸君らは安心してゲーム攻略に励んでほしい」
「しかし、十分に留意してほしい。今後、HPが完全に失われた瞬間、諸君らのアバターは永久に消滅し、同時に諸君らの脳はナーヴギアによって破壊される。
諸君らが解放される手段はただ一つ、このゲームをクリアすればよい。
現在、君たちがいるのはアインクラッドの最下層、第一層である。各フロアの迷宮区を攻略し、フロアボスを倒せば上の階に進める。第百層にいる最終ボスを倒せばクリアだ」
蘇生手段が機能しない。
その言葉で真っ先に記憶に浮上したのは、つい数時間前までの《遊びだった》SAOでの出来事だった。
実を言うと、その時点でヒヨリは既に二回HPが全損している。その頃はまだ《始まりの街》の《黒鉄宮》という施設で復活し、そこからまたスタート出来た。かくいう俺だってベータテスト時には何度、黒鉄宮からはじまりの街に戻ったことか。だが、これからは……
「……それでは最後に、諸君の持物に私からのプレゼントを用意してある。確認してくれたまえ」
その言葉に、プレイヤーは一斉にメニューを開き、持物を確認した。
そこには先程までの戦闘で獲得したアイテムの他に一つ、見慣れないアイテムが存在していた。
「手鏡……?」
ひとまず、どんなものなのかを確認すべくオブジェクト化を行う。
現れたのは、手のひらに収まるサイズの文字通りの手鏡だった。鏡面には、リアルのそれと代わり映えのしない、手間を惜しんでキャリブレーション反映で再現された俺自身が映り込んでいるだけだった。
「きゃっ!?」
鏡を覗いたヒヨリは短い悲鳴の直後に、青い光の柱に飲まれた。というより、俺を除いたほぼ全てのプレイヤーが光に飲み込まれる。
本来、街中ではダメージは発生しないが、今までの常識がどこまで通じるかも未知数だ。もしこれがダメージ判定のあるエフェクトだとしたら……
――――そう思うと、身体は咄嗟に動いていた。
このエフェクトから引きずり出す!
覚悟を決め、渾身の力で腕を伸ばす。とにかくヒヨリを引きずり出す……ヒヨリだけは……!
「おぉぉぉぉ!!」
エフェクトから覗く肘に狙いを定め、掴み取る。
脳の裏側にこびりつく罪悪感に苛まれながら、祈るような気持ちを込めて引き寄せる。
「り、燐ちゃん………?」
「ヒヨリ………お前、アバターが………」
「アバター? ………って、え………あれ?………私………」
手鏡を再び見たヒヨリは、あまりの出来事に絶句する。
長身で銀の長髪で切れ長の青い瞳のクールビューティは既になく、代わりに身長が百五十センチメートルを僅かに超えるくらいの黒髪の少女が、いつも見慣れた《浅羽日和》がそこにいた。どうやら、手鏡なるアイテムはアバターのデザインを測定数値反映機能で上書きするものらしい。
ともあれアバターがリアルの姿に変更された以外、何も異常は見受けられないようだ。
周囲にあった美男美女の群集は現実味のある顔つきに変わり、心なしか男女比率も逆転している気がした。性別や年齢を偽っていたプレイヤーやその被害者間での衝突と思われる諍いが耳に入る。黒髪長身が小柄に、赤髪も野武士面になっていたが、この際意識から切り離すこととした。
「諸君は今、なぜと思っているだろう。なぜソードアート・オンライン及びナーヴギア開発者の茅場晶彦はこんなことしたのか、と。私の目的は既に達せられている。この世界を創り出し、観賞するためにのみ、私はソードアート・オンラインを創った。そして今、全ては達成せしめられた………」
「以上で、ソードアート・オンライン正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の健闘を祈る」
言葉を締めくくると、巨大なローブのアバターはノイズと共に崩れ、液状に戻ってウインドウ群の隙間に消えていった。
直後には何もなかったかのようにウインドウも消え、広場にはプレイヤーだけが取り残された。
これがただのゲームではなくなったと理解した者は既に姿を消した茅場に怒号を吐き、あるいは抗いがたい現状に為す術もなく嘆き、それらの奔流が誰かの悲鳴が投じられた一石となって波紋のように増幅した。
………その声が俺を責めるように聞こえ出して、肺に鉛が入ったような息苦しさが俺を襲った。
『お前の所為で友人が死ぬ』と嘲る声が、
『なぜ友人を死なせるきっかけを作ったのか』と蔑む声が、
大勢の絶望が溶け合った雑言の中から、そんな幻聴が飛び出しては鼓膜にこびりつく。
狂ってしまった世界を切り取る視界の端で、黒髪小柄のプレイヤーが相棒であろう赤髪野武士面を引っ張って広場を後にするのが見えた。どこへいこうというのか、なにをしようというのか。それは然して問題にはならなかった。誰かが、この現実に抗っている。進もうとしている。そう思うことが、俺の動く動機になった。
「……話がある。場所を移そう」
楽しい遊びだったSAOは、もう跡形もなく崩れ去っていた。
この世の終わりを具現化したような広場から放心状態のヒヨリの手を引いて、街の出口へ向けて移動する。プレイヤーのほとんどは、幸いまだこの状況に翻弄されて身動きが取れるような状況じゃない。今だからこそ、俺は動かなければならない。話しておかなければいけない。そんな気がした。
「燐、ちゃん………?」
「このまま街を出る」
端的な言葉だけで、要件を伝える。
あまり時間もないから移動しながら、あの騒がしい中だとヒヨリも落ち着いて話を聞いてくれなかっただろう。幸い、驚いたような反応を見せてくれた。話が聞ける程度には精神状態が回復しているようだ。
「で、でもっ………もしかしたら死んじゃうんだよ!? それに、私が一緒じゃ………」
「お前はここに残れ」
「………え?」
追い込まれたあの状況から、ここまで回復したヒヨリの精神力に素直に感謝するものの、突き放すような言葉を言わざるを得ないこの状況は辛いものがある。だがこれはヒヨリを守るためでもあり、俺なりのケジメでもある。
「この世界で生き残る方法は二つ。自分のステータスをひたすら強化するか、あるいはダメージが発生しないエリアに閉じこもるか……このどちらかだ。前者には戦闘で死亡するというリスクがついて回るが、そういう人間がいないとこの世界から誰も脱出できない。後者は恐らく安全だろう。リスクを負わない。だけど、全員がそうなれば俺達は死ぬまでずっと植物状態だ」
「でも、なにも燐ちゃんがやらなくたって………」
こんな時でも庇ってくれる友人を、俺はぞんざいに扱っていたのか。
我ながら人を見る目がないと落胆しつつ、それでも俺は贖罪を為さねばならない。
……しかし、憔悴した心が命じた発言は、決意表明ではなかった。
「………俺がSAOのベータテスターに選ばれてから、あまりヒヨリとも話さなくなってたよな」
懺悔という名の責任逃避。
感情のダムを決壊させるほどの罪悪感と悔恨の念が、許されないと解っていながらも俺に懺悔を語らせていた。そうでもしないと、こうしているうちにも染み出してくる弱い感情に俺自身が押し潰されてしまう気がしたから。
「クラスが離れてても、休み時間にはいつも会いに来てくれてさ……なのにうざがって、遠ざけて………こんな大事な友達がいたのに気付かないで………それも、ヒヨリまで巻き込んでこんなことになって………こんなんじゃ、俺が俺を許せない。うまく言えないけど、これ以上ヒヨリを危険な目に遭わせられない」
まとまりのない、感情をそのまま言葉にしたような、謝罪とも意思表明ともとれない何かを一頻り言い終える頃には、街の出口である開きっぱなしの門まで辿り着いていた。
「………じゃあな。運動音痴なのに、なかなかどうして筋は良かったよ」
もう、この手を握っているわけにもいかない。
………たとえ、この先で死んだとしても、ヒヨリが元の世界に戻るための足掛かりになれるなら……
「だめ………一人でなんて、行かせない………」
解いた手に、再び手が結ばれた。
今度は俺が握るのではなく、ヒヨリの手が握る形で。
リアルでは考えられないくらい、驚くほど力強く。
「私、言ったよね………自分で考えたって。私だって、いつまでも子供じゃないんだよ? 燐ちゃんと同い年なんだよ?」
レベルは全く同じ。互いに一のままだが、筋力の数値は男女のアバターで反映に一切の差はない。振り切ろうにも膠着してしまうだろうが、そんなことは所詮言い訳だ。まず振り払うという行動に及べなかった。
ヒヨリとの筋力勝負の前に、既に心が揺らいでしまっていて、完全に動けなかった。
ヒヨリの顔を見る事すら、今の泣きかけの顔を見せる事すらできなかった。
「それにほら、私一人の方がずっと危ないし、燐ちゃんがそばにいた方が安心できるし………それにね………」
ふと、言葉が詰まり、ヒヨリは「ううん」と何かを訂正して、繋いでいた手を包むようにもう一方の手を添えた。
「………燐ちゃんも、あまり頑張り過ぎちゃだめだよ。私も頑張るから、一緒に生きてここを出よ、ね? だから教えて。燐ちゃんが《べーたてすたー》になって知ったこの世界の事を………!」
きっと今までの人生で、この瞬間ほど己を恥じた時はないと思う。
まるで自分だけ大人になったつもりで、どこまで自惚れが過ぎるのか。
ヒヨリの意思を蔑ろにしようとして、挙句、自分の死さえ美化しようとして、それで現実を受け入れた気になって、情けない。
ヒヨリの方が、ずっと俺より現実に抗っていたではないかとさえ思えてしまう。
――――そうだ、死んだら駄目だ。
生きて抗わなければ、こんな下らない世界で犠牲者に成り下がってなどなるものか………
………気付いたら、堪えていた涙が流れていた。
感情エフェクトが生成する偽物の涙は、それでもヒヨリが融かしてくれた負の感情との決別の証のように、そんな風に思えた。
「………ここから、北西」
「………うん」
不覚にも出てしまった涙声に、友人は頷くだけで追及はしない。
むしろ、今まで以上に力強く手を握って意志の強さを示してくれた。その優しさに感謝しながら、咳払いで声音を整え改めて、目下の方針を伝える。
「恐らく、ベータテスターを含む他のプレイヤーは北西にある《ホルンカ》を目指すだろう。そこで発生するクエスト報酬で序盤では優秀なパラメータの片手剣《アニールブレード》が手に入る」
「じゃあ、私たちも行くの?」
「いや、俺たちは北東に向かう」
「そこに何かあるの?」
「ああ、隠しダンジョンだ。そこではさらに優秀な片手剣と、ヒヨリが装備している種類の武器を落とすモンスターも出現する。ベータテスト中では俺しか見つけてない穴場中の穴場。どれも一つしかない、早い者勝ちのアイテムだ。うまくいけばレベルも格段に上げられる」
「あの………そこは、大変なの………?」
「あれだけ大見得切って尻込みするなよ」
「ごめん………やっぱりちょっとだけ怖くて………」
「ぷふっ………ふはははっ!」
「あっ、笑わないでよ!?」
………こいつが一緒にいてくれて良かった。
「いや、悪い」
これからは、もう少し外を歩くようにしよう。
自分の世界に閉じこもらず、なるべくヒヨリと一緒にいよう。
だから、そのためにも戦おう。この世界で終わるのではなく、現実へ戻るために。
涙を拭って、向き直る。
背中を向けながら相手に頼み事をするなんて、親がここにいたら拳骨が降ってくること請け合いだ。
「一人だと下手をすれば死ぬ。だけど、二人なら余裕でクリアだ。出てくるモンスターじゃ物足りないだろうな」
今は、誰の力でも借りよう。
それも、こんなところにこれだけ心強い相棒がいるなら、協力を要請しない手はない。
「頼む、力を貸してくれ」
「………うん!」
――――ここを抜けだしたときに、ヒヨリの本当の手を引っ張ってやるために………
後書き
文章スキルが足りなかった所為で作中で書けなかった補足を致します。
『見た目が変わらないよ! やったね燐ちゃん!』
具体的には茅場晶彦プレゼンツ初心者応援アイテム《手鏡》についてですが、アバターの外見ステータスを事前測定数値に書き換えるものと自己解釈し、既にキャリブレーションデータを反映したアバターには効果のない、使用できないアイテムとしています。つまり燐ちゃんの持物にはまだ未使用の《手鏡》があるということですね。
また、原作においてはプレイヤー全員が個々のアバターをデザインしておりますが、今作では「いいからはよSAOやらせぇや!」的なせっかちなプレイヤーへの為の粋な計らいとして測定数値反映機能があったものとしています。
話は変わりますが、アニメ1話を見返したときに「ここのどこかに燐ちゃんとヒヨリがいるのか……」と思いながら見る傍ら、違和感がないか確認しながら見ていると、息抜きに見たはずなのに、いつの間にか推敲がメインになって本末転倒になっていたり、でもやっぱり本家さんは凄まじいと改めてリスペクトしてみたり、何やら騒々しくなってしまったり………
申し訳程度のオリジナリティ(!?)と、SAOのデスゲームへの緊張感が出てくれればいいなと思っています。個人的には開始早々打ち切りの最終回みたいな雰囲気を感じてしまいましたが、まだまだ結構続きます。
頑張って続かせます。
続かせてください(懇願)
ということで、もし読者の方がいましたら引き続きご覧くださいませ。
ではまたノシ
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