美しき異形達
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第二十九話 旅のはじまりその五
「だからね」
「妖怪グッズはいらないか」
「ええ、お土産買って来るのなら他のをお願いするわ」
「それじゃあそれぞれの場所からこちらに郵送させてもらいますね」
裕香が現実的な返答をした。
「三重のものなり和歌山のものなり」
「高いものはいいから」
「どうしてですか?」
「学生の娘に高いものを要求する教師はそれだけで教師失格よ、だからもっと言えばね」
どうかというのだ。
「お土産はいいから」
「そうですか」
「気持ちだけ貰っておくわね」
「わかりました、じゃあタオルを」
ここで裕香が出したのはこれだった。
「阪神タイガースのタオルでも」
「それならね」
「いいんですね」
「けれど気持ちだけでいいから」
贈りものを買うというそれだけで、というのだ。
「買わなくてもいいわ」
「そうですか」
「ええ、先生は皆にお土産を買って来るけれどね」
「函館の海の幸ですか?」
「いえ、寮生皆へのお土産よ」
それだというのだ。
「楽しみにしておいてね」
「私達皆へのですか」
「ええ、買って来るからね」
「お菓子かな」
薊はお土産と聞いてすぐにこれを連想した。。
「やっぱり」
「ええ、函館のね」
「そうか、じゃあ楽しみにさせてもらうな」
「そうしておいてね」
「それじゃあ行って来るよ」
「悪い男と交通事故にはくれぐれもね」
先生はこのことは念を押した。
「注意してね」
「ああ、そんな奴がいたら叩きのめすさ」
薊が笑って答えてだ、そしてだった。
薊と裕香は駅前まで荷物を持って向かった、そして駅前で少し待っていると。
まずは菖蒲が来て次に菊が、それからだった。
向日葵も来て桜、最後に菫が来た。薊は全員揃ったところで笑顔でまた言った。
「じゃあ行こうか」
「旅館はもう全部ですね」
「ああ、裕香ちゃんがさ」
「予約したわ」
裕香がにこりと笑って薊に答える。
「和歌山も三重もね」
「他の宿泊先もだよな」
「ええ、八条グループのね」
「八条グループなのね」
「八条グループの経営している旅館だとね」
経営している企業は八条ホテルだ、八条グループの中ではホテルだけでなく旅館も経営している企業だ。
「八条学園の学生さん物凄く割り引いてくれるの」
「そんなにかよ」
「そう、しかも五人以上の団体さんだと」
薊達は七人だ、普通に五人以上だ。
「さらに割引いてくれるから」
「都合がいいんだな」
「しかも移動は八条鉄道でしょ」
「ああ」
「八条鉄道もね」
こちらもだというのだ。
「学生さん割引き、しかも夏休みの旅行のサービスもあるから」
「余計にいいよな」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「宿泊も移動もか」
「安くね」
「それはいいよな」
「そう、だからね」
それで、というのだ。
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