一部だけのもの
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第二章
「ですから」
「このことはか」
「教会とあまり揉めては」
「いらぬ攻撃を受ける元というか」
「どちらの国も隙あらばです」
まさにだ、神聖ローマ帝国もイングランドもというのだ。
「我が国を攻撃してきますので」
「ここはか」
「はい、この様なことで教会を怒らせてはならないかと」
この貴族はあくまで王に言うのだった。
「私は思います」
「では教会に言うのだ」
王はすぐにだ、その貴族に言い返した。
「教皇領の権益は絶対に保障してだ、教会税も考えると」
「増やすのですか」
「そうだ、実際にそうするとな」
つまり教会の身入りを増やすというのだ。
そしてだ、王はさらに言った。
「そのうえで聖職者の数も増やし国や宮廷の要職の座もな」
「増やしますか」
「そして枢機卿や司教達にだ」
個人にもというのだ。
「贈りもの、絵画にしろ宝石にしろ美女にしろな」
「そうしたものを贈り」
「満足してもらうことだな」
「そうして、ですか」
「余の好みには口出しをさせぬ」
断じて、というのだ。
「政としてもあれこれ言わせぬ」
「そうされますか」
「それで黙らぬのならな」
ここでだ、王の顔が暗くなった。そのうえで言うことは。
「黙らぬ者にあれを贈れ」
「毒を」
「滅多なことを言うな」
直接には言わせなかった、あえて。
「密かに葬儀の用意はしておくことだ」
「そうした黙らぬ方の」
「そうだ、わかったな」
「そこまでされますか」
「余の好みのことは誰にも言わさぬわ」
やはり断固とした言葉だった。
「教会だろうが誰であろうがな」
「法皇様でも」
「そうじゃ、あの方でもじゃ」
王より上にある、まさに太陽と言うべき相手でもだというのだ。
「そうする、わかったな」
「畏まりました、と答える他ありませんな」
「私もです」
「私もまた」
貴族達もここでこう言うしかなかった、そして言った。
「その様に」
「陛下の思われるままに」
「些細なことではないのか」
王の考えではこうなることだ、同性愛も。
「何度も言うがギリシアではだ」
「当然のことだった」
「だからですか」
「そうだ、教会に言われようともな」
例えどう言われようとも、というのだ。
「余はこの楽しみを止めぬ」
「教会に便宜をしても」
「それでもですね」
「それで話が済むのなら安いものだ」
王にとってはだ。
「ではよいな」
「はい、教会にも便宜を与え」
「そしてフランス国内の聖職者達にも」
「贈りものをして」
「見て見ぬふりをしてもらいましょう」
こうしてだった、フランス王の同性愛は教会も見て見ぬふりをするのだった。だがその同じフランス国内でだ。
ある若い男が捕まりだ、異端審問官の前に引き出されていた。男は一介の傭兵だ。産まれた国は何処かわからない。
その男を前にしてだ、審問官の補佐達が審問官に言っていた。
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