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第三章
「おぞましいことにこの者はです」
「男と寝ていました」
「若い男、相手は誰かわかりませんが」
「その者と関係を持っていたのです」
彼の同性愛を告発するのだった。
「この罪、どうされますか」
「到底許されぬと思いますが」
「閣下はどう思われますか」
「この者の罪について」
「この上なくおぞましい罪だ」
審問官は実際にだ、顔をこれ以上はないまでに顰めさせてだ。そのうえで補佐の者達に対して答えたのだった。
「決して許してはならない」
「ではやはり」
「この者は」
「幸いにして罪は既に明らかになっている」
取り調べの前のだ。
「それに私は今気分が非常にいい」
「では、ですね」
「拷問はなしですね」
「あれは」
「しなくていい」
異端審問を異端審問たらしめている惨たらしいことこの上ない拷問は、というのだ。
「すぐに処刑せよ」
「ではその処刑は」
「どの処刑にしますか」
「この者の罪は人を殺めるに等しい」
教会の考えではそうなることも言うのだった。
「この上ない厳しい処刑にしなければならない」
「それでは、ですね」
「火炙りですね」
「生きたまま火炙り」
「それですね」
「そうだ、すぐに火刑台の用意をせよ」
審問官は事務的な、既に全てが決まっているかの様に言っていく。
「よいな」
「畏まりました、では」
「今よりすぐにです」
「この者を火刑台に送ります」
「生きたまま」
補佐の者達も応える、かくして傭兵は生きたまま火炙りにされることとなった。そしてその火刑台にくくりつけられた中で。
審問官の補佐の者達がだ、火刑台の中の傭兵にこう問うた。
「何か言い残すことはあるか」
「そのことがあれば言うがいい」
こう言うのだった。
「何でもあればな」
「言ってみることだ」
「俺が死ぬのならだ」
それならとだ、傭兵が言うことは。
「何故王は何もないのだ」
「フランス王か」
「あの方か」
「フランス王は常に周りに男達を侍らしている」
何故侍らしているのかは言うまでもないことだ。
「俺は女がいなかった、だからだ」
「男と寝た」
「それだけだったというのだな」
「そうだ、一度だけな」
たった一度だけの過ちで死ぬこともだ、傭兵は言うのだった。
「火炙りになることはわかっていた、だからこのことはいい」
「しかしか」
「陛下が何も問題にならないことはか」
「何故かというのだな」
「それは何故だ、何故同じことをして俺は火炙りで王は何もないのだ」
傭兵は憤慨し糾弾する顔で彼等に問うていく、今度は彼が問うのだった。
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