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戦国異伝

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第百八十五話  義昭の挙兵その一

                 第百八十五話  義昭の挙兵
 義昭の挙兵を聞いてだった、帝jは周りの者達にすぐにこう仰った。
「何と、室町殿も」
「帝はどう思われますか」
「この度の室町殿のことを」
「全くわかっておられるな」
 こう言われるのだった、御所の奥で。
「そうとしか思えぬ」
「ではこの度の室町殿は」
「大義がないと」
「今ここで挙兵して何になるのか」
 そのいぶかしむお声のまま言われる言葉だった。
「民が困るだけである」
「確かに。今の幕府はもう」
「何の力もありませぬ」
「右大臣殿の神輿に過ぎませぬ」
 朝廷にいる者達もだ、いぶかしむ声で言うのだった。
「それで右大臣殿に対して挙兵されても」
「鎮められるだけです」
「都が戦になり民が迷惑をするだけ」
「その様なことをしても」
「何の意味があるのか」
「理解出来ませぬな」
「左様である。大事なのは民である」
 帝が代々心から思われていることだ、それで言葉を続けられるのだ。
「この度室町殿に大義はない」
「それでは右大臣殿に」
「大義があると」
「朕はそう思う。ここは」
 ここで帝は一つの断を下された、その断はというと。
 すぐにだ、周りの者達に言われた。その御言葉とは。
「六波羅にいる信行殿に伝えよ」
「何とでしょうか」
「六波羅殿に」
「この度室町殿に大義はない」
 まずはこう仰ってだった、そのうえでさらに言われた。
「右大臣殿に大義がある、都の民を救われよと」
「では右大臣殿に」
「その様に御言葉を」
「朕自ら文をしたためる」
「では筆と紙も」
「その二つも」
「そうじゃ、すぐに書く」 
 実際に帝はすぐに信行に書をしたためられた、信行は既に支度を整え出陣して都に入ろうとしていた、そこでだった。
 帝からの文を受け取った、朝廷の者はすぐに信行に言った。
「すぐにこの文をお読み下さい」
「帝からの文を」
「はい、お願いします」
「わかり申した、それでは」
 信行も応えてだ、馬上でだった。
 信行はその文を読んでだ、驚いて言った。
「何と、帝が」
「はい、この度の室町殿のことをです」
「抑えられよと言われるのですか」
「はい、民をお守りして頂きたいのです」
「わかり申した、ではまずは」
 信行も応えてだ、すぐに使者にこう返した。
「朝廷に兵を送りそして」
「民にもですな」
「民を守ります」
 最初からそう考えていたがここで確かに約束したのである。
「必ずや」
「帝そう願われていますので」
「では」
 こうしてだった、すぐにだった。
 信行は朝廷に兵を送り御所の衛とした、そして。
 それと共に自身も洛中に入ったがそこで家臣の者達から義昭の動きについて聞いた。
「二条城からか」
「はい、室町第に移られ」
「そこを拠点とされてです」
 そのうえでだというのだ。
「そこからです」
「兵を動かさんとしておられます」
「左様か。二条城からか」
 信行はその話を聞いてこう述べた。 
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