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ソードアート・オンライン~ニ人目の双剣使い~

作者:蕾姫
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間章:リアルside

 
前書き
視点はシノンです。 

 
私が燐に出会ったのは、私が殺人犯と呼ばれ、イジメられていた時だった。

最初に会った時、ただすれ違っただけなのに、何故か心に残った。

その時は気づかなかったのだけど、後になって思ったのは、燐はその時、同じ目をしていたということだ。

気になったのは燐も同じだったらしく、何度も話し掛けてくれた。あの時の私は、そっけなく攻撃的だったのにも関わらず。

多少話せるようになってからは私のモノクロだった世界に色がついたようだった。

こちらは一般人で人殺し。あちらは御曹子でエリート。気後れして、燐が告白してきた時、思わず返事を先伸ばしにしたけれど本当は嬉しかった。

だが、その喜びはすぐに絶望に変わる。

ソードアート・オンライン

燐がそのゲームに囚われたのだ。どうして燐なのか。私の幸せはどうしてこうも容易く消えてしまうのか。燐の居る病院にいつ死んでしまうかと怯えながら通い詰め、そして世話をしながらそう思っていた。

私は守られてばっかりで。それが嫌だったのだ。私は燐の後ろではなく、横に立って胸を張って告白を受け入れられるようになりたかった。

だから知り合いの誘いもあってガンゲイル・オンラインで銃へのトラウマを乗り越えることにしたんだ。

燐がソードアート・オンラインをクリアし、帰ってきたのはその頃。嬉しかったけれど、そのデスゲームを乗り越えてきた燐は、さらに強くなっていて……焦りを感じた。

追いかけても追いかけても届かないその背中。燐のリハビリを手伝いながら、燐と一緒にデートしながら……そうやって幸せを感じる自分に。何もかもを捨て去って燐に守ってもらいたいと思う自分に。嫌気がさしていた。

そして、私を変える事件、死銃事件が起こる。

結果としてまた燐に助けてもらったのだけれど、私をトラウマを乗り越えて……。余裕がなかったからか、気づかなかったことにも気づけた。

私も燐の助けになれていたということに。

私を庇って燐が刺された時は取り乱したけれど、私は私なりに燐のために行動しようと思う。

だから……。

「明日奈、ちょっといい?」

「なに?」

キリトが燐と同じく死銃に刺されて窶れているように見える明日奈に声をかけたのは……。

「燐の今の居場所が知りたいから協力してくれない?」

おそらく必然だったのだろう。私が使えるコネは少ない。そして、その数少ないコネの主が燐とキリトの居場所を隠している可能性が高いとなれば、私個人が辿り着けるわけがない。

だから、少し利用しているようで心苦しいけれど、明日奈に発破をかけることにする。

「しののん。私たちが行ってもなにもできないと思うけど……」

自責の念に駆られてるからか、明日奈の表情は暗い。

「かもしれない。でも、私はこのまま座して待つなんて嫌。燐に守ってもらうだけじゃなくて、互いに支え合う関係になる。私はたとえ役に立たない結果になるとしても、出来うる限りのことをしたい。だから、お願い。力を貸して欲しい」

これでダメなら菊岡さんにでもしつこく追及しなければいけないかもしれない。もちろん、話してはくれないだろう。

「……しののんは強いね」

「ううん。私は弱いよ。だって私は弱いから、こうやって行動して証明しないとね」

自嘲げに笑う。燐を信じて待つ、という選択肢を選べない自分に。

すると明日奈は儚げな微笑みから一転、悪戯を思いついた子供のような笑みを浮かべた。

……あ、マズイ。

「しののんは何を証明するの?」

「え、えっと明日奈?さっきまでのシリアス(深刻)な空気はどこに?」

ちょっと待って。空気の急激な変化についていけないから。

「んー……なんかね。しののんを見てると落ち込んでるのがバカらしくなっちゃって」

「そう……それはよかったね」

退避しよう。私の中のシノンが危険サインを出しているし。

そう考えて急いで席を立とうとすると、机を挟んで対面に座っていた明日奈が私の肩を掴んで、立ち上がれないようにしてきた。

その速さはアスナの\'閃光\'の二つ名を感じさせ、私は一切反応出来ず、浮かしかけた腰をもう一度椅子に落とすことになった。

……今の明日奈の表情には心当たりがある。あの表情は獲物を見つけた捕食者の目だ。

「で、何を?」

「……言わないとダメ?」

「うん、ダメ。言わないと協力してあげないよ?」

表情は悪戯っ子のように笑ってる。多分、ただの冗談なんだろうけどそんなこと言われたら私に選択肢は存在しない。

「……それは卑怯……」

「ふふっ、ゴメンね?でもしののんの恥ずかしがっている姿が可愛くって」

語尾に音符マークが付きそうなほどに上機嫌な明日奈。……できるなら撃ちたい。

「……ぅ……」

そしていざ言うとなると途方もなく恥ずかしい。さらっと自分の気持ちを言える燐を凄いと思ってしまう。

今、私の顔は真っ赤だろう。燐が居たらからかわれるくらい。

「ほらほら」

笑顔で促してくる明日奈。

私は恥ずかしさで鈍る口を必死で動かして、半ば自棄になりながら叫んだ。

「燐の彼女だってこと!!……ぁ……」

……場所のことも考えず。

私たちが居るのは駅前にあるカフェで学生も多く結構混んでいたのだ。そんな場所で叫べば周囲の視線を集めるのも自明の理。

そもそもそんなに視線が集まることに強くない私は、逃げるように机に突っ伏した。

「……明日奈のバカ……」

「あははは……なんかゴメンね……」 
 

 
後書き
シノン成分が足りない……蕾姫です。

間章ということでシノンsideをお送りしました。シノンの心情も絡めて、原作で明日奈が特攻する、その発破をかけるといった流れです。

短めですみません。次回からは普段燐視点に戻りますが、ちょくちょくリアルsideを入れて行きます。オーシャンタートルまで頑張って行き着くぞーっと。原作とは違い、シノンが最初からいるということでどう変わるかをお楽しみいただければと。

また次回。いろいろ募集中ですので。

ではでは。 
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