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ソードアート・オンライン~ニ人目の双剣使い~

作者:蕾姫
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番外編:二人っきりの休日

 
前書き
番外編です。

挿絵を描いてくださったソードアート・オンライン 無邪気な暗殺者――Innocent Assassin――のリクエストにより、筆を執りました。

ちなみに、オーダーは挿絵を最後のシーンにするというものでした。

こちらはガラケーなので上手く貼れません。ですので、なべさん御本人に許可を取り、プリ画像というサイトに画像を投稿してあります。

後書きにURLを貼ってありますが、プリ画像から'二人目の双剣使い'で検索をかければヒットしますので、良ければどうぞ。

では、あまあまな日常ではありますが、お楽しみください。 

 
ある日の休日の午後。俺と詩乃は駅前の商店街に買い物をしにやってきていた。

というのも、詩乃と彼氏彼女の関係になって以来、時折休日はこうして二人で買い出しに出ているのだ。

秋の商店街は、日に日に和らいでいく残暑を盛り返すかのように活気に満ちている。

「もう秋だね」

傾きかけた日差し。少々肌寒さを感じる風に晒されて、薄着だった詩乃には少し寒かったようだった。

指を絡めて繋いでいた手はそのままに、少しだけ開いていた距離も詰めて寄り添ってくる。

「そんな薄着だと寒いだろう」

苦笑しつつそう言う俺もかなり薄着だが、多少なりとも鍛えている俺にとって、この程度の寒さはどうってことないのだ。

とはいえ、こんなことになるならば詩乃にかけるために一枚くらい上着を持ってくればよかったか。

「こんなに寒くなるなんて思わなかったから……。それに、せっかく燐に買ってもらった服だし一度は着て一緒に歩きたかったの」

それは先週詩乃と一緒に選んだ服だった。その頃はまだ残暑が厳しく、薄着を選んだのだが……。

「そんなことで風邪を引かれたら逆に困るだろうが。俺のために着てくれるのは嬉しいが無理はするな」

「う、うん……ごめん……」

シュンと俯く詩乃の頭を軽く手の平で二、三度叩く。

「でもその服装、可愛いぞ。月並みな言葉で悪いが似合ってると思う」

「ぅ……そんな不意打ち。反則だって……」

落ち込んだ顔は一瞬で朱に染まる。そして、自分の顔を隠すかのように詩乃は俺の腕に顔を押し付けてきた。

その時、少々冷たい風が吹いたが、恥ずかしさで文字通り熱くなっている詩乃は寒さを感じなかったらしい。

顔を俺の腕に押し付けているため、前が見えない詩乃を少しだけ抱え上げるように歩くこと数メートル。一人のふくよかな女性が近寄ってきた。

「相変わらずあなたたちはラブラブねぇ……若い頃を思い出すわ」

「……うぁ……」

「詩乃はいつまで経っても初なんだから、弄るのはやめてくれないか?」

「いいじゃない。恥ずかしがってる彼女さんは可愛いんだから」

このふくよかな女性は商店街で惣菜屋を営んでいるのだが、人の恋愛事情をネタにからかうのが大好きらしい。

この商店街は良くも悪くも地域密着型で、古い雰囲気を残している場所だ。

交通の便が良く、俺と詩乃は毎週ここで買い物をするのだが、若い客……しかもカップルというのは珍しくらしく、完全に覚えられてしまったらしい。

もちろん、それが悪いことというわけではなく、オマケを付けてもらったりしてもらっているわけだが……。詩乃に取っては災難なことによくからかわれるのだ(俺は慣れた)。

何度からかわれても初な反応を返す詩乃はあっという間に商店街の人気者と化し、可愛がられている。

恥ずかしがる詩乃は可愛いからな。

「とりあえず、買い物があるから」

そう言って女性を追い返すと、詩乃を腕から引き離す。

「相変わらず……詩乃は慣れないんだな」

「だって……燐の彼女になれたのが幸せで……その……嬉しさと恥ずかしさで……。いつまでも忘れたくはないから」

幸せそうにはにかみながらこちらを見上げる詩乃から視線を外し、頬を掻く。

……不意打ちはお互い様だろう。

「……全く、慣れないとこれからもからかわれ続けるぞ?」

「うぅっ……それは困る」

再び恥ずかしそうに顔を真っ赤にする詩乃と連れ立って商店街内を歩く。

八百屋、魚屋、肉屋と回るが行く先々でからかわれ続け、帰りの途につく頃には詩乃はかなりの消耗を強いられていた。

対して俺は上手くあしらっていたので、全く消耗していなかった。それが少々詩乃気に食わなかったようで……

「……燐はなんで平気なの?」

「ん?ああ……まあ、慣れだな。それに詩乃は大切な彼女だ。事実を言われた所で恥ずかしがる所以はない」

……軽くジャブを放ったら、鋭いカウンターをもらって一発KO(真っ赤になって沈黙)した。

実際のところ恥ずかしいのだが、いつものようにポーカーフェイスで抑え込んでいただけだ。いつもの詩乃なら俺のポーカーフェイスを軽く見破ってくるのだが、今回の場合動揺していて見抜けなかったらしい。

「……どうやったら燐の表情を変えれるんだろう……」

俺に手を引かれながら考え込む詩乃。

詩乃と繋いでいる手とは逆の手に提げた買い物袋が邪魔だな。なら。

「詩乃」

「なに……って、きゃ!?」
腕を引っ張って胸元に引き寄せる。

「なら、これくらいの不意打ちはしないとな」

「……だって、人前じゃ恥ずかしいし……」

引き寄せられたことで再び赤くなる詩乃。夕方で人通りが少なくなったとはいえ、それなりに目撃者はいた。ある人は微笑ましそうに。ある人は羨ましそうに。またある人は妬ましそうにこちらを見ていた。

「じゃあ、さっさと帰るか。家じゃないと詩乃は素直になれないみたいだし」

「……バカ……」

結局、詩乃のアパートに到着したのは空が夕焼けで赤く染まり始めた頃だった。

夕飯の支度をし始めるには少々早かったため、ベッドに二人で座って寛いでいると、詩乃が甘えるように擦り寄ってくる。

「相変わらず、周囲の目がないと普通に甘えてくるな。……何と言うか、猫みたいだ」

「普段はなかなか甘えられないから、こんな時位はいいでしょ? 猫みたいなのは……ALOでの影響かな?」

ALOでの詩乃のアバター、シノンは確かに猫型のケットシーだが。現実にまで影響を及ぼすようなものかね……。

そんなことを考えながら俺の胸元に頭を預けている詩乃の柔らかな髪を指で梳く。肩にかかるくらいのショートヘアは何の抵抗も示すことなく指の間を流れていった。

気持ち良さそうに目を細める詩乃の、その猫のような仕種に内心苦笑しつつ、しばらくその行為を継続する。

部屋に響くのは時を刻む時計の音と、外からわずかに聴こえてくる物音。それだけであったが、そんな静謐な空間はけして気まずいようなものではなく、むしろ暖かな日差しの下でひなたぼっこをしているような、心地よさに満ちていた。

「……このままだと寝ちゃいそう」

「別に寝てもいいんだぞ? 夕飯が出来た頃にちゃんと起こすから」

「それも魅力的だけど、燐と料理をしたいから……」

トロンとしていた目を醒ますように詩乃は二、三度瞬きすると俺を見上げて微笑んだ。

「そうか。ならそろそろ支度を始めようか」

壁にかかっている時計を見てちょうど良い時間であった。なので、立ち上がろうとするが詩乃は動こうとしない。

「詩乃?」

不審に思い詩乃の方を見た次の瞬間、俺の首に詩乃の腕が巻き付いてきた。

完全に予想外のその行動に思わず、目を見開き硬直してしまう。

そんな俺の視界に詩乃の顔が近づいて来て……俺の唇に暖かな感触が広がった。

数秒間のキスを終え、唇を離した詩乃は顔を赤くしながらも得意げに微笑むと……。

「……表情が変わったね」

「たく……一本取られたよ」

軽く微笑みながら詩乃の頭を少々強めに撫でる。すると詩乃は嬉しそうに擦り寄ってきた。 
 

 
後書き
http://prcm.jp/album/2rin/pic/37567873?guid=on

URLです。

この話、前書きに書いた通りなべさんの無茶ぶりから始まった企画です。

タップリと砂糖を吐いていただければ幸いです(笑) 
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