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フェアリーテイルの終わり方

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十二幕 これからはずっと一緒だよ
  3幕

 
前書き
 正史世界 の 最強 

 
「認め、ぬ……っこれ以上、オリジンを苦しませるなどっ!」

 クロノスが背後にビットを円状に展開した。また時間を巻き戻すつもりだ。()()()()()()()()()()使()()()|止めるにはどうすればいいか、フェイが逡巡した時だった。


「見苦しいぞ、クロノス」


 降ってきた声に顔を上げる。
 上空に展開している闇色のボールの中で、何かが脈打っている。
 脈打つそれはついにボールを割って、一直線にクロノスに向かい、クロノスに巨大なフリウリ・スピアを突き刺した。

 フリウリ・スピアの持ち主は、骸殻をまとったビズリーだった。

 だが、フェイの意識はそんなことには向かない。フェイはただ呆然と、フリウリ・スピアに磔にされているエルを見つめていた。

「お姉、ちゃ」
「あ……あ……」

 フリウリ・スピアからエルがずり落ちた。フェイはようやく正常な思考を取り戻し、急いで瞬間移動し、エルを抱えてルドガーたちの輪の中に戻った。


「エル――っ」

 フェイに代わりルドガーが、初めて表情で分かるほどの痛みを湛え、エルの小さな体を抱え起こす。

「ルドガー…どう、して…」
「……言っただろう? 一緒に暮らそうって。エルと生きていくって」
「でも…あ、れは…」
「俺は本気だった。だからどこへだって迎えに行くよ。分史世界でもカナンの地でも。約束したから、な」
「…ルドガー…っ」

 強く抱き合う、小さな姉と青年。よかった、と。心の底からよかったと想えた。

 まだクロノスもビズリーも〈審判〉そのものも片付いてはいない。それでも今は何より、ふたりの心が共に在った時に戻れたことが喜ばしくて、フェイも瞳を潤ませた。

「! ぁあ! くうう……っ! あああ゛あ゛っ」
「お姉ちゃんッッ!」

 ルドガーは唇を噛みしめ、フェイにエルを預けた。

 立ち上がるや電光石火、ルドガーの双剣がビズリーへと振り抜かれる。ルドガーの剣閃は常人離れしたスピードでビズリーの急所を攻めているのに、ビズリーは全ての攻撃をいなしてしまった。

「諦めろ。その娘はもう助からん」

 血の通わない声が最後通牒を突きつける。フェイは涙目でビズリーを睨めつけた。

「オリジンに願えば話は別だが」
「ダメ! ……分史世界、っく、消さないと…ルドガーが、消えないように…っ」

 オリジンが叶えるのは一人の、一つの願いだけ。エルを助ける方法、エルの因子化を解く方法は――フェイは残り1で100万に達するカウンタードラムを盗み見た。

「私はあれだけの屍を踏み越えてここに立っているのだ!」

 肩が跳ねた。ビズリーもまた、フェイと同じくカウンタードラムを指さしている。

(わたしが用意したやり方を、きっとお姉ちゃんとルドガーは許さない。それでも。これはわたしにしかできないこと。〈妖精〉で、エルお姉ちゃんの妹の、わたしにしか)

 ビズリーに斬りつけようとするルドガーに、ジュードたちも加勢した。

 フェイのほうにはエリーゼとアルヴィンが来て、エルを一緒に支えてくれた。
 エリーゼが治癒術をエルにかける。時歪の因子(タイムファクター)化自体は消えないが、痛みを和らげるくらいはできるはずだから、と。

 その間にもルドガーたちとビズリーの激闘は続いている。


「貴様の源霊匣(オリジン)とやらも、精霊を道具化するものだろう!」
「危うくそうなるところだった……でも分かったんだ。源霊匣は、精霊との信頼で動く物だって!」
「私が! そんな無駄手間を省いてやろうというのだ!」
「誰かと信頼を築くことが、無駄手間なもんか! ――衝破魔神拳!!」

 ジュードが踏み込み、ビズリーに拳撃をくり出した。
 体格差のハンデを補うために、ミラが後ろから地水火風の術を乱れ打って叶う限りの隙を作っている。ジュードはその中で、吹き上げる風を利用して、休みなくアッパーに繋げた。

「気刃連旋拳!!」
「「魔神連牙斬!!」」

 ジュードの拳と同時に、ルドガーとガイアスの合わせ剣閃がビズリーに直撃した。

「ぬるいわぁッ!!」
「うわっ!」
「きゃあ!」

 ビズリーが巨拳を地面に打ち込み、衝撃波を生み出した。生身の攻撃だというのに、ルドガーたちは立っていることができず、倒れた。
 フェイやエルたちもまた揺れのせいでバランスを崩した。 
 

 
後書き
 はい、クロノス戦が終わっても休む間もなくビズリー戦。これに苦しめられたプレイヤーは絶対いると確信しています。
 そして生身でもビズリーさんはここまでできると思います。 
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