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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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二十三章 幕間劇
  武田家の一日

俺らは寝ていた。ひよ、ころ、詩乃、綾那と一緒にな。この寝ている最中に起こしに来るヤツは野暮だと思うが。

「くー・・・・」←ひよ

「むにゃむにゃ・・・・」←ころ

「・・・・・・」

「もう・・・・こんなに敵、倒しきれないですよ・・・・最高です・・・・」←綾那

「ん・・・・一真、さまぁ・・・・・」←詩乃

「すう・・・・・。起きるのらーーーーーーーーーーーっ!(大声)」

「ん・・・・・?なんだ・・・・・?」

いきなり馬鹿でかい音量での起こされたので、俺はまだ寝ぼけていたけど。他の皆は何事かと思っていたけど、そういえば甲斐の明け六つはこんなにも暗いんだっけ?

「ちょっ、何事ですかっ!」

「敵襲ですの!?」

あ、梅もいたんだったな。

「いつまで寝てるのら!さっさと起きるのら!」

「兎々・・・・。今何時だと思ってんだ!まだ暗いじゃねえかよ!」

何でこんな時間に起こすバカがいるんだ、しかも兎々の格好は完全装備だったけど。

「うぅ・・・・どうしたんですか、兎々さん・・・・」

「ふわぁ・・・・。まだ夜明け前ですよね」

「こんな朝早くから何の用ですか・・・・?それと一真さんの言う通りかと」

「あ、もしかして・・・・・」

「どうしたんだ、ひよ」

「・・・・はい。この間、武田家の皆さんとお話させていただいた時、一日をどう過ごしているのかっていう話になりまして・・・・。ね、ころちゃん」

「うん。・・・・で、機会があったら同行させてもらう事になってたんですが・・・・」

ああ、そういうことね。武田家の一日体験ツアーと言うことなのか?というか、もし拳銃を持ちながら寝ていたら危うく兎々を撃ちそうになったな。ってまさか今日がその体験ツアーの日じゃねえだろうな。

「もしかして、今日ですの・・・・?聞いてませんわよ」

「そんなの日頃の事なんらから、予告なんてないのは当たり前なのら『パシイィィィィィィィィイン』!!!!」

「普通は予告があんだよ、バカモノ!お前らの朝とこちらの朝は違うんじゃ、ボケェ!」

いきなり部屋に向けての早朝バズーカ撃つバラエティーなんてねえぞ!まあまだテレビの全盛期にはバズーカを何発撃った人いたな、名前は言わないけど。

「痛いのら・・・・。と、とにかく、支度を済ませて、さっさと行くのら。お役目はたくさんあるのらよ」

「え、こんな時間からですか!?」

「当たり前なのら。武田家の朝は早いのら!」

「うぅ・・・・お願いした以上はお付き合いせねばなりませんわね。ひよさん、ころさん、支度致しましょう」

「そうですね・・・・。ふぁあ・・・・」

「良かったら、一真様も一緒にってあれ?いない」

「俺は船で寝させてもらう。こんな時間に起こすなんて、武田家の代わりに新羅三郎義光に文句言いながら寝るわ。さらばっ!」

と言いながら、俺は空間切断でトレミーの俺の部屋に繋いでから、新羅三郎義光に文句言いながら寝たけど。昨日の書類仕事で疲れてんだからな、それにひよたちと一緒に寝たいという願いで寝たのだから。そしたら数十分で起こされるなんて思わなかった。武田家の普段の過ごし方なんて興味の欠片もない、現代人は疲労がとても溜まっているんだからな。秘中の秘だろうと、偵察機で見ているんだから。

「織斑一真はいなくなったのら。って我らの家祖に文句言われたら、怒られるのらー」

「一真様はもういないとして、詩乃ちゃんと雫ちゃんはどうする?」

「・・・・・うにゃ・・・・・」

「すみません。私と詩乃はちょっと・・・・」

「では私たちだけで行きましょうか、一真様もどこかで見ているはずですし」

俺は睡眠中でも、意識だけがここに残しておいた。まあ元々この二人は朝が弱いタイプだから、昨日も俺と同じくらい遅くまで作業をしていたようだし。無理させると、体調不良させてしまうから。すると俺意識体に話しかけてくるヤツがいたから誰かと思ったら、武田家の家祖である新羅三郎義光だった。どうやら武田家の代わりに謝りに来たらしいが、武田家は皆朝早いというらしいからと言っていた。

「ふみゅぅ・・・・・」

「詩乃ちゃんも寝てていいよ。私たちだけでやるから、ゆっくりと寝ててね」

「・・・・・・うみゅ」

ひよがそう言うと、再びもそもそと布団に潜り込んだのだった。潜り込んだのは、詩乃の布団ではなく俺の布団だったけどまあいいか。俺は船でゆっくり寝させてもらうし、意識体である俺はそのままひよ達を観察できる。それに今は新羅三郎義光も一緒に観察するそうで。

「一真様はもういないですけど、頭の中から声が聞こえるです!歌夜はどうするですか?」

「わ、私もちょっと勘弁・・・・。昨日、詩乃さんたちを手伝ってて・・・・。うん、一真様の声聞こえるけど、無理するなと仰ってるから」

『そういうことだ。兎々よ、ひよところ、梅と綾那を頼むぞ。それと監視しているからな』

「らいじょうぶなのら。・・・・ろこから声するのら?」

「一真様曰く、頭の中に直接言っているそうですからね。鞠さんは・・・・。はいそうですね、そのまま寝かしましょう」

鞠についても同じく寝かせてやれと言った。鞠はこの騒ぎでもぐっすりと寝ている。殺気があればすぐに起きるだろうが、起こすのは悪いから。ひよたちの支度を済ませるので、俺は兎々について行く。まあ意識体は眠くは無いし、一種の精神体だと思えばいいし。

『ところで、最初は何すんだ?』

「辺りの警邏なのら」

『なるほどね~』

と自然に話しかけているが、他から見れば一人でぶつぶつと話している兎々を見れば不気味だと感じるだろうけど。それで準備を整えたひよ達と一緒に連れられてから、到着した先で待っていたのは武田家のいつものメンツだった。

「おや、良人殿はどうした?『呼んだ~』!!!」

「織斑一真曰く頭の中に直接話しかけているらしいのら、らから見えないけど、すぐ近くにいるのら」

『そういうことだ。俺本体はさっき叩き起こされたので、船に行って寝ている。今の俺は意識体という』

「おはようなんだぜ、旦那。でも頭の中に直接言っているなんて、旦那は人間以上だと思うんだぜ?」

『そりゃそうだろう、粉雪。俺は人間じゃないことを知っているだろうに。それにしても相変わらず朝早いんだな』

「別に話しかけている早くなどないよ。この程度は日課のうちにござる」

「日課・・・・」

「早番とか、そういうわけじゃないんですよね・・・・?」

「こんなのいつもの事だぜ。・・・・でも今日は人数多いから、隊を分けた方が良い気がするんだぜ?」

「隊・・・・?訓練でもするですか?」

「朝の警邏ですよ。この辺りは山がちな地形ですから、この時刻は警備を厳しくしておかないと」

「なるほど。夜討ち朝駆けは武士の習いと言いますものね」

俺にしてみれば迷惑な話だ。それに俺らの船には中勤と夜勤で分けているから、トレミーブリッジでも管制官はブラック・シャーク隊の者がしている。イエローならフェルトやミレイナの仕事だが、トレミーは現在物凄く広いので管制官の席は5個から10個ある。今はブルーなので主な管制官は寝ている。船には索敵レーダーが付いているし、最高は日本全国までは無理だが、甲斐から越後くらいの距離ならば。それと衛星カメラからの監視もしているから。

「なら、適当に分けるといたそう。兎々、付いて来い」

「了解なのら」

「じゃ、あたいはこことだな」

「一真様たち、正確にはひよさん達はどうなさいますか?」

「では私たちは二人ずつ分かれましょうか。一真様は一人ずつに近くにいますから。私は・・・・・」

まあ俺自身はいないから、分けるのも簡単だった。それで山の端も暗い中、進んでいるのは甲府の周囲にそびえる山の中。分けるのはグーパーで分かれたけど、俺もいるとの事なので結局二人と三人になった。

「一見一人ですけど、近くにいるのですわよね。ハニー」

『まあな。別に二人ずつでもよかったんだが、意識体を分身させるのは不可能と知っているからな』

梅だけだが、側にいるかのようについて行くことになった。残りの三人は、別チームの春日と兎々に付いて行くことになったらしい。

『警戒任務だから、見落とすなよ。船でも見ているからな』

「もちろんですわ」

まあ船の夜勤でブリッジに上がっている者にとっては、当たり前の作業なんだが。レーダーに反応がなければいいのだが。見落とすなとは言いながらも、さすが甲斐の騎馬軍団というべきなのか、先行する二人のペースは暗がりでも早かった。梅はついて行くので精一杯だったけど。

「おーい。梅、遅いんだぜー。もっと急がないと、春日たちに負けちゃうぜー?」

「競争じゃないよ、こなちゃん」

『そうだそうだ。大事なのは怪しいヤツがいないか何だからだろ?』

「そりゃまあそうだけど、こんなの歩いてるのと変わんないんだぜ『スパァァァン』ってぇぇぇぇ!旦那は意識体なのに何で痛いんだぜ?」

『武田家と比べるんじゃねえよ。それより心、いつもはこれより早いのか?』

「こなちゃん、一真様の言う通りだよ。そうですね、いつもだとこれより倍くらいでしょうか」

「倍ですの!?」

『まあさすが騎馬軍団というべきというか、なんていうか』

この暗がりでライトも無しで倍のペースなんて、どんだけの速度なんだよ。ライト無しでもせめてGPSは付いていないと走れねえぞ。まあ現代人は明るいからな、ここは戦国時代だから、明かりなんてないし。梅の表情を見ると、茫然としている。まあバイクだったら騎馬軍団より勝るけど、さすがにこの暗闇の中では走りたくない。

「けれど、これだけの速さ・・・・綾那さんはいいとして、ひよさんところさん、大丈夫ですの?」

『相手は春日と兎々だから、加減していないかもなー』

春日と兎々のチームはこれより早いらしいと船から連絡があったが、暴走族並みの速さだそうで。これを取り締る警察官だったら、元暴走族のあの人だったら取り締まりできるかもなー。たぶん今頃しごかれている気がする。ひよたちに風を纏わせておいたからか、風を媒体にして伝わってくる。

「おーい梅ー。って、空から何か降ってくるぜ!」

粉雪が言ったように空から降ってきたのは、トレミー夜勤の真夜だった。それもバイクはゼロだし、腰には拳銃を持っていた。

「誰なんだぜ?」

「初めまして、私の名は真夜と言います。織斑隊長に代わって一緒に行動する事になりました、よろしくお願いしますね」

『俺が呼んどいた。梅だけじゃ、心細いと思ってな。あと真夜も俺の妻の一人だからな、あとはよろしくな。真夜』

「そうなんだぜ?それより真夜は何で何も持っていないんだぜ?」

「持っていますよ。腰に拳銃に短刀を持っています」

真夜の言った通りに、ホルスターにはハンドガンに短刀を反対側の方にあって、あとはゼロにもミサイルや機関銃とかを装備している。

「拳銃って確か『鉄砲のことだ、粉雪』そんなに小さいんだぜ?弓で十分だと思うんだぜ」

「私たちが持っている拳銃は、零距離から中距離まで撃てますし。それにお金かからないから大丈夫ですよ」

そういうことだ。この時代では金は掛かるが俺らのはかからないからな。それにイメージすれば弾が変わるし、装填したあとも変更可能だ。

「そういえば鉄砲で思い出しましたけど、川中島でも随分撃ってましたけど織田家ではそんなに玉薬に余裕があるのですか?」

「川中島は特別ですわ。あの玉薬のほとんどは、長尾家からの持ち出しでしたし」

「あと織斑隊長直属部隊は玉薬なんていらないですからね、一真隊の鉄砲は何とか回せてるとかで。かつかつらしいですよ」

「一真隊で・・・・?織田家ではなくて?」

『鉄砲そのものは揃えてもらっているが、玉薬は基本的にウチの持ち出し。まあ援助はあるみたいだけど』

「玉薬を持ち出しで・・・・」

「ほへぇ・・・・一真隊はお金があるんだぜ・・・・」

『あるというか、俺が創造しているからほとんど金はかからない』

「そうですわね。けど、ここでは玉薬一発分で、どのくらいしますの?」

一発分はいくらかと梅が聞いたので、粉雪は心に聞いた。心は器用に馬を操りながら、一本、二本と細い指を手折っていく。一発だと、だいたい百文するらしいが、現代だといくらなのか正直分からない。真夜もさあ?という感じだったけど。梅はあまりにも想定外だったようで

『なあ梅。ウチの相場聞かれたら、怒られるのか?』

「そうですわね。少し高めに仰いましょうか?」

『うーん、それは難しい事だな。他人に聞かれたらややこしくなりそうだ』

「そうですわね・・・・」

真夜はバイクの音は消している。馬には驚く音だからな、その間に梅にはウチらの相場について話していた。

「どうかなさいましたか?」

「で、旦那達は一発どのくらいで撃ってるんだぜ?」

俺がいるのが分かっているのか、そう言ってきた。まあ真夜はいるけど、あくまで俺の代わりだからな。

『梅』

「そうですわね・・・・・二十文、ほど?」

「「・・・・・・」」

やはりといか、思いっきりドン引きされているな。もうちょい高めに言えばよかったのか!?でも俺と真夜はここの金については知らないし、鉄砲の相場というのは全て梅たちに任せている。

「ど、どこからどんな値段が出て来たんだぜ!?なんで甲斐の方が五倍もするんだぜ!?」

「確かに甲斐は山国ですから、堺の品などは割高になりがちですが・・・・」

「だ、だったら、鉄砲本体は・・・・?」

『黒鮫隊のはタダみたいなもんだから、確か一真隊のは堺で久遠が買ったときは一丁で二十両くらいだった気がする・・・・』

黒鮫隊は弾も銃本体も持ってきたのを使っているし、金は一切かからないけど一真隊はだいたいは知っている。まとめ買いだったらもう少し安くなってたような。

「に、二十両・・・・」

割増なその額だったけど、それでも粉雪たちには相当衝撃プライスのようで。金額を聞いたっきり、リアクションが返ってこなかった。

「そちらではどのくらいしますの?」

「御用商人に命じて買い付けに行かせても、一丁あたり七、八十両は・・・・」

ああなるほどね。まとめ買いでそれぐらいなんだろうけど、尾張と比べて五倍くらいになるらしいな。

「随分しますのね・・・・」

四倍五倍も値段違ったら、鉄砲隊なんて無理な話だな。一真隊の鉄砲二百丁にしたら、どのくらい値段が変わるのだろう?という話になるけど。真夜も尾張からの報告書を読んでいるからか、値段を聞いたらこっちの方が安い方だと思ったそうな。あとはブラック・シャーク隊は、色んな種類の銃火器があるからもしここの時代で考えたらとんでもない値段になると計算したようで。

「っていうか・・・・何でそんなに安く買えるんだぜ」

「堺が近いからだと思いますけれど」

「むむむ・・・・」

「隊長からの報告書にもありましたが、尾張には大きな湊があります。なので、堺からの荷物も陸路より割安で運んでいるからだと」

「近くに大きな湊があるって、便利なんですね・・・・分かってはいましたけど、想像以上でした」

「尾張からだったら、上洛するのも近いんだぜ」

「ですねぇ・・・・」

真夜に梅、粉雪、心でそんな話をしながら辺りを一周して戻ってきたら、東の空から白み始める頃だった。

「ただいまです。一応隊長からきいていますよね?」

「は、はい。お、おかえりなさい・・・・」

「はふぅ・・・・」

真夜たちを迎えてくれたのは、先に戻ってきたらしいけど屍になりかけの様子だったひよ達だった。

「・・・・ひよさん、ころさん。どうなさいましたの?」

「春日と兎々に付いて行けなくて、ぐったりしているだけなのです」

『予想はしていたけど、やっぱりかー』

予想はしていたけど、やはりそうなったそうだ。ひよたち側にももう一人隊員送るべきだったかな?でも今は深夜は寝ていると聞いたから真夜に来させたのだがな。

「ひ、日も出ないうちから朝駆けなんて、無理ですよぅ・・・・」

「私も、いくらなんでも・・・・」

「綾那は頑張ったのですよ!」

「綾那さんは付いていけたんですか?」

「当たり前なのです!」

とか言ってたら、兎々はあれで手加減していたそうで。あのくらいで武田に追いついたら大間違いなんだと。綾那は次は負けないとか言っていたが、真夜が乗るバイクなら負けないだろうなーと思った。バイクは馬より速いからな。綾那は夕霧と下山に行った事あるからなー。それでも相当なスピードだったそうでと、風の精霊が言っていた。

「それで、次は何をするんですか?」

「私は朝ご飯の支度に行ってきます」

心はその支度があるというのなら、もうひと仕事ありそうだな。

「ああ・・・・だったら、私も手伝いますー」

「でしたら、お願いします。一真様から伺っていますが、ころさんは一真隊で二番目に料理上手と聞いております」

「え、ちょっと、一真様・・・・?」

『間違ってないぞー?それに心と勝負したが、結局俺が勝っちまったけど』

「ええ。ですけど、心さんにも勝ったのですか」

「はぅぅ・・・・それは、合っています・・・・」

何か文句言っていたが、一真隊では二番目に料理上手なんだから自信を持てと言っといた。それに心と料理勝負したのは、本当だし。それに今の俺は意識体だから、掴めない状態だから何も手伝う事は出来ないけど。何か納得していないころだったけど、心に連れられて台所に行ったのだった。朝食の支度はあの二人として、次は何をするんだ?と思ったら春日に粉雪が何かを担いでいたけど。大きな背負い籠や鍬や鋤の数々があった。ひよはもう少し休みたいがそれを春日が許さなかったけど。

「ほらほら、一人一本あるんだぜー」

「これで何をするんですの・・・・?」

「何って、畑仕事に決まってるのら」

畑仕事を将がするのかーと思いながら、真夜たちはそれぞれ道具を持ったけど。朝日の元で響き渡るのは元気な声と畑に打ち込む鍬の音だった。

「尾張ではどうだか知らぬが、甲斐では自分の食い扶持くらいは自分で作らねばやっていけぬぞ!しっかり働けー!」

「ひよさん、大丈夫ですか?」

私、真夜はしっかりと鍛錬しているのでこのくらいは平気ですが、ひよさんはフラフラとしていたのでした。隊長は隊長で無人の鍬が土を打ち込んでいた、って隊長ズルいと言いますけど隊長意識体は結構精神を使いますからね。それと風の精霊と地の精霊が隊長を補佐するようにしていました。

「あ、あんまり大丈夫じゃないです・・・・」

「農作業、キツイですか?」

「いえ。畑仕事は子供の頃から慣れているから平気なんですけど・・・・。あれだけ馬に乗った後っていうのがちょっと・・・・」

まあ確かに。あんなスピードで乗った馬からのこれですからね。

「なんだー?尾張の兵はだらしないんだぜ」

「尾張の兵がだらしないんじゃなくて、武田の将が凄すぎるんですよぅ・・・・」

「ま、そんなの当たり前なんだぜ!」

そりゃ比べたら別ってもんよ。ひよはいいんだけど、綾那と梅が心配だったけど。綾那より梅の方が心配でした。梅はやはりというか、こういうのは初めての経験のようだけど、綾那さんは結構やっていますね。しっかりと適応してますけど、隊長の方では既に終わっていたような感じでした。

「ほほう、三河のはなかなか見所があるではないか!」

「綾那も国元じゃ畑を耕してたのです!このくらいどんとこいですよ!おりゃあああああっ!」

「そうかそうか。だが、おぬしはダメだな。そんなへっぴり腰ではおこせる土もおこせんぞ!良人殿はもう終わらせたようだが、いったいどうやってやったのか摩訶不思議でござるな。もっと腰を入れい!」

「ひゃうんっ!」

「鍬を使うのが苦手なら、兎々と一緒に草取りをするれすよ!」

「わ、分かりましたわ・・・・。それとハニー曰く精神体は意外に力を使うそうですわよ、そうでしたわよねハニー?」

『ああ。だから風と地の精霊が補佐してくれている』

「ひよさん何か嫌な予感がするので、梅さんのお手伝いに行ってきてください」

「分かりました。私もそう感じます」

真夜は真夜でやっていたけど、俺もまたやるかーと思いながら鍬を土に打ち込んでいた。草取りも大変だけどこっちより負担は少ない方だと思う、まあ真夜と綾那がやっていれば心配はいらない。とそこで予想通りのことになったがどうやら梅は雑草と大根を間違えたそうで。

「大根も知らない奴なんて初めて見たんだぜ・・・・」

『そりゃそうだろう。梅は畑仕事なんて初めてなんだし、雑草と見分けられないと思うよ』

梅は名家のお嬢様だからなのか、こういうのはだいたいが初めてと思ったから。

「真夜殿。尾張の武人はあれが当たり前なのか?」

「いいえ違います。梅さんは南近江の六角の出なので、尾張の武士とは違います」

「あたいらには当たり前でも、知らない奴は知らない事ってあるんだぜ・・・・」

「いくら武田家でも知らない事もありますでしょうに・・・・。例えば私たちの船とか隊長自身とか・・・・」

梅の勘違いに振り回されていたけど真夜と綾那が凄い勢いで畑を切り開いていた、まあ俺は俺でやっていたよ。風と地の精霊のおかげで、ころと心が朝食を持ってきた頃には真夜と俺以外はクタクタになっていた。まあ真夜は訓練とかでよく身体を動かしていたからな、重い重装備を持ち運びながらの訓練とかな。

『ふうー。さすがに精神体だと結構疲れるな』

「うぅぅ・・・・。ハニー、私、もう限界ですわ・・・・」

「私もですー」

「何だ何だ、だらしないぞお主ら。少しは真夜殿と綾那を見習わんか!」

「む、無理ですよそんなの・・・・」

「綾那さんは見習おうにも、私達とはあまりにも違いすぎるような・・・・。見習うなら真夜さんですわ・・・・」

「わーい!今日のご飯はころが作ったですか!」

「私はお手伝いしただけだよ」

「そんな事ありませんよ。一真様もそうですが、色んな料理のお話が聞けて、とても楽しかったです」

「えへへ・・・・恐縮です。一番は一真様で決定事項ですけどねー」

『当たり前。それに料理好きな嫁は船にも数人はいるぞ』

畑の隅で腰を下ろしていた皆は、ご飯や味噌汁を回して行く。真夜に関しては姉の深夜が作った朝食を食べていた、もちろん俺の空間切断によるもんだけど。パンにサラダとコーヒーだったけど。農作業は大変そうというのが、よく分かった気がした。こちらは自動でやっていたりだし、農作業は農家の人がやる仕事だし。

「ところで、真夜さんのはこちらのご飯とは違う物なのですね」

「ええ。これは私たちでの朝食です。この飲み物は眠気をさっぱりとしてくれるので、朝にはちょうどいいのですよ」

まあ真夜が食っているのは洋食だし、変わった物と見ているのだろうな。梅たちは喉も通らないとか。家の事はそれぞれと言うけど、ホントにそれぞれなんだよなー。俺はひよと梅にあーんをしようとして春日に止められたけど、まさにこの事。妾なのだから、たまにはこうしてあげないとな。

「案外、こういう所が一真隊の強さの秘密なのかもしれませんね」

「食べさせてもらうなんて、甘ったれなのれす」

『兎々には、桃をだったよな?それも甘ったれとでも言うのかな~』

「い、いいのれす!もうあんな屈辱は御免なのれす!」

「ハ、ハニー・・・・」

『はいはい』

おねだりはされるが、こういうのも仕事だと思いながら次の一口を食べさせていく。あと兎々の桃については、俺はしないけど光璃がよくするのを見たことあるのでそう言ってみたけど。

「そうだ。ご飯を食べたらどうするんですか?」

「うむ。今日は用事も落ち着いておるし、昼までひたすら鍛錬だな」

「た、鍛錬・・・・・」

「これからまた身体動かすんですか・・・・?」

「やった!鍛錬なら綾那は大得意なのです!」

「私は特にする事がありませんね。私たちの武器は貴方たちのように刀や槍ではありませんから」

『それではそろそろ俺は戻るとしよう。真夜、俺の代わりだったがありがとな』

と言ったあとに、真夜は空間切断により消えたと思ったら実物の俺登場で心底驚いていたけど。まあ鍛錬ならいつも通りにやっているからな。

「ふむ・・・・」

「どうかしたか?春日」

「いやな。良人殿の兵は噂や報告がないのでな、驚いているところだったが。尾張兵が弱卒というのは噂も報告も聞いてはいたが、まさかこれほどとは。とな」

「うぅぅ・・・・。返す言葉もないです」

「よ、弱いのは私たちだけで、強い人はすっごく強いですよ・・・・」

「ひよ、それ以上言わない方が身のためだぞ」

ひよが言っても墓穴掘るだけだし、尾張兵が弱卒なのは事実だしな。いくら俺が指導をしたところで、弱卒なのは変わりがない。

「一真隊は元々前衛で真正面からぶつかる部隊ではないからな。俺直属部隊は話が別になるけど」

「であれば、一真隊は普段は何をしておるのだ?」

「私たちの一日、ですか?」

「うむ。拙らが山野を駆け回り、身体を鍛えている間、お主らは一体何をしているのか・・・・と思うてな。さすがに良人殿直属部隊は言わんでも分かる」

「そうですね・・・・。一真様直属部隊は知らないですけど、城のお役目をしたり、鉄砲の訓練をしたり、市を回ったり・・・・そのくらいですけど」

「鉄砲?確かに一真隊には鉄砲は多いが、そんな訓練が出来るほど玉薬に余裕があるのか?」

「尾張だと、鉄砲も玉薬も甲斐の四分の一もしないらしいんだぜ」

「何と・・・・・!?」

「だったら、市も色んな物が安かったりするんですか?」

「そうだなー。京や堺の品でも、堺とあんまり値段変わらないと思うからここよりは凄く安いと思うよ」

「へぇ・・・・。堺も京も行った事はありませんけど、さぞかし賑やかなんでしょうね」

「甲府の市とろっちが賑やかれすか!」

ふむ、そう考えるか。まあ京は荒屋が多いけど、堺は結構賑やかだったな。

「うーんとだな、この間に街の神社で縁日があったろ?」

用事で出かけたときに何の騒ぎだと思って行ってみたら神社の祭りだった。どの神社かは知らんが、そこそこ賑やかだった気がする。

「ああ。あれか」

「甲府れも五本の指に入るお祭なのら!」

「そうですね。私もこなちゃんと行きましたけど・・・・今年も人手は多かったですね」

「凄かったんだぜー?あんな賑やかな祭・・・・」

「毎日の市の賑わいが、だいたいあれと同じくらいだったかな」

「・・・・・・」←春日

「・・・・・・」←心

「ろんらけ人が多いんれすか!」

「ちょっとした縁日になると、通りが人で埋まっちゃいますよね」

「・・・・ちょっと想像付かないんだぜ」

「後はこの辺と違う所って言えば、海の魚がたくさん食べられる所でしょうか?」

「海の魚って、干物しか見た事ないれすよ」

「・・・・それは素直に羨ましいんだぜ」

「甲斐は海がありませんからね・・・・。川魚も食べる機会はそれほど多くはありませんし」

「甲斐の川魚も美味しいのは保障しとくよ・・・・。まあ船の連中も海の魚もたくさん食べているし」

そしたら梅が黙ってしまったのでどうした?ところが聞いてみたら、そういえば梅は上洛途中で織田の陣に加わったから、尾張には行ったことないと聞いた。尾張に戻らずに越後に甲斐まで来たからな。綾那もとは言うが、綾那は三河からだから少しは回ったというか寄ったとな。

「らったら兎々たちと同じなのれす」

「堺は何度か行った事がありますけれど・・・・どちらが賑やかですの?」

「そりゃ、堺の方だろうな。清州や美濃よりもずっと賑やかだったし、梅は逆だと思った?」

「ええ、久遠様のお育てになった街ですし・・・・」

「おいおい、まだ上があるんだぜ・・・・・・?」

「待たれよ、良人殿。尾張で人が一杯だというなら、堺ともなると通りが人で溢れてしまうのではないか?」

「うーん、そのぶん、街そのものも大きいからな」

「南蛮のお菓子や珍しい物も、尾張よりずっとずっとたくさんありますしね」

「お菓子・・・・」

「珍しいもの・・・・」

「私たちも一回しか行った事ないですけど、びっくりしっぱなしでした。ですが一真様はあまり驚いていませんでしたけど」

「そりゃそうだろうな。俺がいたところは堺よりも人で溢れるところなんて、たくさんあるんだからな」

「ふむ・・・・世の中はまだまだ広いということか」

「歩き巫女や草からの報告は聞いてたけど、こんなにびっくりしたのは初めてだぜ・・・・」

まあ確かに。渋谷の交差点や秋葉原のところもだけど、歴史の教科書にあった堺は大きな湊町と書かれていたけど実際はもっと大きさだったもんな。

「多分だけど、ザビエル討伐が終えたら、行けると思うよ(俺らの世界だけど)」

「本当れすか!」

「同盟を組めば尾張や美濃との行き来もだいぶ楽になるだろうし、京や堺にも武田家の使者として行く機会でも増えるんじゃないのかな(それはないけど。逆に現代の方だな)」

「一真様!私たちもまた堺に行きたいですっ!また沙紀さんと堺巡りしたいです」

「まあ俺より沙紀と一緒の方がいいだろうな、沙紀は南蛮語が喋れるし」

「でしたら、その時は私が堺の街をご案して差し上げますわ!」

「あたい達も案内して欲しいんだぜ!」

「もちろんですわ。この蒲生忠三郎賦秀にお任せ下さいまし!」

「さて。ならば此度の上洛を成功させるためにも、飯を食い終わったらしっかりと鍛錬だな!」

「分かったのら!」

「おうだぜ!」

「そうですね!」

「任せるのです!」

春日の言葉に元気よく答える武田勢や綾那と対象的に、その言葉に見る見る顔色が変わったのは・・・・。ひよところと梅であった。まあこの後はみっちりと鍛錬をしたけど俺は指導する側なので、武田四天王の鍛錬を見ていたのだった。まあ武田家の上洛というのは、結局しないで俺達の世界にご案内だからな。あとは横文字をみっちりと教えるのが、桃香たちの役目でもある。そこは軍師たちの力と発音については、梅と雫なら何とかなりそうだけど。その桃香たちも現代での言葉や現代の物を教えるために、朱里たちや詠美たちが教えるための教材を作成中だと聞いたのだった。 
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