戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~
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二十三章 幕間劇
小さな笹舟×薫の気持ち
さっきまでは船に戻って機体の調整をしていたりとしていたら、庭に鞠がいたので地上に戻った。本来ならラジコン船をいじっているかもしれないけど、ここは戦国時代だしちょうどいいからそこにあった笹の葉を折って、小さく切れ目を入れる。今は鞠と一緒。
「これをな、こうやるとこうなる」
三つに割った両端を、破らないように上手く組み合わせる・・・・っと。
「完成」
「うわぁ・・・・!一真、凄いの!笹の葉っぱがお舟になったの!」
完成した舟を小さな手のひらに乗せてあげると、鞠はまるで宝物を見るように掲げたり覗きこんだりして、大騒ぎだった。
「まあこういうのは、簡単に出来る事だよ。鞠も作ってみるかな?」
「え?鞠も出来るの?やるやる、笹のお舟、作ってみたいの!」
で、鞠と舟を作っていると、その様子を見ていた者がいたので風の精霊が知らせてくれた。俺は気付かれてない様にして、作っていたけど。
「あ、お兄ちゃん・・・・鞠ちゃん。楽しそうだな・・・・。・・・・でも、二人っきりの時間にお邪魔するのは、良くないよね」
「あ、薫なの!薫ー!」
「え、あ・・・・ひゃ・・・・・っ」
「薫もこっち来るの!一真が葉っぱのお舟の作り方、教えてくれるの!」
薫が静かにこっち見ていたのに、鞠が気付いたのか薫をこっちに来させる。まあ俺は気付いていたけど。
「あの・・・・・いいの?」
「何がなの?薫にも教えてくれるよね?一真」
「まあな。それにそこにいたのは気付いていたが、どうかしたか?薫」
いつもなら楽しそうに鞠と遊んでいる薫だけど、今日は何だかおとなしめだな。まあ鞠は妾だからなのか、二人っきりは邪魔だと思ったのかな。いいの?とは、初めて聞いたけど。
「・・・・ううん。ごめんね」
「にゃ?どうかしたの?」
「え・・・・ほら、あの・・・・・えっと、お母さんの事とか」
「まあそうだな」
駿河は現在薫の母親が乗っ取っているからな、駿河は鞠の故郷だし。
「信虎おばさんの事は関係ないの。あれは鞠が弱かったから、みんなを守れなかっただけなの。だから、光璃や薫が謝る事じゃないの」
「うん・・・・・・。でも、駿河を取り返す時には、薫も絶対協力するからね?」
「うん!お願いするの!」
鞠はもちろんだけど、薫もそんなことは気にしていなかったのように仲良しになったんだな。まあこの先駿河は救えないままになりそうな雰囲気だけど、俺の口からはまだ言えないな。滅んだあとに話すとしようか。でもこのタイミングで薫が駿河の話題をするなんて、何かあったのかな?
「それより薫、葉っぱのお舟、一緒に作るの!一真が作り方を教えてくれるの!」
「葉っぱのお舟・・・・・?」
「その辺に生えていたからな、ちょいちょいっと作ってみた」
笹の葉で作るから笹舟とも言うが、この作り方は知っていた。
「へぇ・・・・ホントに舟の形になっているんだ。すごーい」
「簡単に作れるからな、薫も作ってみる?」
「うん!やってみたい!教えて、お兄ちゃん!」
で、鞠と薫による笹舟講座をしたのだった。そして一緒に作ってみた。
「ふわぁ・・・・。ホントに出来たのー!」
「すごいねぇ・・・・」
「二人とも、綺麗に折れたな」
笹舟とかなんて知っていれば簡単に作れる物だけど、初めて見た物はこの時代にとっても驚くことだ。ただの笹の葉が舟になるんだから。二人とも自分の手で作った笹舟を、空にかざしたり、ひっくり返したりとまじまじと見ている。
「ねえねえ一真!この葉っぱのお舟って、水に浮かぶの?」
「そりゃそうだろうな。上手く流れに乗れば、海まで流れていくよ」
「凄いの!だったら、川に流しに行きたいの!薫、この辺りに海に続いている川ってあるの?」
「海までは遠いけど、大きな川はあるよ」
「じゃあそこに行くの!いいでしょ、一真」
「俺なら構わんが、薫は平気か?」
「薫も平気だよ。お兄ちゃんと鞠ちゃんがいいなら・・・・一緒に行っていい?」
「もちろんなの!薫も一緒に行くの!ほらほら、一真!」
「こらこら。手を引っ張るな、行くからさ!」
そして躑躅ヶ崎館を出た俺達は城下に行っていた。
「えへへー」
「鞠、ニコニコしているな」
笹舟が完成したときも超ご機嫌だったけど、今の鞠は超弩級に上機嫌な感じとなっている。俺の手を握っているからか、しがみ付いていてこれ以上ないほどに楽しそうな笑顔になっていた。
「だって、一真とこうやってお出かけするの、久しぶりなのー!薫とも一緒だし、とっても嬉しいの!」
「そういえば一緒に出掛けるのは久しぶりだなー」
越後にいた頃も時々出かけたりしていたけど、そん時の俺は鞠の保護者と言う感じにはなっていた。ここでは鞠とこうするのはならなかったけど。
「薫ー。川ってどっちなのー?」
「あ、うん。こっちだよ」
「分かったの!一真、行くのー!」
「はいはい、分かったから引っ張るなよー」
「・・・・・・・」
気になることがあるが、それは薫だ。何だかこっちを見ている。
「薫、もしかして手繋ぎたいの?」
「ええっ!」
「一真の言う通りなの。鞠だけが繋いでるのはずるいから、薫も手を繋ぐの。そっちのおてても、寂しいって言っているのー」
「お、お兄ちゃん・・・・?」
「鞠もこう言っているんだから、どうするの?繋ぐなら今の内だぜ?」
「お兄ちゃんは、嫌じゃない?」
「全然。早く繋ごうよ」
「じゃ、じゃあ・・・・」
と言って、渋々だったけど薫は手ではなく、俺の指先をきゅっと掴んでいた。まあさすがに手と手だと恥ずかしいのかなとは思ったけど。
「・・・・・・・」
「えへへー」
鞠は嬉しそうにしていたので、まあいいかと思ったけど。鞠が薫に嬉しい?と聞かれたら、一瞬疑問になったが嬉しそうに見えたのだった。まあ鞠が薫を困らせていたけど、薫は顔を赤く染めている。というか、この状態だと親子にしか見えない気がする。
「ねえねえ一真、何だか美味しそうな匂いがするの!」
「ふむ。確かにそうだな、いい匂いがする。これは団子かな」
匂いを辿って見えてきたのは、焼かれていた餅なのか饅頭なのか良く分からない食べ物だった。
「・・・・これ、おまんじゅう?」
「そうだよ。信州の方でよく食べられてるんだけど、甲斐もあんまりお米が取れないから・・・・中にお漬物とか、野菜とかいろいろ入ってるんだよ」
なるほどな、そういうので代用しているのか。信州の方ではそういう郷土料理があったな。おやきだったかな。
「良い匂いなの・・・・」
食事の時間とは微妙ではあるが、小腹は空いたなと思った。
「この時間はおやつの時間だからか、食べるか?」
「食べたいの!」
「薫は?」
「え?私もいいの?」
「無論だ」
金ならいくらでも持っているし、余ったのは空間にしまってある。というか、この時代用の金として金庫として使っているけど。
「みんなで食べるのー!」
「じゃ、じゃあ・・・・薫も食べたい」
「三つだな!すいませーん。これくださいな」
そして三つ頼んだあとに金を払ったあとに、三つのおやきを貰ってから鞠と薫に渡した。
「はむ・・・・・。おいしいのー!」
で、鞠が美味しいと感想を言ったあとに続くかのように、俺も食べる。確かにこれはこれで美味しいな。
「ふーん、ホントに漬物が入ってるのか」
まあ実際に俺らの時代にもあるからな、そん時も食べたことあるけどまさかこの時代のおやきが食べられるとはな。今の時代と俺達の時代のとは美味さは変わらないけど、焼き立ては美味しいのだった。ご飯の代わりにはなる」
「鞠のはお茄子なの!薫は?」
「薫のは胡桃だよ。甘くて美味しいから、これ好きなんだぁ」
「一真のも薫のも美味しそうなの・・・・」
「だったら、少し交換しようか?」
「うん!じゃあ、一真も鞠の食べて良いの!」
「それじゃさっそく鞠、あーんして」
「あーん。・・・・はむっ」
鞠の口元を開けさせたあとに、そっと口元に差し出すと嬉しそうに食いついた鞠だった。
「お漬物も美味しいの!一真もあーんするの」
「分かったよ、あーん。ふむふむ、味噌で味付けされた茄子はうまいな」
「なのー!薫のも、一口ちょうだいなの」
「え?いいよ。はい」
薫から差し出されたおやきも、鞠の口の中に吸い込まれていき口を閉じた鞠は美味しそうに食べていた。すると俺の時計が光ったので通信機を付けると、トレミーからだった。しかも通信してきたのは、華琳だった。俺らが元々いたところでは食べたことあるけど、この時代のおやきは食べたことがないためにともう一個買って送ってと言われたのでおやきをもう一個買ってから空間に突っ込んで、華琳がいるところに送ったのだった。
「今おやきをもう一個買ってたけど、どこに送ったの?お兄ちゃん」
「ああ。俺の妻の一人がさ、この時代のおやきを食べてみたいと言うんでな。買って妻がいる所に送っておいた」
「妻の一人って、側室?」
「ああ。俺と同じく料理好きでな、そいつの料理も絶品なのさ」
それで、鞠は薫にも分けていたので薫は美味しいと言った。で、送った先の方では華琳や流琉が味見をしていた。そしたら美味しいと評価をもらった、まあ焼き立てなのがポイントなのだろう。そして華琳たちは、トレミー内にいるブラック・シャーク隊の女性隊員たちと一緒に、お菓子作りを始めたらしい。俺らがここに行っていた間に、華琳新作のを作ったんだとね。
「それで、一真は薫からもらわないの?」
「ふぇ?」
「まあ気になるというのは、肯定するけど。いいのかな~?」
鞠は俺の妾だけど、薫は俺の妹という扱いになっているからか。それはいいのかなとさすがの俺でも迷う。
「薫は・・・・いいよ。お兄ちゃんなら、いい」
そう言って、薫は胡桃あんの入ったおやきを差し出してくる。
「・・・・はい。あーん・・・・して?」
「あーん。・・・・ふむふむ、美味しいな。俺と鞠のは漬物だったけど、胡桃の甘さはまるでお菓子か何かだな」
「でしょ?よかった」
「じゃあお返しとして、俺のおやきを一口食べるか?」
「あ・・・・・う、うん。・・・・ん、はむ・・・・・」
承諾したあとに、一口食べさせた俺だったけどいいのかな?まあ妹にこういうのもアリかなと一瞬思ってしまうけど、どうでもいいやと思いながらそうしたのだった」
「うまいか薫?」
「うん。美味しいよ・・・・お兄ちゃん」
「そういえば薫はいつも食べているんだっけ?でもいつもより美味しいだろ?」
「うん。いつも食べているより、美味しく感じるよ」
とまあ、おやきの交換を終えたのでそれぞれの歯型がついたところから食べる俺。そしておやきを食べ終わったのか、鞠は当然のように腕にしがみ付いてくる。
「人通りが多くなったら、手を繋ぐだけにしろよな」
「分かってるのー」
分かっているのかどうかは分からんが、まあいいか。そして自然的に空いた反対側の手には、薫が指をきゅっと握ってくる。でも少し困った顔をする薫であったけど、何かを心配しているようだった。
「薫ー?」
「あ・・・・・・」
「どうかしたか?何だかぼーっとしているけど」
「ううん、何でもないよ」
そうは言っても、薫の表情は晴れないままだ。もしかして指ではなく腕にぎゅーとでもしたいのだろうか。
「薫。何か無理しているだろ?」
「え・・・・・・」
「そうなの。薫は薫の思うようにしたらいいの」
「そうそう。俺や鞠に遠慮しているようでは、俺らにすぐ伝わるからな。だからそんなのしなくていいんだぞ」
「・・・・うん。ありがとう、鞠ちゃん、お兄ちゃん」
やはりというか、気にしている部分はあるんだろうな。こうやるのが恥ずかしいのかもしれないし、何か言いたい事があれば早めに言ってほしいけど待つしかないのかな。
「じゃあ・・・・・いいの?」
「うむ。俺ら相手に遠慮は無縁だ」
「うん・・・・っ。ありがとう、お兄ちゃん!」
「おっと・・・・」
瞬間に手にかかるのは先ほどよりも、重みを感じる。
「・・・・ふふっ。一度、こうしてみたかったんだぁ」
俺の予想通りとなったけど、薫は鞠みたいに俺の腕をぎゅーっとするのがしてみたかったみたいだった。その絵は、まさに恋人同士というより両手に花というのが言葉としてはなっているだろう。
「薫の思うようにしたらいいんだよね?お兄ちゃん!」
「まあな。でもこれくらいで遠慮していたのか?」
「だってお兄ちゃんはお姉ちゃんと鞠ちゃんの恋人で未来の旦那様になるんでしょ。でも薫は違うでしょ?」
「それはそうだけど、薫は俺の妹になるんだろ?」
「うん・・・・」
「だったらそれはもう家族であるから、遠慮なんていらないんだよ。今のところはこうしていいけど、人通りが多くなったら手を繋いでもらいたいけどな」
「一真の言う通りなの。それに薫、さっきよりずっと楽しそうなの!」
鞠の言う通りであって、さっきの曇った表情とは違って今は晴れた表情となっている。まあいいやと思いながら、川を目指す俺らだったがもう少しのようだった。今の薫はいつもの元気いっぱいでいつも通りの薫となったのだった。
「川までもう少しのようだぞー」
「一真、薫、急ぐのー!」
と言いながら俺と薫に鞠は、急ぎ足のように駆け出す俺達。甲府の街を出てから、薫に案内された川を流れていたのは先ほど作った笹舟だ。それも小さな小さな舟、俺らの母艦よりもとても小さな舟が水に浮きながら流れていく様子を見る俺達。
「うわぁ・・・・ホントに流れているの!すごいすごい!」
そしてそれを追いかけて走るのは、小さな鞠でもあった。舟は浮かぶのは知っているように俺らの船も上空にて浮かんでいる状態だ。今は躑躅ヶ崎館の真上にいるけど。
「慌てない様にしろよー」
「分かってるのー!」
「鞠は楽しそうだな」
そう言ったけど側にいるのは、腕にしがみ付いている薫だった。薫も行かなくてもいいのかと聞くけど、今はこうしたいのかここからでも見えるからと言ってぎゅーっとする薫だった。よっぽどこうしたかったのだろうな、まあ俺みたいなのは躑躅ヶ崎館には俺しかいないのだろうよ。薫は笹舟を流したあとはまた腕にしがみ付いている状態となっている。で、薫のされるがままの状態になると川下から鞠が戻ってきたのだった。
「一真ぁ・・・・・・」
「何かあったか、鞠」
何だか明らかに元気をなくした鞠の姿があった。転んだのかなと思い膝を見るが汚れていないから、転んだ訳ではないらしい。
「あのね・・・・。来てほしいの」
そんなしょぼくれた状態の鞠に手を引かれたまま、下流に来てみれば。
「お舟、引っかかっちゃったの・・・・」
「あ、ほんとだ・・・・」
鞠の指差したところを見れば、笹舟は川のところの突き出た岩に引っかかっている状態だった。小さな緑の船体を何度も何度も岩壁にぶつかっているところだった。
「一真、大丈夫?お舟、ちゃんと海まで行ける?」
うーん、川を見れば少し深いところがあると水の精霊が知らせてくれるから入らない方がよさそうだ。
「何か棒か探してくるから、舟を見張ってていいかな?鞠に薫」
二人とも承諾して、薫も腕を離してくれたので俺は街に行くフリをしてから二人を見ていた。そしたら上空から見る事にしたので、風で空を飛んで二人には気付かないようにして風と同化したのだった。俺がいなくなったのか、二人は会話をしていた。
「ねえ・・・・鞠ちゃん」
「どうしたの?」
「今日は・・・・ありがとね」
「にゃ?何が?」
「お兄ちゃんとのこと・・・・色々応援してくれて」
「鞠は何にもしてないの」
「え、でも・・・・」
「鞠は、みんながニコニコしてるのが一番嬉しいの。だから、一真と薫もそうなるようにしただけなの。一番嬉しいのは鞠なんだから、薫はお礼なんて言わなくていいのー」
「そう・・・・なの?」
「薫は一真と一緒にいて、嬉しい?」
「・・・・うん。まだ繋いでた手があったかくて・・・・胸のあたりも、ドキドキしてる」
「うん。一真の手もだけど、翼もあったかくて気持ちいいの。手を繋いでたり、翼を出して包み込まれたら、鞠もほわーってなるの」
「そうだね。すっごく良く分かるけど、お兄ちゃんの翼もそうなの?」
「一真の翼はまさに干したてのお布団みたいなの。それにそれが一番なの。だから、薫も鞠に気を使わないでいいの。信虎おばさんの事とか、一真の事とかで、寂しそうにしてる方がイヤなの」
「そっか・・・・」
「・・・・冷たい?」
「え?何が?」
「鞠ね、駿府にいたころ、そういう言い方をたくさんして・・・・周りの人もどんどん離れていっちゃったの。泰能は最後まで残ってくれたけど・・・・。だから、鞠が冷たい言い方してるって思ったら、言って欲しいの。鞠はよく分からないから、教えてなの」
やはり鞠はそこを気にしていたようだ。鞠はまだまだお勉強が足りない子だから、人心が離れていくのが怖いというふうに感じる。
「そんな事ないよ」
「にゃ・・・・?」
「駿府にいた頃の鞠ちゃんは知らないけど、今の鞠ちゃんは、とっても優しい子だと思う。薫、鞠ちゃんの事大好きだよ」
「一真の事も?」
「え・・・・っ。そ、それは、その・・・・嫌じゃない?」
「なんで?一真を好きな人が増えるのは、鞠、とっても嬉しいの」
まあ鞠にとってはそう言い切れる事だろうけど、ひよ達にとっては恋敵が増えたと嘆くに違いない。
「ほんと・・・・?」
「うんなの」
と言いながら、俺が行ったとされる街の方向に向いていたので、俺は街から戻るようにして走っていた。そんで、棒は見つからなかったけど俺の能力で舟を浮かせてからちゃんと流れていくのを確認した俺と鞠と薫だった。
「ねえねえ、一真」
「何かな?(さっきの会話を聞いてたなんて言えないよな)」
「あのお舟、ちゃんと海まで行けるの?」
この先、河口に辿り着くまではどのくらいの距離なのかを風と水の精霊が教えてくれてから計算をした。まあ普通精霊と話が出来るなんてあり得ないけど、神仏を召喚したり会話をしたりしているからか、この光景を見る者にとっては不思議とは思えないそうだ。まあここにいる鞠と薫には見えないけど。
「鞠が願うのなら、きっと舟に宿ったのが海に行くと思うよ」
「だったら大丈夫なの!頑張ってって、たくさんお願いしたの!」
「ならその願いはきっと叶うよ。この俺が言うんだからな、さてとこのくらいにしてそろそろ帰るか」
「分かったのー!」
鞠や薫も俺が神仏の類だと知っているかのように、そう頷き俺の手にしっかりとしがみ付く。
「あ、あの・・・・お兄ちゃん『遠慮はいらないから、手繋ぐか』・・・・うん!」
もう片方の腕にも、心地よい重みがしっかりと伝わるような気がした。そして躑躅ヶ崎館に帰ってきたのは夕方だった、着いたあとに薫は夕食の支度があるからと言ったら鞠がお手伝いをすると言った。一瞬俺もと言おうとしたが、俺はそのまま部屋に向かったが船での用事を思い出したので船に向かったけど。
「・・・・・・」
「・・・・ふぅ。今日はたくさん、ありがとね。鞠ちゃん」
「えへへ。鞠も薫が嬉しかったら、嬉しいの!薫こそありがとうなの!」
「でも・・・・お姉ちゃんに、何て言えばいいんだろ」
「あ、薫ー」
「お、お姉ちゃん!?」
「どうしたでやがりますか?」
「う、ううん・・・・何でもないよっ。それよりお姉ちゃん達はどうしたの?」
「薫が出かけたって聞いたから、ちょっと迎えに来たでやがりますよ」
「そ、そうなんだ・・・・」
「一真は?」
「え?」
「一緒だったって聞いた」
「う、うん・・・・。お兄ちゃんなら、今別れたから・・・・もうお部屋に帰っていると思うよ?」
「そう・・・・。薫」
「・・・・な、なに?」
「一真のこと・・・・」
「・・・・・・」
「姉上・・・・」
「光璃ちゃん、あのね」
「・・・・・・?」
そこで首を傾げる光璃もかわいいんだがな。
「一真はみんなのものなの」
「うん」
「だから、薫の気持ちも大事にしてあげてほしいの!」
「うん」
「だから・・・・へ?」
ああ、光璃はもう分かっていたようだった。
「薫の幸せは、光璃の幸せ」
「お姉ちゃん・・・・」
「一真も、薫も、二人が笑ってるのがいい」
「光璃ちゃん・・・・」
「薫」
「・・・・はい」
「今度、料理・・・・教えて」
「え?」
「光璃も、一真に笑って欲しい」
「それはいいけど・・・・。お兄ちゃんの方が料理の腕は高いよ?」
「薫に教えてもらった方が良い。・・・・約束」
「あ・・・・・・」
「あ、姉上。待つでやがりますよっ」
「夕霧も同じ」
「え、あ・・・・」
「夕霧の幸せも、光璃の幸せ」
「そ・・・・それは今は関係ないでやがりますー!」
やはりか、薫もだが夕霧もか。武田三姉妹とも俺と・・・・。まあ今はそういう考えはやめよう。
「・・・・行っちゃったの」
「お姉ちゃん・・・・」
「光璃ちゃん、笑ってたの。・・・・良かったね、薫」
「うん。・・・・ありがとう、お姉ちゃん」
その後、薫は鞠と一緒に、夕食の支度をしていたのだったけど。その様子を空から見ていたけど、この事は言わない方が良さそうだなと思いながら華琳のところに行った。そしたらちょうど試食をしていた華琳たち。
「あら、ここに来ていたの」
「まあな。それは新作の菓子か?」
「ええ。ところで、この子達が武田三姉妹?」
「ん?ああ、見ていたのか。そうだ、恋にそっくりなのが歴史上で名のある武田信玄、通称光璃で、隣が武田信繁、通称夕霧で、光璃そっくりなのが武田信廉、通称薫だ」
とまあ映像で見ていたようだが、俺らの拠点に戻ったらデートしたいという華琳。まあ俺としては戻ったらしばらくは空き時間があると思うからと言って、出来たらなと言ってから試食をした。そしてレシピをデータ状にしてから俺のパソコンに入れておいた。華琳が原型なら俺はアレンジを加えてさらに美味しくするのが、最近そうしている。その後にトレミー格納庫から電話が来たので、俺は格納庫に行ってから躑躅ヶ崎館にある部屋に戻ったのだった。
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