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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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二十三章
  若神子城×ザビエルの正体について

「おおおおー!」

「何かあったのか?綾那」

「あ、一真様!」

部隊編成の光景を見ていた綾那が歓声のような声を出していた。

「この城は前にも来たことあるが、何か珍しいもんでもあった?」

前に来たのは諏訪から甲斐まで行って、躑躅ヶ崎館に入る直前だった。そん時はこういう反応はなかったはずだが。

「綾那と兵の割り振りを見ていたのです」

「なるほどな。それは興奮するな」

「兵の取り回しの仕方が三河と全然違うのです。とっても勉強になるです」

「へぇー・・・・。どの辺りが違う?」

何か悩みだした綾那。こういう説明は苦手だったな、綾那は。

「その質問は難しいですよ、一真様」

「そういえばそうだったな。国が違えば、軍の編成の仕方から進退の仕方までが、何もかも違う。こういうのは機密扱いだったな」

「はい。陣太鼓の音一つで、隊をどう動かすか、すぐに気付かれてしまいますから」

「そうだったな。そういえば前に兎々や春日に一真隊の事聞かれたけど、参考にならないって言われたよ。まあ黒鮫隊も同じくだが」

「そうですね。多種多様に出来る部隊など、見た事ありませんから」

綾那からは変と言われるが、詩乃の言う通り何をするか役割というのは決めていない。一真隊はどの役目でも、後ろに(仮)と付くしな。

「色んな事が出来るから、綾那は楽しいですよ。鉄砲よりも槍の出番がもっとあるともっと嬉しいですけど・・・・」

「もう。綾那」

「鬼との戦いならいくらでも戦ってもらうさ」

「綾那にお任せなのです!」

「それにしても凄い数ですね・・・・」

「一万五千とか言ってたな」

というと綾那は久しぶりに見るとか言ってたな。たぶん越前を攻めているときから見ていないんだと思うな。雫は匹敵する兵を一国で集められるのは、脅威としか言いようがないと言っていたが。俺ならそれより簡単に集められる、今まで鬼となる前に無実な魂を夜叉として育てたから、それより多いと思うし。美濃で聞いた限りだと、久遠達も元気でいそうのようだった。あとずっとマークしているエーリカの化けの皮がはがれるのはもう少しだろうな、俺の目で見ると二重に隠しているが表はルイス・エーリカ・フロイスだが、裏では明智光秀としての鎖と魂で一つのモノとして繋がっている。その鎖を取るのが俺の使命なのだろう。そんなことを考えていると、西の空を見ていた。

「・・・・一真様?」

「あの山の向こうには、美濃があるんだなと思ってな」

「ここから北上し、東海道を辿れば美濃まで戻れます。・・・・戻りたいですか?」

「いんや。逆にそっちからこちらに来てくれるだろう。小波いるか?」

「はっ」

「ここだけの話、松平衆は無事に三河に着いたと。桐琴や小夜叉たちのお陰でな、森親子も無事に美濃に着いたと」

と言ったら小波は無言ではあるが、喜び、綾那と歌夜は殿さんが無事で喜んでいたが。ハリセンで静かにと言った。そしてこちらに来る長尾勢の話も一部だけ伝えておいた。それに春日山のことや甲斐のことも久遠達織田勢には伝わっているだろう、それを聞いた久遠の顔を見てみたいが今はこれから始まる戦に集中だ。

「それならそれで、我々は安心して戦いに臨めます」

「それにまだ詩乃たちには保留もある」

「もしかして・・・・ザビエルですか?」

そう口にしたら歌夜の言葉に、詩乃は頷く。

「あれの正体はずっと考えていました。光璃様がなぜ、ザビエルの正体を私たちに話さないのか。その一点が、ずっと気にかかっておりました」

「俺としては、既に答えは出ているが。詩乃は答えは出たかな?」

「一真様も分かっていましたか、ですが。まだ確証はありません」

「意図が分からない、ということですか?」

「意図については見当がつきます。・・・・雫もその点は気付いていているのでしょう?」

「はい。・・・・光璃様は情報開示を限定的にする癖、というか傾向がありますね。例えば駿府屋形の異変や、鞠ちゃんのその後について」

まあ俺らの情報網でも引っかかっていたが、話すことではないと思っていた。信虎が鞠を追い出した件も調べは付いていた。

「事情を知れば、家中に要らぬ動揺が奔る。それを抑えるために、必要な時まで敢えて実情を伝えないというやり方ですが・・・・」

その時機を見定めるのは、慎重であり苦労もある。不発で終わることもある。

「久遠様に繋ぎを取らないこともそれと同じだと?」

「・・・・ザビエルの正体を俺はともかく、お前らが知れば動揺するか?」

「それも大きいでしょう。ですが現状、一番恐れなければならないのは・・・・。我らが正体に気付いたと、ザビエルに気取られることです」

「・・・・なるほど」

そういうことだ。知れば、動きや対応が鈍くなる。内緒にしても。いずれはバレる。人の心は無意識に表に出てくることがある。だったら知らせない方がいいということだ。敵を欺くにはまずは味方というもんだ、まあそういう意味では光璃のやり方は間違っていない。

「んむー、でもでも、なんでザビエルと久遠様が関係するです?ザビエルの正体を綾那は知らないですし、一真様や詩乃が手紙を書いて、久遠様にもこっそり渡すだけなら、綾那は動揺しないです」

「確かに。ザビエルが遠き地に居るのならば、それで問題ないでしょう」

「そうだな。ザビエルが俺らの、もしくは久遠のすぐ近くにいた場合でもか」

「一真隊の中にザビエルの可能性はありませんよ。無論私でも雫でもありません。ザビエルか鬼かまでは知りませんが、一真様の刀に興味を示している」

「・・・・そう考えると確かに一真様の居場所もあまり喧伝するのはまずいかもしれませんね」

「です!大将首の場所が分かると、すっごく攻めやすいです」

「それと同じように、俺らでもこれから向かってくる長尾勢の位置特定をしている。それに久遠が知っていても公にはしないほうがいい」

ザビエルが遠くにいるとは思えない。それはここにいる者達も思う所だ。俺らはザビエルの姿は歴史上の人物として知らされている。越前に攻め入った前後からもザビエルの姿や形はなかった。鬼が出ていた、三好衆に絡んできた。越前が鬼の手に落ちた、砥石城に鬼を連れてきた南蛮人。この情報は確かな情報だ。全てがザビエルの手によるものというのは俺達は持っていない。今もだが。

「砥石城に現れたという南蛮人も、正体は分からぬままですしね・・・・」

「そうだな。弾正がそれらしき南蛮僧を見た、という情報のみ」

「それとて影武者の可能性もあります・・・・」

「それなのに、全ての事象はザビエルやその一味が巻き起こしたものだと、信じ込ませていた。・・・・なぜ?」

「・・・・ザビエルの正体については、まだ言葉に出す訳にはいかない。出すと現実になる可能性がある。今はそんなのを考えるんじゃなくて、今戦うので集中でもしようや」

「そうですね。いらぬ情報を得ると将が動揺しますから」

まあさっきも言ったがザビエルではなく、あいつが全ての元凶だとは知っている。でも今ではなく、この戦のあとに話せばいいことだ。三河の事を気にしていた綾那達にとってはいらぬ情報だったが、顔は先ほどよりも明るくなったからいいか。元凶は久遠の近くにいるがまだ大丈夫だと信じればいいし。 
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