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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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二十二章 幕間劇
  一真隊及び黒鮫隊の指揮系統

「だったら糧食はこれで十分だよね。・・・・後は、武器の補充分も積んでいけるかな」

「厳しいですが、なければどうにもなりませんし。何とか持っていくしかありませんね」

「こんな時、ひよさんがいてくれれば心強いののですが・・・・」

「ひよちゃん?凄いの?」

「たぶん、この量の荷物なら三割は嵩を減らせるかと」

「・・・・えええ。どうやるのそれ!」

「私たちもよく分かりませんが・・・・。色々と工夫があるようです」

「まあ、このくらいの荷物ならひよ抜きでも何とかしましょう。そうでなければ我々の立つ瀬がありません」

「ですね。あとはその武器がどの程度の大きさか確かめないと・・・・」

「うんっ!倉はこっちだよ!」

「分かりました」

「ほう・・・・・」

と三人の会話を聞いていた俺であったが、今やる事を考えながら庭に行くと金属音が聞こえるので行ってみた。

「どおおりゃあああああああああ!」

「ちょいやーーーーーっ!」

やっているのは綾那はだいたい分かるが、相手は夕霧か。

「むぅぅ!なかなかやりやがりますな!」

「当たり前なのですっ!綾那の実力はこんなもんじゃないですよ!」

「だったら次は馬で決着をつけやがりますよ!」

「望むところなのです!今度は負けないですよ!歌夜も来るのです!」

「あ、待ってよ二人とも!」

俺が様子を見ても、二人ともまだまだ甘いなぁーと思いながら見ていた。今度は馬での勝負という事で、厩に行ってしまったがバイクと勝負したら一瞬で勝ってしまうなと俺は思った。馬は生き物でバイクは生き物ではないからなー。でも吉音と銀シャリ号でバイクと走ったら五分五分かもなー。拠点にはいないけど、使い魔として呼べるようにしたな。

「さてと、どーしようかね」

別に船に戻ってもいいのだが、武田家の将についての情報収集があるからな。光璃も心たちと軍議だし、暇を弄ぶ相手いないかなー。

「織斑一真ー!」

と呼ばれたので上を見ると、飛び蹴りを放ってきたを片手一本で受け止める。スピードが乗った一撃だが、それを殺してしまうほどの軽さ。それで受け止めてから適当に投げ返した。相手は兎々だったけど、投げたらすらりと着地して立ち上がった。

「むーっ!まさか受け止められて、逆に投げ返されるとは思わなかったのら!」

「なんだ兎々か」

「やりやがるのえら!完全に不意打ちが決まったと思ったのに・・・・!」

「そんな飛び蹴りなんて、甘い甘い。不意打ちだろうと、気配で分かるのさ」

「むむむ。面妖でうろんな奴なのら!」

うろん?何のことだ。うどんではなさそうだけど、とりあえず分かる奴といえば。

「小波」

「はっ」

「うろんとはどういう意味?」

「うろんとは漢字で表すと胡乱と読みます。意味としては、怪しくて胡散臭い者という意味です。それと先ほどの蹴りを片手で受け止めるとはさすがです」

なるほどな。胡乱とはそういう意味なのか、ん?待てよ。俺が胡散臭い者というのであれば、神仏そのものを胡散臭いと言っているようなもんなのでは?

「ええい、とにかく、まら兎々は織斑一真の事を認めてなんかないのら!ちょいやー!」

「たく。いい加減して欲しいが、ちょうど良かったから受けて立とう。うおりゃーーーー!」

「・・・・まったく。何をしていると思えば」

「これは春日様」

「ああ、構わぬ。お主も一真隊の一員なのだ、そう畏まられるとこちらが気を使う。まったく。拙の話の途中でいきなり飛び出していくから何事かと思えば・・・・」

「何か御訓示を?」

「ああ。次の戦いは今後の武田の趨勢を決めるろ言っても過言ではあるまい。故に、しかと心構えをしておかねばと思っただが・・・・」

「それは確かに・・・・」

「効かんわ効かんわ、小娘!」

「ちぇいやー!」

「ご主人様・・・・」

「心配ない。ちゃんと手加減するさ」

「確かに良人殿は加減をしておる。・・・・兎々は後で説教だが」

とまあ俺と兎々は遊び半分で、組手というか認めるまで勝負をしていたけど。

「・・・・時に小波とやら」

「はっ」

「お主は松平から良人殿の所に出向いておると聞いた」

「はい」

「そのお主から見て、武田の草はどう見る?」

「・・・・問いの意味が分かりかねます」

「言葉通りの意味よ。・・・・草同士の競い合いで、我らに勝てるか?」

「主の命とあらば出し抜く方法も考えますが、正直、正面から当たりたくはありませぬ」

「・・・・それは本心か?」

「我が主は、生き残る事が第一だと自分にお命じになりましたので、しかし私よりも黒鮫隊の方が武田の草より勝っているかと」

「それは良人殿らしいが、どういうことか?武田の草より良人殿の直属部隊の方が勝るとは?」

「例え気配を消していようが、姿を消していようが、ご主人様の部隊の者たちはすぐ見つけてしまうほど厄介な部隊です。それに情報収集も武田より勝っています」

と小波と春日はそう話していたようだが、本当なんだよねー。サーモグラフィーで見つけることもあれば、人を探査できる機器や発信器を付ければどこにいようが分かるようにしてある。と、そろそろこちらとしてはクライマックスになっていた。俺が挑発としてこっちに来いという手で招いて来ては、紙一重で躱す。攻撃はしないで。俺と兎々の身長差はあるが細かい動きは兎々よりも勝っている。

「むーっ。れっかいくせにちょこまかと!」

一度戦ったことがある相手であるのか、徒手空拳で余裕の構えをしている。兎々の動きを読んでいるという感じではある。

「そちらがちょこまかしている奴には言われたくないセリフだな!」

普通なら長期戦だと体力がなくなると思うが、俺は最小限の動いをしているので体力は有り余っている。無駄な動きが多い兎々は、少し疲労しているような感じではある。

「別に桃を出しても構わんが、それだと納得しないから早くかかってこいよ」

「言われたくてもやるのら!」

と真正面から来たので腕を伸ばしてきた兎々の腕を取ってから投げ飛ばした。そこにいたのは春日の目の前だったけど。

「ふう。楽しかったー。春日、兎々の様子はどうなんだー?一応加減をしたのだが?」

「うむ。良い加減をしておる。全く一度負ければ二度負けるとはこの事か」

とまあ俺は春日の方に行くけど、兎々は気絶はしていないがまた負けたのか落ち込んでいた。その前に。

『パシイィィィィィィィィイン!』

とハリセンで兎々を叩いたから、背中と頭にダメージを負った兎々だった。俺が叩く意味を知っている小波と春日に言わなくても分かるけど。

「たく。俺の事を呼び捨てすんなと、何度言えば分かるんだ。で、春日たちは何話してたの?」

「うむ。甲斐の草の話を聞いておったのだ、するとどうだ。武田の草より良人殿の部隊の方が恐ろしいと聞く」

「まあそうか。それより春日も桃食べる?」

「それは頂こうではないか?兎々にはやらんのか」

「俺を呼び捨てにした罰だ。はい、あーん」

「ほう。拙にもして頂けるとは」

「嫌だった?」

「まさか。遠慮なくご相伴にあずかろう。あーん」

春日も、何だかんだで思った以上にノリのいい性格のようで。楽しそうに口を開けてから、俺が切って一口分の桃にかぶりつく。

「春日様!?」

「むぐむぐ・・・・。ほう、悪い気分ではないな。何やら雛鳥にでも戻った気分だ」

「そうか。なら、兎々も食べるか?」

「そんなのいらないのら」

「じゃあ、俺が食べちゃうけどいいのかな?」

「あ、あぅぅ・・・・」

「はい、あーん」

「あ、あーん・・・・むぐむぐ。食べたくなんかないのに・・・・」

「そういう所もまだまだというのだ」

ソッコーで切った桃はまだ残っている。あと食べていないのは、小波だったが断る。だが春日の機転もあってか、ご命令ならというわけでマフラーを緩める小波。

「あ、あーん・・・・・むぐ・・・・」

「美味しい?」

「お・・・・美味しいです・・・・」

またマフラーで顔を隠すがそこが可愛い所だ。

「・・・・で、良人殿。満足したところで、少し良いか?」

「ん?まだ桃食べる?」

「いやまあ、それも頂きたいが・・・・そうではなくてだな。良人殿から見て、我が武田の軍をどう思う?」

「どうとは?騎馬隊か?」

「騎馬軍団は我が武田の誇りなのら!」

「騎馬隊が凄い事は分かっておる。・・・・そうではなくて、我が軍の構造についてだ」

「まあ俺でよければいいけど。そういうの把握はしている」

「その辺りの指南書を兎々がまとめていてな。他国の良い所も少しずつ調べていこうという事になっておる」

「こーよーぐんかんと名付けたのら!」

「こーよーぐんかんねぇ。でも他国の情報は歩き巫女や草が情報を集めているんじゃないの?」

「国の情報は集められるが、中の情報まではなかなか難しくてな・・・・」

なるほど、そういうことか。いくら草であっても中のところまでは調べるのは難しいと思う。

「ご主人様」

「分かっているさ。軍情報は秘中の秘、なんだろ?」

「はっ」

そういうの聞かれたくても分かっているけどね。運用方法のパターンやマニュアルを知れば、逆手を取り補給路を断つ事も可能。奇襲しやすいポイントだってあるし、探すのも楽になる。

「ははは。裏からコソコソ聞くのは性に合わぬゆえ、直接聞いてみたが、やはり無理か」

「そういうのは俺ではないな。だいたい織田家の軍の動きなんて知らないのだから。俺ら黒鮫隊は良く知っているが」

「良人殿は織田の棟梁の恋人ではないのか?」

「恋人ではあるけど、そういうのは全部妾たちがやっているから。俺の仕事は前線での指示くらいだよ、まあ一真隊ぐらいは教えても構わぬが?」

「ご主人様!?」

「知られて困るのであれば、最初から教えないさ。もし知ったとしても武田が強くなるのは敵対しなければの事だし、味方になるのであれば部隊運営の効率を見つける事も可能だが」

「・・・・本気れ言ってるのら?兎々たちも本気れ教えてもらえるなんて思ってないのら」

「本気。そうでないと俺と機密を自分からバラすなどとしないさ」

小波に聞いたら、俺が正しいと思うのならそれでいいと言っているし。

「小波も苦労しているようだが、その一真隊の話を聞かせていただけますかな?」

「では、構成から。大将は俺で、副長は一葉・・・・足利義輝な。今は副長である一葉が本隊を越後で見ている」

「・・・・足利の将軍様が副将っていう時点れ参考にならない気がしてきたのら」

「まあ黙っておれ。これはこれで面白い」

「軍配を取るのが、詩乃で、補佐が雫。この二人は知っているよな?」

「うむ。で、その先は?」

「その先ね・・・・・」

「鉄砲部隊がいるなら鉄砲奉行とか、あとは足軽奉行とか小荷駄奉行とかいるはずなのら!」

「ああそういうのか。そうだな、小波。小荷駄奉行はひよだよな?」

「そうですね」

「・・・・・・・?」

「鉄砲奉行は・・・・誰?」

「恐らく、梅様かと」

「まあそうか。軍配補佐が雫だから、そう考えると梅か。じゃあ足軽奉行はころか・・・・」

「はっ」

「・・・・・・」

「後は・・・・鞠は俺が前線行く時に背中を守る護衛みたいなもんで、・・・・でもそう考えると綾那と歌夜はどこになるんだ?」

「今はころ殿の下に付いていらっしゃいませんでしたか?」

「そういえばそう言ってたような・・・・・」

「待て待て!ちょっと待つのら!」

「何?今考え中なんだが」

「なんれ織斑一真がそこまれ将の配置を知らないのら!おかしいのら!いくら指揮を将に任せているからっていくら何れもむぐむぐ・・・・」

とりあえず桃を兎々の口に放り込んで黙らせた。

「・・・・うむ。今回ばかりは兎々の言う通りである。いくら良人殿が直接指揮を取っている訳ではないとはいえ、そこまで陣ぶれが分からぬものか?しかみ小波まで」

「小波もそうなるほど、こちらは複雑というか。というかだな・・・・・」

「むぐむぐ・・・・というか?」

「そういう役割は、決まっていないんだよ」

兎々と春日は黙ってしまうがこれはマジな事なんだよな。

「黙るのも無理はない。前線の指揮というより一真隊の指揮は梅かころだが、雫や一葉が執るときもあるし、戦闘の途中で入れ替わる事もある。元々皆は何でも出来るから、鉄砲なら鉄砲だけとか固定しない方がやりやすいという事だ」

「・・・・・・むぅ」

「らったら、詩乃が指揮を取ったり、ころっていうのが鉄砲を指揮したりとかあるのら?」

「あるある。普通にな」

むしろそういう何でも出来る将なら、上手く行くし何事も臨機応変だ。俺らのも何でも出来るからな。

「・・・・・参考にならないのら」

「それだけこなせる将の育成にどれだけ手間を掛けているのか、という話だな」

「将はほとんど引き抜き状態だし・・・・。仲間になってくれた時にはそれが出来る状態だったからか、育成はしていないというより勝手に育ったというのが分かりやすい」

レベル的には最早超人状態だったな。よくよく考えると一真隊ってチートな編成だな、ウチは。

「なおさら参考にならないのら」

「・・・・よもや、それが分かっていてこの話を?」

「さすがにそこまでではないが、ちょいと変わった指揮系統と思っていたし」

参考にならないから、言ってもそうなるとは思ったが。

「そんなに変か?正直一真隊も黒鮫隊も同じ感じだが?」

「異能集団にも程があるとしか言いようがござらん」

「時間の無駄らったのら。・・・・こんなの、とてもこーよーぐんかんには載せられないのら」

そりゃそうだろうな。仲間になった時点で出来上がっている部隊なんだから、他のがやろうとしても無駄になる。

「悪いな。織田家の中よりも知らないからな」

「それが良人殿のやり方という事なのだろ。それはそれで面白かった。・・・・さて。桃も食ったし、支度に戻るか」

「うぅ・・・・織斑一真、覚えておくのら『パシイィィィィィイン』うぅぅぅ・・・・」

「だから呼び捨てにすんなと何度言えば分かるんだよ」

「良人殿の言う通りだ。あと兎々、貴様には出陣における心構えを説いていた最中だったな。そちらもしっかりと話しておかねばな」

「あうぅ・・・・そういうのはもう聞き飽きたのら・・・・」

「・・・・一真?」

「ん?どした、光璃」

俺達の元にふらりと姿を見せたのは、光璃だった。手には一抱えのある重箱を抱えているが。

「一真たちこそ」

「お、お屋形様!」

「春日たちと話をしていたのだが、どうかした?」

「兎々と・・・・桃」

そう呟いて開けた重箱から覗くのは、甘い匂いと、一口大に切られた桃だった。

「・・・・・」

あーあ、さっき兎々に散々桃を食わしたからな、お腹一杯でも光璃のお願いは聞くらしい。まあ俺は食べていないけど、あとでお菓子の材料でもらおうかなと思った。小波ももういないし、春日もシレッと立ち去ろうとしている。

「桃は、新鮮」

「それ少しもらっていいか?お菓子作りに必要だから」

と俺も逃げようとしていたけど、お菓子作りはホントだが。兎々はお腹一杯のはずだが、光璃のためならお腹一杯に食べて見せると言ったそうな。兎々、お前は甲斐一のもののふだよ。結局もらった桃以外を食った兎々であったけどお菓子作りのためにわざわざ翼を出してから、桃を持ち飛び去った。そしてトレミーで桜花たちと新鮮な桃を使用したゼリーやケーキを作ったのだった。 
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