美しき異形達
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第二十六話 姉妹の日々その八
「ラノベ読むのさえちょっと意外だな」
「そうなのね」
「ああ、けれど黒蘭ちゃんもラノベ読んで」
「それで漫画も読むのよ」
そのどちらも、というのだ。
「好きな漫画はギャグ漫画よ」
「おいおい、ギャグ漫画かよ」
「どのジャンルの漫画も読むけれど」
その中でも特に、というのだ。
「ギャグ漫画が一番好きね」
「ううん、 何か黒蘭ちゃんって」
「だよな」
裕香の言葉にだ、薊は応えて言った。
「ギャグ漫画読むとかな」
「イメージじゃなかったから」
「そのことにな」
「戸惑ってるのよ」
「意外とは言われるわ」
実際に、と返す黒蘭だった。
「けれど私漫画も描いてるから」
「だからか」
「その資料にもなるから」
「ギャグ、笑いはね」
それはというと。
「人には欠かせないものだから」
「まあそれはな」
「その通りよね」
二人も人間に笑いが必要であることはわかっている、それで黒蘭の今の言葉に確かな声で答えたのだ。
「人間機械じゃないからな」
「感情があるからね」
「だからな」
「笑うことも必要よね」
「さもないとな」
「良くないっていうしね」
「菖蒲ちゃんだって笑うしな」
このことは非常にわかりにくい、何しろ菖蒲はかなり無表情であるからだ。鉄仮面と言われることもある程に。
「あれでな」
「そうよね、菖蒲ちゃんだってね」
「目元と唇だけでな」
「ほんのちょっとだけれどね」
それでもだというのだ。
「笑うからね」
「人間は笑わないとな」
「駄目だしね」
「笑顔を見ることも大事っていうよな」
「そうそう、前授業中に先生が言っていたわよね」
「人は笑顔を向けられないと駄目になるわ」
黒蘭もこう二人に返した。
「事実としてね」
「ああ、やっぱりそうだよな」
「人は笑って笑顔を向けられてこそよね」
「さもないとな」
「何か嫌になるわよね」
「笑顔を向けられない赤ちゃんは死ぬっていうわ」
どれだけ大事にされてもだ、この実験はバルバロッサと呼ばれたフリードリヒ一世が行わせたと言われている。
「それだけでね」
「ううん、笑ってもらわないとか」
「赤ちゃんは死ぬのね」
「自分が大事にされていないと思ってね」
産まれたばかりだがだ、無意識で判断するのだろうか。
「そうして死ぬというわ」
「そうか、じゃあな」
「やっぱり笑顔って必要なのね」
「さもないとな」
「人間は死ぬのね」
「そうなるわ。だから私もね」
黒蘭自身もというのだ。
「笑う為にも。漫画の勉強の為にも」
「ギャグ漫画読むのか」
「そうしてるのね」
「昔のギャグ漫画も好きよ」
今のものだけでなく、だった。
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