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妹みたいで

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第七章


第七章

「幼稚園の頃から一緒だよ」
「幼稚園からか」
「ずっと一緒なのか」
「そうだったのか」
「そうだよ。それで幼稚園の頃からな」
 それだけ昔のことから話をはじめた。
「行き帰りはずっと送っていたな」
「へえ、そうだったのか」
「そんな時からか」
「ずっと送り迎えしてたんだな」
「そうさ、ずっとな」
 またこのことを話す。
「ずっとそうしてるけれどな」
「じゃあやっぱり保護者だよな」
「それだよな」
「どう聞いてもな」
 彼等は話を聞いてこう述べた。そうとしか聞こえなかった。そうしてであった。
 また幸平に顔を向けてだ。彼に対して言うのであった。
「じゃあ草加」
「御前今日もあの娘送るんだよな、やっぱり」
「部活が終わったら」
「ああ、それはな」
 当然といった調子で返す幸平だった。
「そうするさ。バイクもあるしな」
「バイクか」
「御前それで通学してたな」
「確かサイドカーだったな」
「そうさ。それでな」
 それで送り迎えをしているというのである。
「あいつを脇に乗せてな。昔は自転車だったけれどな」
「あの娘を後ろに乗せてか」
「大昔の青春ドラマみたいだな、それじゃあ」
「夕焼けの中でな」
 こんなことも言う彼等だった。話を聞いてそうしたことをついついイメージしてしまったというわけである。学生服姿の幸平とセーラー服の遥も想像してしまった。
 その彼等をイメージしながら。さらに言うのであった。
「やっぱり保護者だよな」
「それもお兄ちゃんか?」
「そういう感じだよな」
「やっぱり俺はそれか」
 話を聞いてまた言う彼だった。
「保護者なのか」
「そう思えるからな」
「話を聞けばな」
「それじゃあそれでいいんじゃないのか?」
「いいのか」
 幸平は今の言葉にふと顔を向けた。
「俺は保護者で」
「と、俺は思うぜ」
 肯定した仲間はまた答えた。答えながら自分の前にある水槽の中のザリガニ達を相手に遊んでいる。餌で釣っているのである。
「それならそれでか」
「そういうものか」
「草加、御前今に満足してるだろ」
 あらためて彼に問うた。
「じゃあそれでいいじゃないか」
「満足しているかか」
「実際にどうなんだ?」
 また彼等に話す。
「満足してるだろ」
「まあ言われてみればな」
 実際にその問いに頷くことになった。自然にだ。
「あいつと一緒にいてな」
「それだったらそれでいいじゃないか」
「そうだな。それだったらな」
 自分でも頷く彼だった。
「それでいいか」
「そうだよ。じゃあ今日の帰りもな」
「ああ」
「送って来い」
 微笑んで彼に言うのだった。そして幸平もまた。素直にその言葉に頷くのだった。
 
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