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妹みたいで

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第六章


第六章

「ザリガニ研究会にいる時だけじゃないか」
「他はいつも一緒にいるよな」
「本当にな」
「まあそうだな」
 彼もそれを認めるのだった。
「これは俺の趣味だしな」
「ザリガニがか」
「それはか」
「それはいいんだな」
「この時位だな」
 自分でも振り返った。
「俺がこの趣味に没頭している間だけだな」
 言いながら水槽の中のザリガニに餌をやる。水槽は幾つもありそのどれにもザリガニ達がいる。砂と水の中で怪獣の如く暴れている。
 幸平はそのザリガニ達に餌をやりながらだ。あらためて言うのであった。
「あいつといないのはな」
「あの娘ザリガニは嫌いなのか?」
「そっちは」
「いや、嫌いじゃない」
 それはないというのである。餌は烏賊であった。
「あいつはザリガニは嫌いじゃないんだ」
「嫌いじゃないのか」
「けれどサークルには入らないんだな」
「あっちはバスケの方が好きだからな」
 幸平はザリガニ達を見ながら話す。
「だからサークルだけはそっちなんだよ」
「けれど帰るのはいつも二人か」
「二人一緒なんだな」
「ああ、それはな」
 それはと返す間もザリガニ達を見ている。
「あいつ一人だと危ないからな」
「危ない?」
「それでか」
「女の子一人の帰り道なんて危ないだろ」
 こう言うのである。
「だからな」
「だからか」
「しかしそれって」
「なあ」
 仲間達は幸平の今の言葉を聞いて顔を見合わせて言い合う。
「保護者みたいだよな」
「何かそういう感じだよな」
「そうだよな」
「保護者!?」
 しかし幸平はそう言われて怪訝な顔になるばかりであった。そうしてこう返すのだった。
「俺があいつの?」
「そうだよ。毎日家まで送ってるんだろ?」
「帰りは」
「行きもな」
 そちらもだという。
「送ってるけれどな」
「じゃあやっぱり保護者だよ」
「なあ」
「話を聞くとな」
 彼等はまたこう言うのだった。
「彼氏っていうよりな」
「保護者だよ」
「そうだよ」
「そうか、俺は保護者なのか」
 幸平はそれを聞いてまた言った。
「何かよくわからないけれどな」
「そういえば御前等って同じ高校だったよな」
「だよな」
「家も近所だったか?」
「そうさ。ついでに言えばな」
 お互いの事情をここで話した。
 
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