| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

妹みたいで

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第八章


第八章

 その日の帰り実際に彼は遥を迎えに来た。学校の門のところにサイドカーをやった。ここが二人のいつもの待ち合わせ場所である。
「来たわね、ザリガニ博士」
「今日もね」
「お熱いことで」
「そんなのじゃないわよ」
 遥は周りにいる同じ部の仲間達に困った顔で返す。
「私達はそんな」
「いやいや、否定しなくても」
「別にやっかんでないし」
「からかってるだけだし」
 皆笑いながら彼女に言うのであった。ザリガニ研究会と同じ流れであった。
「だから気にしないでいいから」
「リラックスリラックス」
「下校は楽しく帰るものよ」
「そんなこと言われたらリラックスできないわよ」
 遥はむっとした顔で彼女達に言い返した。
「私と幸平はね、別にね」
「けれど幼稚園からなんでしょ?」
「家も近くよね」
「同じ丁でしょ?」
 やはり話の流れは幸平のところと同じであった。違うのは話している面々が今回は女であるということだ。それ以外は何も変わっていなかった。
「それだったらね」
「やっぱり」
「幼馴染みだし」
「幼馴染みでもそんな関係じゃないから」
 遥はまた彼女達に言い返した。
「全然」
「まあ彼氏には見えないかな」
「確かにね」
 このことも話される。
「っていうかあれは」
「どっちかっていうと」
「お兄さん?」
「そんな感じよね」
「そう、お兄さんね」
 彼女達の話を横で聞いていた遥はふと気付いた様に言った。
「それもありかしらね」
「ありなの」
「それでいいの」
「何かそれで絵になってるっていうんでしょ?」
 このことを彼女に問う。
「それってつまり」
「まあそうよね」
「絵になってるのはね」
「それは確かね」
 皆遥がそのことを受け入れたのを見てまた言う。
「あんたと草加君ってね」
「恋人同士っていうよりはそっちだし」
「それならそれでいいじゃない」
「そうよね」
「あいつってね」
 ここで顔を少し俯けさせた遥だった。そのうえでの言葉である。
「あれなのよ」
「あれ?」
「あれって?」
「いつも私の傍にいてそれでああだこうだって言って動いて」
 これはいつものことである。それも今だけではないのである。彼女はそのことも話した。
「子供の頃からね」
「縁が深いのね」
「本当に」
「そうよ。だからね」
 遥はさらに言う。
「それもいいかなって。何か幸平には悪いかな」
 少しこうしたことも言葉に出て来た。
「私全然頼りないし」
「ふふふ、向こうもそれが気に入ってるんじゃないの?」
「かえってね」
 皆笑いながらそのことを言う。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧