戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~
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二十二章
今後の策
「それにしても・・・・美空様の意図が気になりますね」
「意図なんてないですよ。ただのノリな気がするです」
「私や沙紀もそう思いますね。きっと満面の笑みを浮かべながら最前線に立っているかと」
「殴り合って、武田の真意を確かめに来たっていう考えなんだって綾那は思うのですよ」
「そうですね。それが一番ありそうな気がします」
「私もそれが一番美空様らしいと思えるんですが・・・・」
「・・・・右に同じです」
多数決ではなく満場一致になりましたか。私や沙紀、小波さんならともかく明らかに年下?なのかは知りませんが綾那たちまで呆れています。
「とりあえず、予想については軍師に聞いた方が手っ取り早いですね」
「私としてはあのお二人も同じ意見な気がします・・・・」
「恐らくは。そう思っているのは隊長も同じかと」
「ただいま帰りましたよ、詩乃さんに雫さん」
「委細、承知しております。が、一真様はまだ帰ってこないのですか?」
と聞かれたので、隊長が今何をしているかについてを話をしました。おとといの夜からの待機任務からの昨日丸一日かけたドウター戦。そして疲れて寝ているとの事も。
「そうでしたか。では、一真様はいずれ来ますとして。現状については?」
「美空様がこちらに軍を率いてくるのを知りましたが、続報は何かありますか?」
「はい。越後勢は国境を目指し、ゆっくりと南下中。目的地は恐らく・・・・」
「・・・・川中島ですね」
当たり前といえば当たり前なのかもしれませんが、その予想に詩乃は小さく首を縦に振りました。
「詩乃さんたちは今回の件、どう見ますか?」
「さて。越後の龍とまで呼ばれる方の真意を見抜く事など、とても出来ませんが・・・・」
「恐らく桜花さんに沙紀さん、それと一真様の読み通りかと」
「ですよね~。美空様の進軍は、いくら何でも早すぎませんか?下手したらこちらの早馬も到着していないはず」
夕霧は、早馬は早くても今日の夕方に戻ってくると言ってましたし。兎々が下山に来た時間と合せて考えれば、早馬は昨日の夜か今朝には甲府に戻ってきているという事になります。それに仮の話ですが、使いの連絡を受けて軍を動かしたというなら、越後の今の状況から見て、たった三日で兵を揃えるなんてことは不可能に近いことです。まあこちらで回復魔法をすればすぐに可能になりますが。
「武田が何かする前に手を打とうと、可及的速やかに後背と戦力を整え、こちらからの連絡を待つことなく出立した・・・・という流れでしょう」
「それに、光璃様の祝言の話は、既に甲信の国中が知る所です。・・・・越後の忍が、その報を急ぎ国元に持ち帰るのは必定かと」
「・・・・そういうことでしたか」
どちらにしても、こうして速攻で仕掛けてくるとは思ってもみませんでしたが。
「ですが、そういう事なら一葉様が止めてくれる・・・・可能性は零ですね。きっと一緒になって盛り上がっている可能性がありますね」
「それは私も思ったわよ、沙紀。あの二人は三日三晩、京の都でゴロツキ共を締め上げて回った仲だと聞くわ。きっと周りの一真隊の連中も止められなかったと思うわ」
「それもそうですね。あまりにも荷が重いと思いますし、それに幽で押さえられたら、京はもっと平和だと思いますね」
あとは梅さんですが、牡丹が狂い咲く様が目に浮かびます。それにあの二人を止められるのはおそらく隊長だけですね。詩乃も雫も無理だと思いますし。
「・・・・仮に我々が残ったとしても、鞠さんの件を予期できたとは思えませんし、せいぜい、ひよさんかころさんに頼んで急の一報を送るのが精一杯だったかと」
「それもそうですね。・・・・困ったお二人です」
それにこちらに軍師が二人いるのは助かったと思いますね。本来なら武田で何かあった用のダブル軍師だと聞いております。
「いずれにしても、美空様が戦を仕掛けた真意が一真様にあるのはほぼ間違いないでしょう。ということは・・・・」
「武田、長尾ともに、退くことは出来ない、だろ。詩乃」
と振り返るとそこには隊長がいました。普段着で、髪は少しボサボサでしたが、隣には結衣がいましたけど。
「一真様。いつお帰りになったのですか?」
「さっきだよ。こちとらもう少し寝たかったのに、結衣の報告を聞いてとりあえず私服に着替えてから来た。状況は把握済みだ。それに恐らくガチでの大合戦となるだろうな。それに駿府の状況も聞いたし」
こちらよりまずは駿府だと思う。一二三の話では組織化しているという話だ。俺は桜花たちのところに座りながら、そう言った。結衣も俺の傍にいるとのこと。今は人間同士で争いをしている場合ではないと俺は思うのだが。だが、やる事は一つだな。
「詩乃!」
「はい」
「・・・・雫!」
「はっ」
「俺がやる事は一つ。美空を止める事だ。何か良い策はないか?」
「そのお言葉をお待ちしておりました」
「私たち妾一同、一真様の願いを叶えるために、全身全霊を持ってお仕え致しましょう」
「はい!」
「です!」
「何なりとお申し付けを!」
「一応言っておくけど、願いを叶えるのはこちら側だけど。今はいいか。頼む。桜花たちもしばらくはここにいてくれ」
『了解です!』
無理難題かもしれないが、俺にはやる事が一つしかないことは分かっている。それでも皆は俺の言葉に強く頷いた。
「まあそうなんですけど。既に雫と桜花さんと話、策も幾つか出しております」
「さすがだな。頼りになる」
「でも、策があっても卒がいないです」
「まあそれを何とかするのが、俺の仕事でもあり。何だったら夜叉を出すけど」
詩乃と雫のダブル軍師でも俺達だけでは出来ることは少ない。だが、こちらには黒鮫隊がいるし神々の者たちもいる。夜叉5千とか呼べば何とかなる。だけど一真隊は越後にいるからこのままだと敵になる可能性がある。
「それとも、私たちで何とかなる策でも・・・・・?」
「小波の句伝無量ですか?」
「それはないな。小波の句伝無量の恐ろしさは知っていると思う」
「なら、自分が闇に紛れて一真隊に直接接触を・・・・?」
「それもない。越後の軒猿は本来、情報収集ではなく忍び狩り専門の部隊。越後側が軍を動かしている以上は、小波を送り込むのはあまりにも危険すぎる。出来れば危険を犯したくもない。ということは詩乃?」
「はい。一真様の予想通り、我らも兵を動かせばの事」
「で、でも・・・・!」
「どうやって・・・・です?」
とそこに思いっきり障子が開いたら薫がいた。
「話を聞かせてもらったよ!お兄ちゃん!」
「よう薫。ここにいるということは聞いていたのか?」
「お兄ちゃん、おとといぶり!その前にお茶を持ってきたよ!」
言いながら、薫が皆の前にお茶を配っていた。俺と結衣の分もあったけど、たぶん桜花から聞いたのであろうな。
「ああ。ありがと」
「では、冷めないうちに頂きましょう
「綾那、ちょうど喉渇いてたですよー!」
「少し休憩をしようか」
「お土産もあったみたいだったから、林檎もむいてきたよ♪」
「ありがとうございます、薫ちゃん」
「さすが。美味しいです」
「えへへ。良かったよー」
林檎といえば沙紀も持っていたが、回収済みだ。今頃船の連中がお菓子でも作っているのでは。
「さてと・・・・」
林檎と茶で腹を満たしたところで、話題を再開させる。
「薫が聞いていたとは?」
「あ・・・・えへへ、悪い子でごめんなさい」
「別に悪い子ではありません。薫さんには、私たちがお願いして来ていただきました」
「ああー。そういうことね」
「お友達に力になるのは当然だよ」
「お友達?」
「はい。沙紀さん達が下山に、一真様は空からの戦闘中に、薫さんからお話がありまして・・・・私と雫と桜花さん、あと小波が」
「小波もなのか」
「は、はぁ・・・・」
「だめ・・・・だった?」
「全然。そういう権限は必要ないし、友達になるのにダメな訳あるか」
薫も武田姉妹の一員で、周りには武田家の家臣ばかりと聞いた。桜花とは歳は離れていても友達になってくれるのなら、それは当然のことだ。心たちも仲がいいが、それは国主の妹と家臣という関係だろうし。
「良かったぁ!」
だからさっきから、薫が詩乃や雫をちゃん付けで呼ぶのか。さすがに桜花にはさん付けのようだけど、当たり前か。ここにいる桜花たちは側室に値するから。小波まで引きこむのは驚きだけど。
「それに、お兄ちゃんが行けば越後勢との戦いを止められるのでしょ?」
「それについてはまだ分からんが、このまま武田勢が川中島で美空たちを迎え撃つのだろ?」
「うん。それは間違いないよ」
「それが止められるというのなら、挑む価値はあるし、もしあいつらが現れたら俺達の出番だ」
「だったら、私はお兄ちゃんに協力するよ。私の隊ならすぐ動かせるし、詩乃ちゃんたちの好きに使ってくれて構わないよ。それにあいつのことはお兄ちゃんたちの隊に任せるからさ」
「薫はそれでいいのか?」
「今は駿府の事が先だし、薫も越後と手を結んで、鬼を退治する方が良いと思うから」
「えー。ずるいですぅー。詩乃ぉ、綾那もお友達になりたいですー」
「だったら・・・・綾那ちゃんも?」
「歌夜も良いです?だったら二人増えるですよ!」
「私は薫さまが構わないのであれば・・・・」
「こちらからもお願いしたいな。出来れば沙紀と結衣もだ。まあ桜花同様だけど、友達になってくれるか?」
「構わないよ!私もそっちの方が嬉しいし、こっちもお願いするところだった!」
で、歌夜と綾那、沙紀と結衣も友人関係になった。そしたら俺達に力を貸す理由が増えたらしい。
「であれば、後は光璃様の説得だけですね」
「それは許してもらうから大丈夫!もし許さないって言われたら、お姉ちゃんに飲むお茶に山葵入れちゃうんだから」
「山葵か・・・・」
山葵入りのお茶は辛そうだな。でもおいしいって言う者もいるだろ。
「お姉ちゃん辛いの苦手だから涙目になっちゃうかも」
「光璃の涙目、か」
それはそれで見てみたいかも。
「薫には迷惑はかかるのでは?」
「大丈夫だよ。薫も、薫が正しいって思ってる事をしてるだけだもん。きっとお姉ちゃんも分かってくれるよ」
「それは有難いな。なら、力を貸してくれ」
「うん!任せて!でも、ホントに詩乃ちゃん達の言ってた通りになったねぇ・・・・」
「この辺りも理解した上での策を進めていたのであろうな」
「申し訳ございません。根回しは早い方が良いかと思いまして」
「別に構わんさ。大方桜花にでも聞いたのであろうよ。それに俺が来るまでの会話はバッチリ聞いてたから」
俺は左耳にあるのを指差しながら言った。良い恋人に恵まれたようだ。だが、本当にいい軍師は拠点にもいるけど。
「では、薫さんの協力がある事を前提として・・・・薫さんの隊の規模はどのようになっていますか?」
「逍遙軒衆は、基本的にお姉ちゃんの影武者を務める部隊だから、あまり数は多くないんだ」
逍遙軒って確かこちらでいうとペンネームみたいな感じかな。それをここでは雅号というらしいけど。
「・・・・して、数にしていかほど?」
「八十人。騎馬が四十、弓が十、槍が十、鉄砲が十。あとは小荷駄とかかな」
「鉄砲が十ですか?」
「一真隊と一真様直属部隊の鉄砲の数が破格というだけですよ。それと比べるのは酷というものです」
「別に比べてなんかないです」
「一真隊とお兄ちゃんの直属部隊ってそんなに鉄砲があったの?」
「一真隊は知らんけど、俺の部隊のは三百ぐらいかな。といっても種類が豊富だから、倍くらいはあるのかな」
「一真隊の運営はこちらで任されておりますからね。一真隊の鉄砲も二百ほどですね。金ヶ崎の退き口で減る予定が、一真様の直属部隊のおかげで犠牲にはなりませんでしたから。一真隊も直属部隊も主力はほぼ鉄砲と言いましょうか」
一真隊はそうでもこちらは少し違う。銃はもちろん狙撃に爆撃、それと地雷を置いたり解除したり、爆弾を投げたりと。あとは対ドウター戦によるMSやISといった兵器も持
っている。
「一真隊と直属部隊を合わせると六百か七百・・・・・・!すごいんだね」
「だから一真隊では綾那達が活躍できなくて、ちょっとだけつまらないです、でも、それが少ないなら綾那の活躍の場も・・・・」」
「騎馬が四十は良いの?」
「ゆ、夕霧と遠乗りもしたから綾那も少しは上手になってるですよ!今度は後れを取ったりしないです!」
とはいえ、八十のうち、機動力が高そうなのは騎馬隊の四十。こちらはバイクを出せば何とかなるし、今船の格納庫には拠点から持ってきたバイクを調達しといた。もしかしたら使うかなと思って。それにバイクもだけど俺は空を飛べるし桜花たちもだけど。
「逍遙軒衆だけで美空の説得に動くのは、少し無理があるな」
「ごめんね、少なくて」
「それでも心強いよ。ありがとな」
「うんっ」
「なら、一真様直属部隊から出しますか?」
「そうしたいし、それに俺にはこいつらもいる。あとは一葉たちの真意を確かめたい」
こいつらとは、半透明になっているが夜叉たちだ。神界から呼んだ。この部屋に入るくらいの数を。八大夜叉大将は残りの夜叉たちにいつでも戦闘態勢をとのことだ。
「鉄砲隊に騎馬で突っ込むです?」
「そんなことするわけないだろ」
俺が知るところでは、対騎馬戦の戦術を組まれてないはず。
「そこは逍遙軒衆の練度次第ですね。武田の騎馬部隊にそれを聞くのも愚問かとは思いますが」
「それは大丈夫だと思うよ。少なくとも、他の騎馬隊に後れを取るようなことはないよ」
「なら、綾那が後れを取らないようにしないとね」
「うぅ・・・・頑張るですよ」
「一真隊は仲間になってくれるの?」
「それは心配していません」
「一真隊ですからね」
「そっか・・・・。二人がそう言うなら、安心かな」
「では逍遙軒衆にて一真隊に接触、味方に取り込んだ後、美空様の本陣に向かって説得に掛かる・・・・という流れでよろしいですか?」
「ああ。あとはこちらの隊との連携もだけど。どうやって美空を説得するかが問題だな」
一真隊に接触して、状況確認してから動くとなるだろうし。黒鮫隊の名を出さないのは、いくら武田でもまだ必要ない事だと思う。いずれ名前を出すけど。
「方針については理解はしている。あとは策に肉付けをするのは詩乃と雫に任せる。いいかな?」
「はい。我ら軍師にお任せを」
この話も二人と薫にとっては決定事項なのだろ。あとは確認みたいな感じだし。詳細は詩乃たちと桜花たちで色々と詰めるんだろうな。
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