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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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二十二章
  夜空×ドウターゲート出現×明け六つでの起床

光璃との祝言から、しばらく時が過ぎた。祝言後の初夜後には光璃は少女から女性になった。まあ行為をしたわけだからであって孕ませようという目的ではない。

「ふぅ~」

俺は船から戻ってきて、躑躅ヶ崎館の城壁の先に見える甲斐の山影だ。まあ空から見れば星空がいっぱいなんだけどね。

「一真様。戻られましたか」

「おう。悪い、寒かったか?」

「いえ・・・・私たちは大丈夫ですが、あまり開けっ放しでいるとお風邪を召されますよ?」

「そうだな・・・・」

「・・・・どうかなさいましたか?」

「いや。なんか平和だなぁ・・・・・とね」

躑躅ヶ崎館では、鬼退治の指示が時々飛んでくるぐらいだし。今の所ドウターが出たという報告もない。ドウターが出るという報告は祝言前で出現はしていないが、そろそろかなと思うくらいだ。この前は詩乃との添い寝が出来なかったからな。初夜のあとの夜に添い寝できたけど。鬼退治の規模は京や金ヶ崎ぐらいではない、下山勢が討ち漏らした残党とか富士山側から現れる別ルートから数匹程度だ。

「そうですね・・・・。尾張にいた頃を思い出します」

ここしばらくは、そんな穏やかな日々が続いている。久遠と一緒に堺や京を走り回っていた頃や、春日山に忍び込んでた頃がまるで童話のような感じだ。

「綾那は長久手を思い出すです」

「そういえば、あの時もこの顔ぶれだったか」

「はい。何だか懐かしいですね」

あの時いたのは雫ではなく鞠だったけど。違いはそれだけだ。

「報告によると皆は元気だと聞くが・・・・」

越後に偵察機を送っているので、報告を聞いているが。今はこんな事をしている場合ではないと思っているが。武田家の現状は、武田の勢力を結集して、駿河の鬼を退治すること。でも果たしてそれが出来る時が来るのかは微妙だ。だが今は力をためるべきなんだろうというのは理解しているつもりだ。

「それは大丈夫だと思いますが・・・・。越後の皆が、その元気を持て余していなければ良いのですが」

「それはありえるな・・・・」

向こうに連絡が届いていればいいのだが、そしたら鞠や他の皆も呼び寄せられるが。あの美空がそう簡単にするかは微妙だ。鬼退治なら一葉や森親子に梅に存分に戦ってもらう事になるだろうし。

「・・・・そろそろ寝ましょう。明日はお早いのではないのですか?」

「そうだったな。夕霧が何か用事があるとか言ってたな」

「今日は一真様の横は綾那たちですよ!」

「分かっていますよ」

そう言いながら、詩乃は持ち回りらしい足側の布団に潜り込む。

「明かり、消しますね」

と言った直後に俺のケータイが鳴った。バイブだけど。俺は布団から出て廊下に出た。

「俺だ。何かあったか?」

『はい。月中基地本部よりスクランブルです。またこちらにゲートが出現すると』

「はあー。何でこちらが添い寝とかしようとすると出るわけ~。しかも寝るときに」

『分かりませんが、来るらしいのでトレミーはコンディションレッドを発動を致しました。なので一真さんもこちらに上がってください』

「分かった。すぐにそちらに向かう。出現したらすぐにMSとISを発進させろ」

『了解です』

と言って切ったケータイをしまった。

「どうかされましたか?」

「ああ。またドウターゲートが出現するとの報告が来た。俺は船に戻る。せっかくの添い寝できるはずが、またお預けのようだ」

と言いながら部屋に戻ってきた俺と詩乃。俺はすぐに寝間着から戦闘服に着替えた。

「何かあったです?」

「まあな。添い寝はまた今度だ。何で添い寝をしようとしたら出るかは知らんが、排除に行ってくる。夕霧には俺は空に上がったと伝えておいてくれ。今回は分身体も俺の代わりのも呼べないから」

「そうなんですか。残念ですが、行ってらっしゃいませ」

「なるべく早く戻ってくるよう善処する。ではな」

といって俺は翼を出してから、外に出た俺。そしてトレミーの格納庫に行ってからブリッジに上がった。

「行っちゃいましたね」

「残念です。でも一真様の仕事ですから、綾那にはできない戦です」

と言いながら寝た綾那たち。俺達が出撃準備をしているとゲートが出現したのは、夕霧が俺らの部屋に来たからだ。

「起きやがりませー!」

と襖を開けた夕霧だったが、一人足りないと思っていた。で、起きたのは歌夜と綾那だったけど。

「なんですか。皆、まだ寝てやがりますか。お寝坊でやがりますね」

「夕霧さんですかぁ・・・・」

「今何時ですか?」

夕霧によって元気よく開け放たれた障子からは、夜の冷たい空気が流れ込んできました。もう一度布団を被り直そうとしたら。

「もう明け六つはとっくに過ぎやがりましたよ!」

ばさりと、布団を力任せに引き剥がされました。

「明け六つ?まだ暗いじゃないですか」

そういえばこの時代の時間は、俺らが持っている時計よりすごく曖昧なのは知っている。時刻を決めるのは時計ではなく、太陽そのものだと聞いた。日が昇ればとにかく明け六つ、日が落ちればとにかく暮れ六つになる。その理屈から言えば、山の端がほんのりと薄明るいくらいだ。俺らで言うと午前4時か5時辺りだと思うが。

「畿内や中部ではどうだか知りやがりませんが、甲斐ではこの刻限がもう明け六つでやがります!」

「そうなのですか・・・・」

「さぁさぁ!起きるでやがる!今日は甲斐を案内する約束でやがります!ところで兄上はどちらへ?」

「んにゅー・・・・一真様なら空に上がったのですぅ・・・・」

「寒い・・・・。そうですね、一真様はあの化け物、ドウターと言いましたっけ。それの退治に行きました」

「だから兄上がいないのでやがりますか。せっかく甲斐を案内しようと思ったのでやがりますが」

「あとで合流するかもと言ってましたですぅ・・・・」

歌夜と綾那は詩乃と雫を起こさない様に部屋を抜け出して、装備を整えた私たちを迎えてくれたのは・・・・。

「おはよう!ってあれ?お兄ちゃんは?」

「一真様ならドウターの退治に行ってくると空に上がりました。ところで皆さんお早いのですね」

「ドウターって、祝言のときに出たあれ?あれが出たってこと?」

「そうなのです。一真様たちの部隊で空からの攻撃に備えるとか言ってたです」

「そうなんだ。それに明け六つ過ぎてるから、そりゃそうだよ」

ふむ。明け六つ基準は武田家にとっては普通なのか。そんな薫が連れているのは、数頭の馬たちだ。

「夕霧ちゃん。馬はこの子たちで良いの?」

「十分でやがりますよ」

「あら・・・・さすがに騎馬の武田と言われるだけあって、どの子も良いお馬さんですね」

「当然でやがります!我らが騎馬軍団を支えるのは、この子たち甲斐の名馬でやがりますよ!」

とか言ってたそうだが、名馬は俺のかもな。金属生命体だし。夕霧の気持ちに答えるように嘶く馬も、武田騎馬隊の誇りをしっかり持っているように見えた。

「馬を替えながら進む早馬なら、越後までだって片道で三日かからんでやがりますよ」

「な、なんですかそれ・・・・!すごいです・・・・」

綾那が驚くのは当然の反応だろうな。俺達がここまで来るのに十日はかかったのだから。でも俺達バイクや車で行くとするなら1日か2日くらいかもな。詩乃たちの体力に合せての旅だったからゆっくりとした旅でもあったな。あーそうそう、なぜ俺が語っているというと盗聴器を仕掛けてもらったからさ。今はトレミーにいて片耳には通信機をはめている。一緒に甲斐を回れないのは残念だけど、会話くらいなら聞きたいしな。

「それでは前に一真様が頼んだ鞠さんを呼び寄せる書状もそれでですか?」

「家中の調整で色々あったでやがりますからな。ついこの間出たばかりでやがりますが・・・・順調なら、もう着いた頃でやがりますよ」

「それは凄いですね・・・・」

目の前の馬は、確かにがっしりとしたもんで持久力もありそう。競馬場だったら1位取れそうくらいだな。特別製の早馬だったら、もっと早いんだと思うけど。名馬は名馬でもバイクには敵わないかもな。機械だし。それと薫から受け取った武器を持った歌夜。綾那はもう持っていた。なんでも光璃の未来の良人になったし、ここしばらくの働きを見る限り大丈夫だろうと、春日たちも言っていたそうな。

「そういえばこの前も、兎々に突っかかられたですよ?」

「兎々は素直じゃないでやがりますからなー。でも、兎々なりに兄上の事は認めてやがると思いやがりますよ?ここにはいない兄上でやがるが」

「だよねぇ。兎々ちゃんはそこが可愛いんだけど」

まあそうかもしれんがな。最近ではやっと扱いが慣れてきたし、ラ行変換もな。突っかかられても結局俺が勝ってしまうし。

「夕霧ちゃん。あとこれ。お弁当だよ」

「いつもすまないでやがりますな」

「別にいいよ。本当は薫も行きたいんだけど・・・・」

「今日は薫様はお仕事ですか?」

「うん。心ちゃんと陣中食をもっと良く出来ないか、考える約束をしてるから」

「乱舞・遊宴・野牧・河狩などに耽り、武具を忘れるべからず。天下戦国の上は、諸事をなげうち、武具の用意肝要たるべし・・・・流石でやがりますな」

甲州法度之次第第20条・・・・光璃が定めた分国法。こんな風に過ごさないとお仕置きだぞ、というルール。

「もちろんだよ」

意味的には遊んでばかりいないで、ちゃんと戦の備えに励めという事だそうだ。この国の法度の一つ。まあ俺もいろいろやっているから、当てはまらないと思うが。

「陣中食ですか。一真様も料理好きなので、きっと知っていると思いますよ」

「そうなんですか?お兄ちゃんが帰ってきたら聞いてみよー」

「それでは、出発しやがりますぞー!」

そして歌夜たちは夕霧に続くように馬に乗り、躑躅ヶ崎館を後にする。

「行ってらっしゃーい!」

夜の空気を切り裂いて、馬はゆっくりとした速さで進んでいく。今のスピードなら寒いが、日が昇れば暖かくなるとか。今のところ俺達の予定スケジュールは、鞠と合流して駿河を取り戻す。そこから越後とも和平を行い、そして久遠達と合流。と予定ではそうだが、生憎そう進むはずはないな。 
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