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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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十九章
  美空たちと合流

一真隊と合流して、数日が過ぎた。調査での疲れはもうなく、それ自体はもういいのだけれど・・・。俺たちはこの前線基地である神社に居座ったままの状態だ。理由はもちろんある。美空たち長尾勢が見つからないことだ。

「まだ見つからないのか」

「申し訳ありません。それこそ、天に昇ったか地に潜ったか・・・・」

美空の消息はつかめていない。こちらでは一応分かってはいるが言わないでいる。言うと小波や物見班の意味がないからだ。それに春日山から離れてないと思うけど、どこに行ったかは不明。なので俺達も動けずにいるわけだ。秋子との繋ぎも取れていないが、一応こちらで補給を受けている。

「小波は悪くないさ。だが、凄いな」

「そうですね。小波さんほどの手練れでも、動向が掴めないとなると・・・・」

「お手上げだな。確か美空の手勢は八千騎と聞いたが」

「実際に八千を丸ごと動かしているとは限りませんが、それでも千や二千はいるでしょうね」

「十分桁外れではあるな」

それだけの人数を動かしているけど、小波に場所を特定されないのは神の加護を受けているからであろうか。神隠しともいうし。

「美空や秋子にも、お守り袋は渡したもんな?」

「はい。秋子様は潜入時の定時連絡にも応じてくださっていましたから、使い方を存じ上げないはずはないのですが・・・・」

こういう時は、相手が出れないのか、居留守を使っているか、出る気がないのかの三択だな。美空の場合は後者二つなんだろうけど。

「次に作戦行動をするときは、小波のお守り袋以外で何とかするか」

「何か策が?」

「あるにはある。今まで言わなかったけど、美空たちに渡したお守り袋には超小型の発信器と盗聴器が仕込んである。発信器に反応があればすぐに船からの連絡で分かるけどな」

「そのようなのをいつの間に!」

「まあ一応な。反応はあるから、一応いるにはいる。あちら側から姿を現さないと、こちらとしては動けないしな」

俺達黒鮫隊は通信機や電話やメールが出来るからいいけど、この時代にはそのような物はない。あるとすれば小波のお家流だけど。あれはオーバーテクノロジークラスだとは思うけどね。あと一葉の三千世界に美空のお家流による護法五神を召喚するとか。

「だがまあ小波がいてくれて助かるからな」

「自分はご主人様のお役に立てる方が嬉しいですので」

「分かっているさ。小波がいなければならない任務とかもある。そのときはたくさん小波の力を借りたい」

「はいっ!では、もう一度調査に出て参ります!」

と言ったら姿を消した小波であった。

「小波ちゃんは、一真様に必要とされるのが嬉しいのですよ」

「そう思われたら光栄に思うな」

小波も毎日忙しくしてるから、たまにはゆっくりしてほしいんだけど。

「いずれにしても、こちらとしても美空様の移動位置を特定できないのは軍師の沽券に関わります」

「そうですね・・・・。偵察隊の調査箇所も、もう一度洗い直しましょう」

「そう言ってくれると助かるな。まあ俺達の技術よりこちらでの偵察隊で見つけてほしいしな。あと時間が経つと情報が劣化していく」

「もちろんです。お任せください」

詩乃達も力強く頷いてくれたけど・・・・。結局、俺達が美空たちの足取りを掴むまで、さらにまる一日を費やすことになった。

「・・・・そう。空と愛菜は無事なのね」

「そうなの!ころが確かめてきたの!」

ころや鞠の報告を聞いて、長い息を吐いた美空は、少しだけ肩の力を抜いたように見えた。

「実際のお姿の確認までは出来ませんでしたが、食事係の兵から話を聞きましたので確実だと思います。少なくとも私が逃げた時点では、お二人ともご無事なようでした」

「二人とも無事でよかったっす!」

「ですが、事態は我々の想像以上に悪化しているようですね・・・・」

「はい。青芋座が魚津に逃げ込んだため、ある程度の情報は御存じかも知れませんが・・・・正直、春日山の状況は想像以上に悪化しています」

「町の人も、みんな元気がなかったの・・・・。城の将にぶつかって無礼打ちにあった女の子とかもいたの」

「春日山の城下がっす?信じられないっす・・・・」

「それは本当の話だ。実際に俺たちの目で無礼打ちをされたからな。まあ無礼打ちをした奴は冥界に送っておいたけどな」

「冥界ってどういうことなの?」

「つまりだ、俺は神界と冥界の神または僕を召喚することが出来るということだ。神界なら例えば護法五神であるこいつらとか、冥界なら死神や魔族とかな」

俺の周りには、護法五神である帝釈天と四天王がいる。今は半透明だけどみんなに見えるようにしてあるけど。

「早く取り戻さないと、もっとひどくなる」

「城内の備蓄もその一覧を見て頂ければ分かるかと思いますが、こちらも十分とは言えません。油などの質も悪く、夜は城内の明かりにも不自由している様子」

「城の中もひどいものね・・・・」

「煤が多くて、部屋の中で使っていると煙たくなってくるんですよ。おかげで障子も所々黒くなっている有様で」

「あれは掃除が大変じゃぞ。こすってもこすっても落ちんと、二条の衆もよくぼやいておった」

「・・・・取り返したら、大掃除」

「まず取り戻さないといけないけどね」

小さく呟いて、長尾衆の諸君は敵の備蓄の記された資料をめくっていく。まあ、掃除もこちらがやるしな。城内一掃してやるくらいにな。

「でも五千も晴景様に付いたっすか・・・・。そっすか」

「三千も付けばいい方って思ってた」

「四千ならぎりぎり倍で済むっすけど。いくら兵の士気が下がってるって言っても、五千は面倒っすよ」

「そうですね。いまだ晴景様の影響は少ない・・・・という事ですか。それに人質も取られている・・・・とならば」

秋子はそこで言葉を切った。負けはしないが、今の手勢で苦戦は免れないだろうな。表情を見れば分かる。

「そうっす!空様と愛菜をどうにかしないと、やっぱり動きが取れないっす!」

「どうする?御大将」

「・・・・今、考えてる」

松葉の問いに、美空は一言だけ口を開いた。だけど、それっきりだけどな。黒鮫隊はいつでも人質救出の準備が出来ている。上からの降下からか下から登るかで、道具の準備をしてもらっている。美空は何を考えているのかは知らんが、人質さえなければ選択肢はいくらでもある。だが、人質がいることで慎重に動かなければならないことは事実だ。

「・・・・御大将」

美空より先に呟いた秋子の表情は、普段の優しそうな表情とは違う。一目見て厳しい表情だと分かった。

「何?」

「空様、そして愛菜を切り捨てる事を提案します」

「な、何言ってるんすか、秋子さん!養子とはいえ、愛菜は秋子さんの娘じゃないっすか!」

「娘でも、越後のために・・・・いいえ、御大将の為にならないのであれば、即座に切り捨てる。それが武士というものではありませんか」

「・・・・言いたい事は分かる。だけど反対」

「反対は受け付けません。・・・・初めから、そうするべきでした。それさえなければ・・・・」

「ダメよ。二人は見捨てない」

「どうしてです!この状況では、未来よりも今を見るべきです!」

「いいえ」

迷いなく答えた美空に秋子はなおも食い下がろうとする。その言葉にも、美空は静かに頭を振るだけだ。

「こういう状況だからこそ、未来を見るべきよ」

「しかし・・・・」

「柘榴も御大将にさんせーっす」

「右に同じ」

「ですが、他に手は!」

「直江与兵衛尉!」

「っ!」

「同じ事を何度も言わせないで。・・・・私は、あの二人を絶対に見捨てない」

「御大将・・・・」

美空は秋子に秋子以上の強い口調で言い放ち、それきり言葉を止めてしまう。美空もそう断言したし、場の意見も助ける方向で固まっている。が、具体案が出ない以上、黙ったまんまだ。これ以上長引いてもしょうがないので、護法五神を召喚させて俺の代わりに美空に進言した。 
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