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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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十八章
  諜報活動最終日×撤退

朝になると、まだ鞠が寝ているときに起きた。起こさない様に起きてから、トレミーに行き、洗顔をしたあとに朝食食べたあとに歯磨きをして戻った。そしてしばらくノーパソで、報告書を見ていると起き出した綾那と鞠。

「おはよーなの!一真」

「おはよう。目は覚めたかい?」

「一真様は起きるのが早いです。さっそく情報を収集するです。昨日のあの子のようなことにならないよに」

「そうなの。鞠もたくさん頑張るの」

「分かったから、顔を洗ってから朝食を食べてこい。そのあと仕事に行くぞ」

と言ってから、顔を洗いに行った二人とも。周りを見ると置手紙があった。小波からだったけど。周辺を見てくるとね。小波やころも頑張っているからな、俺達も頑張らないとな。で、顔を洗ったあと、綾那はというと。

「一真様!綾那、今日の芸は新しい事考えたのです!」

「何?」

「今日はですね・・・・。これを使うですよ!」

猿の着ぐるみに槍捌きねぇ。普通なら中に人が入ってるとかですぐバレるが、この世の人にはバレないのかもしれない。

「いいだろう。今日はそれをやってみせろ。評判悪かったら諦めるんだな」

「やったです!一真様の許可が下りたです!大評判にしてみせるですよ!」

まあ、画期的なのがいいんだと思うけど。で、興業が終わってからの事であった。今日の主役は綾那だったのか、けっこう疲れていたけどな。そのあとは、新作の水から氷にした鳥や物をテレポートさせたりしたけど。鞠は、相変わらず蹴鞠と舞だったけど、舞の方は新作を入れて笛も変えてやってみた。そしたら大評判だったけど。

「はぅ~・・・・疲れたですぅ~・・・・」

「お疲れ様です、綾那様」

夕食を食べてごろりと横になったのは、へろへろになった綾那だった。

「歌夜の代わりに言うが行儀悪いぞ」

「一真様。歌夜、元気にしてるですかね・・・・?」

「明日には帰れるさ。・・・・寂しいか?」

「寂しくはないですけど、こんなに会わないのは何だか変な気持ちです」

「鞠はみんなに会いたいの、楽しみなの、あ!明日は皆のお土産買いたいの!」

「おいおい。遊びに来てるんじゃないんだから」

「えー、ダメなのー?むー・・・・」

今日の調査では、昨日みたいにはならなかったし、興業をする場所を少し変えてみた。すると、昨日来てくれたお客が来たら、昨日までの場所は呪われているのではないかと噂されていると聞いた。あそこでトラブルが起こると、閻魔様と死神を連れて悪しき者の魂ごと喰われるということらしい。その閻魔様というのが俺なんだけどね。

「分かった。・・・・この任務を頑張ってくれたからな、帰る前に少しだけなら許そう」

今日の一番の好評は猿の着ぐるみを着た綾那による演舞だったし。

「わーい!」

「やったのです!」

あのおかげで昼食を食べに行った食堂でも、興業を見ていた色んな人から声をかけられて・・・・沢山の町の声を聞くことが出来た。

「興業でお金もだいぶ稼いだし、町の人に少しでも還元しないとな」

「そうですね・・・・。春日山の町の人たちも、早く元の生活に戻してあげたいのです」

「うん。みんな自分のことも大変なはずなのに、鞠たちのこと、たくさん心配してくれたの・・・・」

そう。そうして話が出来た町の人からの声で一番多かったのは、上に対する不満でも、美空に対する希望でもなく・・・・。『早く町から去った方がいい』という忠告。

「そのような事が・・・・」

別に余所者の俺達を警戒していたわけでもない。美空が治めていた頃はよかったけど、今の状況は凄く酷い状況だ。この先は絶対に戦場になるし、あの武田も、虎視眈々と越後を狙うだろう。旅の一座である俺達にはもっと安全な興業先があるだろうという忠告もあった。

「小波は聞かなかった?」

「はい。美空様への期待や、晴景様への不満は多く聞きましたが・・・・。それは、ご主人様たちが居たからこその声だったのでしょうね」

「だからね。今度は鞠たちが、美空が帰れるお手伝いをするの」

「足軽の人たちも、美空様とは絶対戦いたくないって言ってたですよ」

「だよねぇ・・・・」

初日と同じように、綾那はいつの間にやらご飯を食べに来ていた足軽の人たちと仲良くなって、色々と話を聞いてくれていた。

「越後の龍に対して、自分たちを指揮するのは、良く言えばお人好し、悪く言えば無能な晴景様ですからね。そういう話が出てくるのはむしろ当然でしょう」

「ふむ。辛みの効いた人物評だなぁ。・・・・詩乃辺りの影響か?」

「も、申し訳ありません!」

「はははっ、冗談だよ冗談。だが、実際に戦う兵士の士気がそれだとなぁ」

足下を支える民たちの厭戦気分に、兵の士気がダダ下がり、あとはころの報告。

「ころも、上手くやっているんだよな?」

「はい。昨日の調査の時点では、城内の備蓄米は少なく、武器、玉薬も充分とは到底言えないとのことでした」

「・・・・よく、謀反が成功したの」

「だなー」

金も人望も戦力もない。しかも回りは強敵だらけ。正直そんな状況で謀反が成功したのもすごいが、さらに勢力も保てているのはどうなのだろうか。それだけ、人質になっている空と愛菜という子の影響が大きいって事だろうな。それと・・・・。あと、一応バレたらの話で準備はしてある。逃げる時用に、バイクを4台用意してもらっている。運転手も夜勤の者で暗闇の中でも運転できる者。

「謀反の功の全ては、美空様のご一門、長尾政景殿に帰するものですね」

「凄い人なのかな、その政景っていう人は」

「切れ者と噂の方です。実際、秋子様の守る春日山城を、二千の兵で占拠。そのあと、調略に力を入れて、晴景様の勢力を五千近くにまで膨らませたというのですから」

「五千か。美空の方はどうなっているんだ?」

「秋子様の定時連絡では、八千を集めたところで呼集は打ち切ったとのこと」

「打ち切った?なぜに?」

「なんでも美空様が一番、指揮しやすい兵数が八千らしく、それ以上は不要とのことでした」

「なるほどな。俺直属の部隊も三百だけだが、それ以上増やすということは考えていないな。あと一真隊は確か・・・・」

「同じく三百くらいなの」

「八千三百から六百ね。まあ、黒鮫隊は切り札だから。使うときに使うさ。春日山を占領しているの敵方は五千。定石じゃ、あまり有利とはいえない」

「でもでも、戦は兵数じゃなくて士気なのです!だから負けないと思うのですよ?」

「士気か」

五千の兵も町にいる兵もそんな感じなら、理屈も通じる。現に俺達は、士気を保ちながら鬼と戦ってきたわけだし。兵の数は、兵法の基本っていうし。足りないのであれば軍師が策を考えてくれる。あの時のようにな。

「その判断は、詩乃に任せよう。これでひとまずの情報は集まったと思うし」

「事前の諜報活動としては充分かと。あとはころ殿が城内の諸将の様子を調べてくだっていれば、ほぼ完璧・・・・・」

「この音は?」

「・・・・呼び子、ですね」

「呼び子?」

嫌な予感だけしかしないから、脱出用のバイクと装備をいつでもいいようにした。

「見回り役が仲間を呼ぶために使う物ですが・・・・」

時代劇でよく見るあれか。大通りを御用提灯の列が並んで、屋根の上ではほっかむりをした泥棒が走っていくというのがお決まり。

「ねえねえ。なんかこっちに来てるような気がするの」

「です。どういうことです?」

「あー、もしかして、バレたのか?」

俺が言ったら小波も同じことを考えているようだった。通信機をはめていつでも走らせるようにしておけと言っておいた。

「・・・・綾那、鞠、すぐに準備をしろ。すぐに出発をする!」

「ほえ?明日の朝じゃないの?」

「早くしろ!」

「あ、もしかして、ころが・・・・・」

「お、お頭ぁー!しくじっちゃいましたー!」

「こうなることは分かっていた。すぐに逃げるぞ!」

「は、はいっ!」

「小波、先導を頼むぞ。俺は後ろで何とかする、厩のところに黒鮫隊の者が待機しているから。それに乗って脱出しろ!」

「わかったの!一真も気をつけてなの!」

といって、得物を持ち出したあとに、宿の階段を駆け下りて、その奥にある厩へと向かう。辿り着いた宿の裏には、俺が手配した逃走用のバイクだ。それと運転する者がそこにいたけど。到着する前に空間で行かせて待機させてた。

「小波は先導を頼む、運転手に言ってから逃げろ。その後ろに綾那と鞠、ころの順で発進させるが、俺の事は気にするな。黒鮫隊の諸君はしっかりと拠点まで送り届けろ!」

『了解です!』

運転手の後ろに座り、バイクを急発進させた。いきなりの事ではあったが、通りに飛び出した俺達を追うように、通りのあちこちから赤い提灯が現れる。俺のもバイクにしてから急発進。

「居たぞ!出会え出会えー!」

「このまま突っ切ることはできますか?」

「任せな嬢ちゃん!」

俺達を取り押さえようと駆け寄って来る者たちに向かって、機関銃を撃った。そして一気に加速した。

「な、なんだこれは!!!」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁ。痛い痛いよー」

機関銃で撃たれた者たちは次々と倒れて行く中走り去っていく俺ら。こちらはバイクであちらは徒歩。
暗がりの中で鉄砲を撃たれたらたまったもんじゃないし、バイクのライトがあまりにも眩しすぎて見えない状態だし。

「お前らも行けー!」

「はい!運転手さんお願いします!」

「任せろー!」

敵方の数は圧倒だが、こちらはバイクだ。いくら馬でも追いつけられないだろうし。このまま行けば春日山を楽に抜けられるだろうさ。

「俺はここで殿をする。皆は拠点まで下がれ」

「え!?いいんですか、お頭?」

「お前たちを逃がすためにもな。それに俺はあんなクズどもには負けはしないしな」

「一真!約束なの。ちゃんと帰るって!」

「約束だ。絶対にな!」

そして、小波たちは俺を殿にして、全力でバイクを走らせる。

「逃がすなー!」

「あそこに賊の一味が!」

「あ、あれは神様?」

こいつらが来る前に、大天使化にして、バイクは空間に入れておいた。

「ここから先は我が食い止める。いでよ、我の僕たちよ!」

といって、召喚したのは十羅刹女、鬼子母神、八大夜叉大将と夜叉5千。

『今回は足止めですか?主様』

「そうだ。こいつらを止めよ、殺してはならん。が、罪のない者を切捨御免をした者たちでもある。急所を狙え」

「ええい!神だろうが何だろうが、間者ならば容赦はするな!刃向うようなら斬っても構わん!」

『おやおや。主様を斬ることはこの我らが許しません』

『主様を守るのだ。夜叉どもよ!』

「遠慮はするな、行けー!!!」

と言いつつも、鬼神たちは急所を狙いながら、狩りに入った。夜叉たちも、小さな命を消した罪は重いと言いながら吶喊して行った。斬り漏らしたのは、我がライフルで腕や脚を撃って行く。とそこへ、トレミーからの情報で小波たちは無事に拠点に辿り着いたとのこと。ということで、大量の催涙弾を発射してから、空間にあるバイクを出してから、僕たちを神界に返した。そして、催涙弾が投下中に俺は走り去った。

神社の隅に腰を下ろしていた沙紀は、隊長を待っていた。そしたらころがきた。

「沙紀さん」

「ころさんですか、まずは報告を聞きましょう」

「先程終わりました。今は詩乃ちゃんたちが検討に入っていますが・・・・まだここで待っているのですか。一真様の事を」

「はい。それが私の仕事ですから」

アレックス達からの通信で、私が派遣されました。そして、バイクと隊員は空間の中に入って行きました。トレミーの格納庫に。小波さんがここに到着されてから随分と時間が経過しましたが、隊長は戻ってきてはいません。バイクなら、それほどかからないはずですが。

「すみません。私のせいで・・・・」

「気にしないでください。殿は隊長が望んだこと、それに聞いたところによりますが、女神たちは怒っていたと聞いております。無礼打ちで罪のない者を切り捨てたことで」

「そうだったのですか。だから、一真様は自ら殿を望んだのですね」

と小さく頷き、ころさんは私の隣へと腰を下ろします。

「一真様は大丈夫でしょうか?」

「あんな雑魚に遅れを取るほど弱くありません。で、鞠さんたちは?」

「鞠ちゃんと綾那ちゃんはもう寝てしまいました。小波ちゃんは一真様を探しに」

「そうですか・・・・」

と反応があるとトレミーから来ましたね。恐らくもうすぐここに来るはずです。綾那さん達はらしいといえばらしいですかね。私たちがここに到着した後、一葉様や桐琴さんも隊長の事を心配してる様子はありませんでしたね。それはきっと、隊長の実力を知ってるからでしょうね。

「沙紀さん」

「分かっています」

今回の調査はこちらでもやりましたが、こちらも極秘任務でした。城の構造やどこに何がいるかまでを把握しましたし。隊長を回収するのは、私たちの仕事でもありますから。一真隊が出る役目ではありません。おそらくですが、向こうは隊長たちの事を景虎派の間者か城に盗みに入った賊だと思ったのかと。そうさせるためにも、一葉様たちに援護は要請しませんでしたし。おっと反応が近いですね、たぶんエンジン音を無音状態にしてるのでしょう。

「ころさんもそろそろ休んでください。疲れていますでしょう?」

「ですが、『疲れていると顔に出てますよ。年長者の指示に従いなさい』はい」

といって、ころさんは歩いていった。おそらく寝るところに。で、しばらくしたら、バイクのライトが見えたので、隊長が戻ってきたようだった。隊長のところに行くと、敬礼をしたあとに思わず抱き着いてしまいました。そのあと報告を聞いたあとに、私はトレミーに戻りました。

朝になってから、沙紀がいたところで寝ていた。そして起きたらころと鞠がいた。

「あ、一真。おはようなの!」

「一真様!改めてですが、お帰りなさい」

「おう。ただいまだ。ころが寝たあとに戻ってきた」

で、そのときの状況を話したら、やはりあの女の子のことで怒っていた神様がいたのですねと言っていた。だから、俺が殿となって、怒りの分だけで戦った。急所を外してだけどな。

「あ、一真様なのです!」

「おう、帰ったぞ」

「綾那心配したですが、実力を知ってたのですが、まだ帰っていないのであれば神様にお祈りをしようかと」

「おいおい。目の前にいるだろうに」

と言ったら笑い出したけどね。仇も取ったしな。

「そうだ!一真」

「ん?」

「あのね、一真がここの神社に居る神様にお願いしてほしいの。あの子が、もう痛くなくて、きれいなところに行けるように」

そう言って取り出したのは、表の文字も判別できないような擦り切れたびた銭だった。

「それはいいが、その金は・・・・」

忘れもしない、あの女の子が手渡してくれた、鞠の宝物のはずだ。

「あの子がくれたお金だから、あの子のために使うのが一番なの」

「そうか。では、我の声を聞いて参上されたし、ここの神社の主よ」

といって参上したのは、綺麗な神であった。例え無人の神社でも主までは死んではいない。

「綾那もお祈りするです」

「私も」

「自分もよろしいでしょうか・・・・」

「うん!」

鞠は優しく微笑んで、あの子からもらったびた銭を賽銭箱に入れた。我とここの主である神と共にこの者たちの祈りをあの女の子の魂に捧げた。この神社を発って、四日目の朝。我と小波、ころ、綾那、鞠。俺たち全員揃って春日山での諜報活動を終えて、無事に戻ってくることができたな。 
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