戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~
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十八章 幕間劇
ころの任務内容
「こうすると、射線がこう通るでしょー?」
「まあ確かにたくさん撃った方がよろしいですが、正解な精密射撃の方がよろしくてよ。黒鮫隊の方に真似ることはできませんので」
「そうだよねー。お兄ちゃんたちの部隊はお金もかからないし、弾を装填しなくてもいいようになっている。雀とお姉ちゃんはいつも不思議だよー」
「・・・・(コクン)」
「烏さんもそう仰いますね。ですが、黒鮫隊の持つ鉄砲とは違いますから、真似るのはよろしくないかと」
鉄砲については問題なさそうだな。一時は俺の昼食代とか言っていたが、それは無しでいいからと言っておいた。ここは問題なさそうだなと思いながら、さっきから金属音が鳴っているところに行くと。
「行くのーっ!てぇーーーーーーーーいっ!」
「そのくらいで綾那が抜けるなんて、甘い考えなのですっ!でやああああああああっ!」
「だったら、ワシの一撃を受けてみな、ガキども!」
「じゃあ、こっちはどうだ!」
なんか2対2ののような気がするが、1対1なのかな。邪魔させないように他行くか。
「・・・・幽」
「何でございましょう?」
「鞠たちがどうやら修練をしているようだが」
「そのようですな」
「余も・・・・・」
「この報告書の束に目を通して頂ければ、いつでも行って頂いて結構ですよ」
「・・・・これは幽の仕事であろ?」
「実践するのはそれがしの役目ですが、承諾は公方様のお仕事だと何度ご説明すればお分かり頂けますかな」
ここは幽に任せた方がよかろう、ここで見つかると手伝えと一葉に言われてしまいそうだしな。で、今腰を下ろしているのは、陣から少し離れた丘の上だ。ここはいい風が吹く、現代とは違い汚染がないからな。でも、さすが越後というか少し肌寒くはある。
「さてと、早く食べちまおうっと」
空気を味合うのはほどほどにして、俺は弁当箱を開ける。トレミーで作った物を、俺専用弁当箱は拠点以来だから結構経つと思う。
「いただきます」
トレミーの食料から作った物だから、栄養たっぷりだからな。特に昼食の弁当を作るのは日替わりで違う。俺の妻たちである女性隊員たちが、グループになって1品ずつ1人で作り、俺の弁当箱に入れる。今回はボリュームたっぷり弁当だから、アメリカ出身の者かなと。手を合わせて、小さく口に言ったところで・・・・。
「あ、いたー!」
「一真様!」
「どうした?二人は出かけていたのでは?」
「さっき帰ってきたのですよ」
「私たちも今からお昼なんですけれど、ご一緒してもいいですか?」
「構わんよ」
「それじゃ・・・・」
そう言って、ひよところは示し合わせたように俺の左右に腰を下ろす。そして同じように弁当箱を開けるが、俺のとは違ってこの世の物だ。杉の薄板を曲げて作られた、この世でも昔から作られている定番の弁当箱。ひよところのは清州にいたころから使っていたのかな。
「いただきまーす」・「いただきます」
手を合わせるのも同じ。
「むぐむぐ・・・・。今回は主に肉だな。そっちはころの料理ではなさそうだな」
「はい。今日は姫路衆の人達の当番ですから。そちらは、何やら女性が作った物っぽいですね」
「そりゃそうだろうよ。愛妻弁当だ」
「だから、私たちのより種類が豊富なのですね。それに味も違うんですね」
「まあな。そっちだってころと姫路衆じゃ味違うだろう」
姫路衆のは上方風というらしい。俺のは現代の弁当だから味は濃いが、一真隊は当番制で作るから、中には薄かったり濃かったりする。
「こっちは毎日食べられるからいいけど、そっちは貴重な食糧なんだろ?」
「はい。ですが、毎日食べれるだけでありがたいですし。ご飯もおいしいです」
「ひよは白いご飯があれば満足なんでしょ?」
「当たり前だよー」
「・・・・ふふっ」
「はははははっ!」
白いご飯があれば満足かー。そっちはいいけど、こっちは今まで毎日トーストにハムエッグに微糖のコーヒーだったからな。トレミーに戻れば、いつでも食えるが戻っても食べたり飲んだりという暇はないだろうしな。戻れば、報告書をデータ化した奴を見るからな。
「えっ。何でころちゃんも一真様もそこで笑うのー!?そこ、笑う所じゃないよー!」
「いや、明らかに笑うところでしょ。ね、一真様」
「俺もそう思う」
「んもー、二人ともひどーい!」
「あはは・・・・それより一真様」
「何かな?」
「どうして一真様、お一人でご飯食べていたのです?」
「そうそう。こんなに恋人がいるのに」
「船に戻れば妻たちと一緒に食えるが、ここには恋人がたくさんいる。だけど、皆忙しそうだったし。仕事や稽古で声をかけるのは野暮だろ?」
「まあ、そうですね。でも今は美空様の連絡待ちですから、大丈夫かと思いますけどね。でもそれだったら確かに野暮ですね」
「それにもし俺が一人でご飯を食べていなかったら、今頃お前たちは二人で食べていただろ?」
一人で食べていると誰かしら声がかかったら、一緒に食べると思うし。ひよが一人占めとか言ったけど、結局ころも一緒だから二人占めなんだと。
「・・・それで、美空さんはまだ見つからないんですか?」
「うむ。小波や、足利の草の者達に探させているが、一体どこに行ったのやら」
本当は見つかっているんだけどね。あのお守り袋には超小型の発信器と盗聴器が仕込んである。いくら、美空の用兵が凄くても発信器に反応があれば、バレバレなんだよなー。この情報は詩乃たちには流していない。
「せっかく頑張って春日山の情報も仕入れてきたのに、ここで時間がかかったら意味がないですね」
「そうだな。ころも頑張ってくれたし」
「あ、あの・・・・一真様?」
「何だ?」
「でしたら・・・・頑張ったご褒美、頂けませんか?」
「褒美?」
「聞きましたよ。この間、ひよと二人で遊びに行ったんですよね・・・・?」
「遊びではなく、買い物の手伝いをしただけ」
「そうだよー」
「あれも褒美ではあるが、何がいいんだ?」
今の一真隊は表では長尾家から支援で成り立っているが、裏では空間にたくさん持っている。俺の小遣いは尾張や美濃では少なかったけど、金を創造するのも容易いからと、予備で創ったことがあった。
「お金で買える物ではなくて、くっついていいですか?」
「食事中だから、行儀が悪い」
「で・・・ですよね・・・・・・」
行儀が悪いが、今はひよところしかいないからな。そうやってしょんぼりされるとな。
「まあ、ここにはひよしかいないから。ひよは注意はしないよな?」
「どうしよっかなぁ・・・・?」
「ひ、ひよぉ・・・・」
「ふふっ。冗談だよ、ころちゃん」
「じゃ、一真様」
「ったく、行儀の悪い子だ。・・・・来い」
そんな子を甘やかすのは同罪なのかな?
「えへへ・・・・一真様にくっつける事、最近減っちゃいましたから・・・・」
はにかみながらのころを軽く招けば、肩にかかってくるわずかな重み。
「一真様・・・・あったかいです」
「そりゃここは寒いもんな」
元々俺の体温は高いほうだけど、ころがくっつくとそう言うと思ったし。
「うぅ・・・・ころちゃん、いいなぁ・・・・。一真様」
「ころ次第だな」
「だって、ひよはこの間、一真様と二人でお出かけして、たくさん可愛がってもらったじゃない」
「うぅぅ・・・・。じゃあ、口止め料!」
悪い事を覚えてどうすんのさ。
「もう。しょうがないなぁ・・・・そっちだけだよ?」
「えへへー。一真様」
「だったら、ひよも来い」
ころのくっついている反対側も、暖かいひよの身体がしがみ付いている。
「一真様、ころちゃん、あったかーい」
「うん。私もあったかいです。一真様」
「俺もだよ」
弁当を食べながら身体を寄せ合うなんて、行儀は悪いが、こういう温もりもたまにはいいだろ。
「そういえば、春日山ってどうだったんですか?一真様」
「まあ色々あったな。俺たちは町の調査で、ころは一人で城に侵入したし」
「え、一人でだったの!?」
「そうだよ」
「ちょっと、そんなの聞いていない!大活躍じゃない!」
「そんな事ないよ」
「俺も詳細は聞いてないな」
報告があったのは、城の状況と人質についての事務的な話題だったし。
「聞きたーい」
「ひよ・・・・」
「俺も聞きたいな」
「一真様まで・・・・」
「聞きたいですよね、一真様」
「そりゃそうだろうよ」
まあ、本当は色々と聞いていたけどね。小型盗聴器で聞いていたけど。肩を寄せ合った俺と、その向こうから覗き込んでくるひよの視線に、ころは小さくため息を吐いた。
「じゃあ・・・・ちょっとだけですよ?」
「身分は・・・・上野国から流れてきた浪人という事にしました」
「設定どおりだな」
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「御免」
「へい、いらっしゃい」
「適当に食べられる物を頼む」
「はいはい。・・・・お客さんも仕官したくて流れてきた口かい?」
「ああ。上野から来たんだが・・・・」
「上野ねぇ・・・・。あの辺の人達とは随分喋り方が違うね?」
「・・・・俺は武蔵に近い辺りの出だから、連中とは訛りが違うんだよ」
「ころちゃん、俺なんて言ってるんだ?」
「うるさいなぁ・・・・。ちょっとくらい偉そうにしとかないと、バカにされちゃうんだよ」
「そんなもんかね。まあ、越後でも場所によって言葉は違うけどねえ」
「・・・・あの辺りの連中も上野から?」
「らしいよ。上野はどこかの武将のお取りつぶしでもあったのかね?」
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「で、ちょうど良かったからその上野の人達の近くに行って、何となくですけど上州の言葉を覚えたんです」
「上州弁ってどんな感じ?」
「・・・・・・・」
「ね、ころちゃん」
「・・・・まあ、それはいいじゃない」
自分で振っといてそれはないのでは?
「俺も聞きたいのだが」
「一真様まで・・・・」
「だって気になるじゃない。聞かせてよー」
「うぅ・・・・。わ、笑わないでよ?」
「笑わないよー。ねえ、一真様」
「ころが頑張って覚えたんだから、ぜひ聞かせてほしいな」
「い・・・・・一回だけですからね」
まあ、あのときは録音してたのを、トレミーで聞いたときは笑いそうになった。あれは、ころにとっては言いたくないものだしな。
「そ・・・・そうだんべぇ」
「・・・・・・・・・・・・っ!」
「笑うなよ、ひよ!」
「・・・・・・っ」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・・・ぷっ。あははははははははっ!」
「あーっ!だから言いたくなかったのにー!」
「だ、だって、ころちゃんがそうだんべぇ、って、ねえ、一真様っ」
「うーん。俺は色々と耐性がついてるから笑わないけど、ころの口からそれを言ったら笑ってしまうな」
別に訛りをどうこう言うつもりではないが、ころが真面目に言うと、想像以上の破壊力がある。
「もう、話さないよ!ひよ」
「う・・・・ごめん、ころちゃん。私もう笑わないから・・・・」
「・・・・約束だよ」
「分かった。約束するよ」
俺ところは黙っていたら、また笑うひよ。どうやらツボにはまった様子だ。上州弁は、べぇとのぉを付けると上州ぽくなるのだと。これ以上引っ張るところも悪いし、せっかく自分の口から話してくれている。
「そのあとどうなったんだ?」
「で、紹介状もありましたし、ご飯を食べてすぐに城に向かったのですが・・・・」
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「うむ。ならば明日から来てもらおう」
「・・・・・・・へ?」
「業正殿の書状もあるのだろう。箕輪では何をしておったのだ?」
「は、はぁ・・・・。部隊の指揮から縄張り、台所奉行まで何でもしておりましたが、一番長く任されたのは御蔵の管理にございます」
「御蔵の管理が出来るのなら、尚のこと良い。見て分かろうが、とにかく人が足らんのだ。詳しい事は明日遣わす。長屋の一室を与えるゆえ、今日はもう休んで良いぞ」
「は、はぁ・・・・」
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「なんだそりゃ?」
「推薦状も、ほとんど見ずに返されましたから。箕輪城で働いていた、って所しか見てない位の勢いでしたよ」
「ホントに人が足らなかったんだね・・・・」
「そうだとも思ったんだけど・・・・何だかんだで推薦状って凄いんだねってびっくりしたよ・・・・。尾張や美濃に仕官しようと思ってた頃は、あんなに大変だったのに・・・・そういえば一真様にお仕え出来るようになったのも、ひよが一真隊にいてくれたからだしね・・・・」
何か知らんが、ころから黒いオーラが出ている。
「こ、ころちゃん、大丈夫!?」
「ほら、戻って来い。ころー!それからどうなったんだ!御蔵入同心!」
御蔵入同心・・・・倉の物資を管理する業務に従事している人の事。
「あ・・・ああ・・・・ええっと・・・・」
やっと戻ってきた。
「御倉の仕事は川並衆を率いていた頃も、一真隊に入ってからも同じような事をしてましたから。難しい仕事じゃありませんでした。同僚も上州出身だったので、話を合わせるのが大変でしたけど・・・・」
「なるほど。でももし他の仕事だったら。どうするつもりだったんだ?」
「だいたいの仕事は野武士だった頃にしていましたから、それは別に何でも」
「さすがころちゃんだね・・・・」
そういうスキルが広範囲だとありがたいんだよな。それにそういうのは今までの積んできた経験の差だな。
「倉の中身は報告した通りだったのですけど」
「物資は軒並み召し上げだったのだろう?質も量も悪いと聞いた」
「はい。御蔵入同心は、品を納めに来る座の皆さんの顔も直接目にする立場だったのですが・・・・」
「ああ。そういうことか。ちょっとどころではないキツさだな」
俺達も町で色々情報集めていたけど、いくらでも悪口が出てきたしな。その悪口を向けられる側だと、そりゃ忍び込んでいるだけでもいたたまれるだろうし。
「春日山の商人の人達も、美濃みたいに元気を取り戻してくれればいいのですけど・・・」
「それは美空に任せるしかないよ」
何とかできないかなとは思っても、俺達は協力者だから。越後の政治に口を出せる立場ではない。まあ、商いの神には頼んでいるけど、それは美空が春日山を取り戻した後だと思うし。
「難しいですね・・・・」
「それでどうなったの?」
「うん。しばらく色々調査して、忍び込む日も少なくなってきたから、人質のお二人の場所も確認しておこうと思って・・・・」
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「・・・・はぁ、もうやってらんねぇなぁ」
「俺も。やっと仕官出来たって三日目までは嬉しかったけど、これ間違いなく失敗だよなぁ・・・・」
「今は何日目なんです?」
「五日目」
「・・・・・・」
「俺もまだそんなに長くないけどよ。噂じゃ景虎様って、人じゃ太刀打ち出来ないくらい強いって言うじゃねえか」
「何だよそれ」
「神様だか仏様だかを呼び出して、こう、ばーっと大軍でも何でも一発で薙ぎ払っちまうんだとよ」
「・・・・何だそりゃ?酔っ払いの噂話だろ。信じてるんじゃねーよ」
「私もその話、聞いたことありますよ」
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「ちょっと待って」
「どうしたの?」
「ころちゃん、上州弁じゃない」
「・・・・・そっち!?」
「あー。上州弁ではなかったな」
面接シーンもよーく考えたら、上州弁ではなかったし。
「同僚の人も上州出身って言ってたし、ほんとは上州弁で喋ってたんでしょ?だったら、ちゃんと再現してよー」
「嫌だよ。どうせまたひよが大笑いするんでしょ?」
「しないしないから!」
「ころの活躍ぶりを聞きたいから再現してほしいな」
「・・・・・そうですか?じゃあ」
テイク2
「・・・・はぁ、はぁやってられねぇべぇ」
「俺もだのぉ。やっと仕官でぎたって三日目までは嬉しかったけど、これ間違いなくシッペェだんべぇ・・・・」
「今は何日目なん?」
「五日目だのぉ」
「・・・・・・」
「おれも長く務めてるんわけじゃーねぇが。噂じゃ景虎様は、人では太刀ぶちでぎねぇぐれぇ強ぇそうだのぉ」
「なんきゃあそれ」
「えっれぇ神様だか仏様だかを呼び出して、はぁ、ばーっと大軍でも何でもぼっこわすそうだんべぇ」
「そうじゃあんめぇ。まぁず酔っ払いの噂話なんか信じるか?おめぇも、そう思うだんべぇ?新入り」
「けどのぉ。おれもその噂、聞いた事あんべぇ」
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「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・ひよ」
「な、なに?ころちゃん」
「なんでそんなに、肩をヒクヒクさせているの?」
「べ・・・・別に・・・・・そんなこと、ないよ?」
「ヒクヒクさせているぞ、ひよ?」
「一真様もだんべぇ!」
「ぷーーーーーーーーーーーーーっ!」
「ひよーっ!」
「ちょ、ごめんっ!でも、真面目な顔でその喋り方は・・・ひゃは・・・反則・・・・っ!」
「ひよ・・・・」
「一真様も一見すると、笑っていないように感じますが、ホントは笑っているのでしょ?」
「んー?ああ、別におかしくはないぞ。真面目でそういう訛りの人もいるから」
「ひよだけ笑いすぎだよー。上州弁はなし!もう話さないからね、ひよ!」
「ひよも悪いけど続きを頼む、上州弁は無しでいいからな。ひよもそれでいいな?」
「・・・・わ、わかりましたぁ・・・・・。ぷぷぷ・・・・っ」
「・・・・まったくもぅ・・・・!」
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「でも・・・・・私もその話、聞いたことありますよ(実際には見たんですけど)」
「だろー?新入り」
「マジかよ・・・・。そんな化け物に勝つとか無理だろ」
「だよなー。人質がいても無理だよなー」
「人質がいるんですか?」
「いるらしいぜ。城の上の方の・・・・なんて所だったっけか。よく倉の横で飯を食ってる連中が番しているはずだけど」
「・・・・お詳しいですね」
「俺と同じ日に仕官した奴がいてな。故郷が同じ上州で、ちょいと仲良くなったんだよ」
「なるほど・・・・」
「俺、逃げようかなぁ・・・・五日目だけど」
「俺ももうちょっと呑気な所に仕官したかったわ。この先、明らかに負け戦だしなぁ・・・・」
「越前とかはどうなのかねぇ」
「ああ、あそこの朝倉殿は出来たお方って聞くな」
「あう・・・・越前は危ないです・・・・」
「そうなのか?」
「何でも、鬼が暴れているとか・・・・」
「ははは。鬼とはまた大きく出たな!」
「それこそ酔っ払いの戯言だろう。景虎様の神様仏様を呼び出すのよりひでえぜ」
「ほ、ホントなのですよぅ!」
「まあいいや。鬼が出たならそれこそ鬼退治してやりゃいいんじゃねえか?」
「桃太郎さん。きびだんご下さいよ」
「よし犬、付いて来い!新入りもどうだ」
「わ、私は遠慮しときます・・・・」
「俺が犬なら、お前は猿かな」
「猿はなおのこといいです・・・・」
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「・・・まあ、実際に見た事ないんじゃ、鬼の話は信じないな」
まぁ、俺の方が美空より強いけどな。護法五神を使役するなら、こちらは護法善神のオンパレードだ。それに護法五神も、美空より俺の方が従うというし。
「それで、その二人はどうなったの?」
「そのあと必死に説得したんだけど、今度は駿河でひと旗揚げるって言い出して・・・・」
「アホなのか、その二人は」
アンテナが低いというか、あまりにも情報少なすぎだろう。まあ、普通ならそれが精いっぱいなのだろうけど。実際に見た俺達も信じられない事だったけど、俺が神を召喚した時点で信じられないことだし。噂だけで信じろというのは無茶振りだな。
「けどそう考えると・・・・日の本に安全な所って、どこにもないんですね・・・・」
「まあそうだけどな」
京や越前はあんな感じだったし、越後はごたごた、関東方面も駿河は信虎の手に落ちている。無事なのは中国地方や九州地方だろうな、ただ単に知らないだけだから大変なのかは分からんが。ザビエルはあっちを通って越前まで来たと考えられる。
「早く何とかしなきゃいけませんね・・・・」
「そうだな・・・・」
「けど、その人達はともかく、上手くいってるじゃない。人質の場所も聞けたんでしょ?」
「うん。先輩の言う通り、倉の隅でよくご飯を食べている人達が人質の番をしていたから・・・・差し入れを持って行って、ちょっと教えてもらっちゃった」
「・・・・そこまでは順調か」
「何で失敗したの?」
「あはは・・・・。場所も聞けたので、ついでに二人のいる所を実際に確認しようと思ったんですけど」
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「脱出経路も確認したし、もう人質を確かめたら普通に逃げれば良いよね・・・・」
「おう、どうした新入り」
「す。すみません。道に迷っちゃって・・・・」
「おめぇは御蔵入同心だろう。こんな所ウロウロしてたら大目玉だぞ。ほら行った行った」
「はーい。ありがとうございます。・・・やっぱり普通に歩いてたら無理か。けどここからなら、人質のいる屋敷まで植え込みが続いてるはずだから・・・・。あと少し・・・・っと」
「なあ。今日の番が終わったら、呑みに行かねえ?」
「お、いいねぇ・・・・」
「・・・・ふぅ。あともうちょっと。聞いた話だと、この向こうに・・・」
とガサガサ音が聞こえたので気付いた足軽。
「誰だっ!」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「に・・・・にゃーだんべぇ」
「何だ猫か」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「って上州弁で鳴く猫がいるかーーーーーーーーーーっ!」
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「だ、脱出経路は用意してあったから、逃げるのは問題なかったのですが・・・・」
「そりゃバレるだろうな・・・・」
「は、はひ・・・・・っ。こ、ころちゃん・・・・・・っ」
「ひよは笑いすぎ・・・・・」
「ひっく・・・・っ。だ、だって・・・・・にゃ、にゃーだんべぇって・・・・じょ、上州弁で鳴く猫って・・・・・はひ・・・・っ!」
「だって、ずーっと上州弁の真似しようって必死だったから、つい出ちゃったんだってばぁ!」
「だ・・・だよね・・・・。ほんとはさっきまでの場面も・・・・ここで言ってないだけで、はひ・・・・全部、だんべぇって・・・・ひーっ!」
あーあ、ひよ。とどめになっているぞ、ころ。
「んもーっ!ひよは笑いすぎーっ!」
「だ、だって・・・・おかしいから・・・・はひ、苦し、苦しい・・・・っ!」
「だったら、別に上州弁にこだわらなくても、東海道辺りから流れてきて、少しだけ箕輪で仕事してました、とかの方がよかったのでは?」
「あ・・・・・」
「あははははははっ!ああもう、ころちゃん、変な所にこだわりすぎだよーっ!」
「う、うるさいなぁ!もぅ!」
「まあそのおかげで、重要な情報を手に入ったんだからな。笑ってはダメだぞ、ひよ」
「そういう一真様も、笑うの我慢しているんじゃないのですかーっ!」
「そんなことはないぞ」
「にゃーだんべえ」
「・・・・ふん。どうだ、笑っていないぞ」
「一真様より、ひよは笑いすぎですよーっ!」
ひよが笑いを止めたのは結構かかったけど。俺は、トレミーで聞いて大笑いしたから耐性がついたけど。
「こんなに笑ったの久しぶりです」
「もぅ・・・・大嫌いです」
とか言いながらも、ころは抱き着いているので、横になる。
「ひゃ・・・・」
「一真様・・・・っ?」
「もうご飯も食べたからな、寝転がっても行儀は悪くないぞ」
「ふふっ。そうですね」
「ね、一真様・・・・」
そのあと、結界を創って外からは見えないようにして、簡易ベッドを創った。で、二人とシたあとは浄化してから、簡易風呂で身体を綺麗にしてから、服を着たのだった。
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